日本の歌、日本語の歌(アルテックで聴く・その12)
ヴァイタヴォックスのスピーカーシステムといえば、
わが国ではCN191 Corner Hornがもっとも知られる存在である。
CN191の上にBass Binというモデルもあったが、こちらは完全な劇場用であり、
家庭でこのモデルを鳴らしている人は、ほとんどいないと思われる。
CN191の他に、もうひとつBiton Majorがあった。
CN191の陰にかくれがちなこのスピーカーは、
アルテックのMagnificentと同じ構成である。
Magnificentには、もうひとつ型番があってA7-500W-1ともいう。
A7がついていることからもわかるように、基本的には劇場用のA7をベースに、
家庭用に仕上げ直したモデルである。
エンクロージュアの基本は、828である。
フロントショートホーン付きのエンクロージュアを、A7の使用方法とは上下逆に使う。
フロントショートホーンが下部にくる。
エンクロージュアの上部に乗っていたホーンとドライバーを、開口部に持ってくる。
仕上げも素っ気ないA7とは対照的にウォールナット仕上げで、格子グリルを備える。
Biton Majorもそうである。
こちらには格子グリルはつかないが、エンクロージュアの構成、使い方もMagnificentと同じである。
ステレオサウンド 43号で、このスピーカーの存在を知った。
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ヴァイタヴォックスの音をひと口でいえば、アルテックの英国版。要するにアルテックの朗々と響きの豊かで暖かい、しかしアメリカ流にやや身振りの大きな音を、イギリス風に渋く地味に包み込んだという感じ。A7−500−8のレンジをもう少し広げて、繊細感と渋味の加わった音がバイトーン・メイジャー。
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でも、このころはCN191のほうに目が行ってしまっていた。