日本の歌、日本語の歌(アルテックで聴く・その11)
こういうふうに鳴ってくれるのであれば、アルテックで聴く日本語の歌はいい──、
そう思いながらも、欲深いのか、これがヴァイタヴォックスならば……、と思ってしまう。
日本語の歌といっても、
私の場合、グラシェラ・スサーナによる日本語の歌といいかえてもいいくらいに、
他の歌手による日本語の歌のディスクはそれほど持っていない。
しかも男性歌手よりも女性歌手の方が多く、
いうまでもなくグラシェラ・スサーナも女性である。
だから、ヴァイタヴォックスならば……、と思ってしまうわけだ。
久しく聴いていない、英国のアルテック的スピーカーともいえるヴァイタヴォックスのことをおもう。
ヴァイタヴォックスならば、もっとしんみりと鳴ってくれるのではないか、
ヴァイタヴォックスならば、もっと気品ある声で鳴ってくれそうである、とか、
ヴァイタヴォックスならば……、そんなことをつい思ってしまう。
ヴァイタヴォックスの音は、何度か聴く機会があった。
いいスピーカーである。
でも、一度も日本語の歌をヴァイタヴォックスで聴きたいと思ったことはなかった。
それは、どこかアルテックで聴きたいと思わなかったことと近いのかもしれない。
それが、いま無性にヴァイタヴォックスでグラシェラ・スサーナの歌を聴いてみたい、と思っている。
アルテックで聴いたからである。