五極管シングルアンプ製作は初心者向きなのか(その18)
伊藤先生は、なにか特別な、アクロバティックな配線を駆使してアンプを作られているわけではない。
オーソドックスなやり方をひとつひとつ丁寧にこなされてのアンプ作りのように感じている。
ならば、サウンドボーイに載っている工程をひとつひとつ丁寧にじっくりとやっていけば、
同じアンプが作れるはずではないか、
そう思われる人は、伊藤アンプのどこを見ているのか、と問いただしたくなる。
同じようなアンプ、似たようなアンプは作れるだろう。
きちんと動作もするアンプは作れる。
けれど、あの佇まいは出せない、とおもう。
サウンドボーイの記事を作った担当者のOさんは、
伊藤先生の300Bシングルアンプを、デッドコピーした人である。
そっくり作るだけの腕を持っていたし、
岡先生のマランツのModel 1を見事にメンテナンスした人でもある。
そのOさんでも、伊藤先生のコントロールアンプは作れない、と悟り、
伊藤先生にお願いして作ってもらった、という話を本人からきいている。
そうだろうな、と思う。
伊藤先生のコントロールアンプも、特別なことは何もされていない。
空中配線などという、特殊なことは何ひとつない。
ひとつひとつの作業をきちんとこなしていけば、これも完成するはずである。
でも、それは理屈にしかすぎない。
理屈だけでは、伊藤先生のアンプはマネできない。