B&W 800シリーズとオーディオ評論家(その5)
B&Wの800シリーズについて書いていて、ふと思ったことがある。
マルチチャンネル再生をやるとしたら、
意外にもB&Wの800シリーズは候補に挙がってくるかも……、ということだった。
モノーラル時代はスピーカーシステムの数は一本、
ステレオ時代になって二本になった。
モノーラル時代には大型のホーン型スピーカーシステムがいくつも存在していた。
JBLのハーツフィールド、エレクトロボイスのPatrician、
タンノイのオートグラフ、ヴァイタヴォックスのCN191、
これらの他にも、いくつものモデルがあった。
これらのスピーカーシステムで、ステレオ再生(2チャンネル再生)を行う。
そのことに否定的なことをいう人ももちろんいたけれど、
これらのスピーカーシステムによるステレオ再生は、独自の世界を築いていたこともあって、
いまだその世界に憧れつづける者もいる。
でも、このことはステレオ再生が二本のスピーカーシステムだったこともあるように、
最近では考えている。
もしステレオ再生が2チャンネルではなく、
センターチャンネルを加えた3チャンネル、
リアチャンネルを加えた4チャンネル、
センターとリアの両方の5チャンネル、
そういうシステムであったなら、
モノーラル時代のスピーカーシステムで……、というやり方はうまくいかなかったかもしれない。
モノーラル時代の、これらのスピーカーシステムは大型で、しかも高価だった。
そういうスピーカーを三本、四本、五本揃えるのは、それだけでたいへんなことだが、
問題はそこではなく、スピーカーのもつキャラクターの濃さについてである。
いかなるスピーカーであっても、キャラクター(個性)がある。
そのスピーカー固有の音色がある。
そのキャラクターが、スピーカーの数が二本よりも多くなっていくときに、
問題として顕在化していくのではないだろうか。
私は4チャンネル再生の経験がない。
聴いたことがないわけではないが、オーディオに関心をもつ前であったし、
単にきいた、というだけでしかない。
4チャンネル再生の問題点は頭ではわかっているし、
定着しなかった理由は、知識として知っている。
それでも、ふとおもうのは、
当時B&Wの800シリーズのようなスピーカーシステムが存在していたら、
フォーマットの制定も行われていたら、
違う展開を見せていた可能性について、だ。
B&Wの800シリーズを鳴らしていたオーディオ評論家として、
小林悟朗さんがそうだったことを思い出した。
小林悟朗さんは800シリーズでマルチチャンネル再生を行われていた。