Date: 7月 21st, 2017
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日本の歌、日本語の歌(アルテックで聴く・その21)

こうやってオーディオのことを毎日書いていると、いろいろなことを思い出す。
直接関係のあること、直接の関係はないけれど、間接的に関係していること、
それにまったく無関係に思えることまでも思い出す。

この項を書いていて思い出したのは、井上先生が、
1993年のステレオサウンド別冊「JBLのすべて」に書かれていたことだった。
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 奇しくもJBLのC34を聴いたのは、飛行館スタジオにちかい当時のコロムビア・大蔵スタジオのモニタールームであった。作曲家の古賀先生を拝見したのも記憶に新しいが、そのときの録音は、もっとも嫌いな歌謡曲、それも島倉千代子であった。しかしマイクを通しJBLから聴かれた音は、得も言われぬ見事なもので、嫌いな歌手の声が天の声にも増して素晴らしかったことに驚歎したのである。
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美空ひばりは《鳥肌の立つほど嫌いな存在》、
《若さのポーズもあって》、バロックと現代音楽ばかりを聴いていた時期の若い瀬川先生は、
《歌謡曲そのものさえバカにして》いた。

ステレオサウンド 60号で、アルテックのA4について語られる瀬川先生は、
美空ひばりの体験をあげられている。
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 たまたま中2階の売場に、輸入クラシック・レコードを買いにいってたところですから、ギョッとしたわけですが、しかし、ギョッとしながらも、いまだに耳のなかにあのとき店内いっぱいにひびきわたった、このA4の音というのは、忘れがたく、焼きついているんですよ。
 ぼくの耳のなかでは、やっぱり、突如、鳴った美空ひばりの声が、印象的にのこっているわけですよ。時とともに非常に美化されてのこっている。あれだけリッチな朗々とした、なんとも言えないひびきのいい音というのは、ぼくはあとにも先にも聴いたことがなかった。
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井上先生にとっての島倉千代子とJBL、
瀬川先生にとっての美空ひばりとアルテック、
おそらく時期もそう離れていないはずだ。

毛嫌いしているといえる歌謡曲と歌手の歌を、
JBLとアルテックは、驚歎するほどの音で聴かせてくれている。

井上先生は、続けてこう書かれている。
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 しかし自らのJBLへの道は夜空の星よりもはるかに遠く、かなりの歳月を経て、175DLH、130A、N1200、国産C36で音を出したのが、私にとって最初のJBLであった。しかし、かつてのあの感激は再現せず、音そのものが一期一会であることを思い知らされたものである。
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瀬川先生も《あとにも先にも聴いたことがなかった》といわれている。

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