日本の歌、日本語の歌(アルテックで聴く・その10)
もうひとつ思い出していたことがある。
美空ひばりとアルテックについて、である。
「ナロウレンジ考(その16)」と(その15)に書いていることである。
瀬川先生が、銀座の日本楽器でアルテックのA4から突如として鳴ってきた美空ひばりの歌、
その音について書かれているのが(その16)、
美空ひばり自身が、アルテックのA7から鳴ってきた自身の歌をきいて、
「このスピーカーから私の声がしている」がいったというエピソード。
美空ひばりを演歌歌手という人もいるのには少々驚くが、
歌謡曲といってしまうのも少々抵抗感があるし、
そういうことに拘らずに、日本語の歌をうたってきた歌手という認識でいいとおもう。
美空ひばりの日本語の歌は、多くのJ-POPでうたわれる日本語の歌とは違う。
昔からの日本語の歌をきかせてくれる。
その美空ひばりをアルテックが、うまく鳴らすという事実。
ずっと以前から、その事実はある。
たった二例をもってして、事実と言い切るのか、と問われれば、
そうだ、と答えたくなるほど、
アルテックで聴くグラシェラ・スサーナの日本語の歌はよかった。
この時のシステムのセッティングにかけた時間は30分ほどであるから、
まだまだこまかな不備は感じられたけれど、大事なところはきちんと鳴っていた。
おそらく日本のスピーカーで聴くよりも、
ずっと日本人の気持を歌にのせて聴き手に伝えてくれる音であった。
このことをオーディオ的にとらえれば、
ヤマハNS5000の試作機が日本語の歌をまったく鳴らせられなかったことの裏返しでもあろう。