Date: 4月 21st, 2017
Cate: 所有と存在
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所有と存在(その13)

虚構の「虚」とは、くぼんで、中があいているさま、と辞書にはある。
虚構とは、辞書には、
事実でないことを事実らしく作り上げること、また,作り上げられたもの、作りごと、とある。

虚構の世界には、何も満ちていいないのだろうか。
そうだとしたら、虚構世界であるオーディオに、感動することがあるのか。

──そんなことを考えていたら、上村一夫の「同棲時代」が浮んだ。
「同棲時代」の、もっとも知られているであろうシーンである。

男と女が向いあっている。
ふたりの横顔のあいだに、独白がある。
どちらかのセリフというわけではない。
     *
愛はいつも

いくつかの過ちに
満たされている

もしも愛が
美しいものなら

それは男と女が犯す
この過ちの美しさに
ほかならぬであろう
     *
虚構世界も、もしかすると過ちに満たされているのか──、
そう思いたくなる。

過ちの美しさがあるからこそ、なのかもしれない。

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