新製品(TANNOY Legacy Series・その18)
《伝統のあるオーディオメーカーって止まってしまっているところが多いでしょう。クラシカルなものに淫しているように思う。》
田中一光氏のことばだ。
1993年ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」の中で語られている。
S9500のデザインについて語られたあとに、こういわれている。
どのオーディオメーカーとはいわれていない。
私は、タンノイのことだと思った。
タンノイのPrestigeシリーズのことだと思った。
いまもそう思っている。
タンノイのPrestigeシリーズのすべてのモデルがそうだとはいわないが、
《クラシカルなものに淫している》、そういう雰囲気が全体にある。
《クラシカルなものに淫している》、
うまい表現だと思ったし、
こういう表現は自分には無理だな、ともその時思った。
Prestigeシリーズを見て感じていたけれど、
うまく言葉にできずに、ノドの奥にひっかかったままだったものこそが、
《クラシカルに淫している》だった。
クラシカルなデザインが、悪いわけではない。
クラシカルなものに淫していると感じさせてしまうPrestigeシリーズ。
Prestigeシリーズこそタンノイらしい、とおもう人がいる。
だが私は、クラシカルなものに淫しているPrestigeシリーズのデザインは、
タンノイの本来的な音にそぐわない、と感じている人間である。
それともPrestigeシリーズの音も、
クラシカルなものに淫しているのだろうか。
いぶし銀もいまでは、クラシカルなものに淫した音の代名詞となってしまうのか。
Prestigeシリーズの音をすべて聴いているわけではないが、
そうではないと思っている。
Prestigeシリーズ以外のスピーカーシステムもあった(ある)のはもちろん知っている。
でも、どこかPrestigeシリーズに比べると……、というところを感じてしまう。
そこにようやくクラシカルなものに淫していないシリーズが登場した。
Prestigeシリーズに比べると……、と思わずにすむモノが、
Legacyシリーズとして、41年前のArden、Cheviot、Eatonが現代のモデルとして復活する。