試聴と視聴と……(その1)
試聴と視聴。
どちらも(しちょう)である。
オーディオ機器を聴くことを試聴する、という。
けれど最近、オーディオ機器にも視聴する、視聴した、というのが目立つようになってきた。
パソコン、スマートフォンの変換候補として、
試聴よりも視聴のほうが先に出てくるためであろう。
視聴とは、見ることときくこと、と辞書にはある。
オーディオ機器を聴く場合も、
ブラインドフォールドテストでなければ、
目の前にオーディオ機器があるわけで、たしかに見てきいている、といえる。
その意味では、視聴でもおかしくないといえばそうかもしれない、と思いつつも、
やはり違和感が、視聴にはあるし、私は試聴を使っている。
試聴とは、文字通り、ためしにきくこと、である。
試飲、試食と同じことといえるが、
ここでまた考えてしまう。
なにかそこには真剣味が足りない、もしくは欠けている感じがしないでもない。
試し聴きという試聴には、どこかちょい聴き的なニュアンスがないわけではないからだ。
試聴、試飲、試食以外に、試から始まるのに試合がある。
試合は仕合と書く場合もある。
ならば仕聴(しちょう)も……、と思うわけだが、
よくよく辞書をひいてみると、試合にしても仕合、どちらも当て字とある。
本来は為合(しあい)の意、とあった。
そうなると試聴は、為聴なのか。