音を表現するということ(間違っている音・その9)
間違っている音を出していた男は、
オーディオの使いこなしに自信をもっている。
何故、彼が自信をもつに至ったかについては書かないが、
その自信は、本当の実力に裏打ちされたものだったのか。
本人はナルシシストであるから、きっと、そう思っているはずだ。
だがオーディオは、その場で、スピーカーから鳴ってくる音だけ、である。
肝心の音が、実力に裏打ちされていなければ、
彼がどんなに使いこなしに自信をもっていようと、
それは自己満足の技術でしかない。
数年前の私だったら、これがオーディオの罠だ、と書くところだが、
結局は本人の未熟さゆえである。
何故未熟なのか。
自己満足の技術しか持たないからである。
何故自己満足の技術から脱することができないのか。
ナルシシストだから──、だけがその理由ではないと思う。