ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その19)
ケーブルによる音の違いについて語られるときに、
電流密度というキーワードが出てくることがある。
身近な例でいえば、ホースと水量の関係である。
径の太いホースにちょろちょろと水を通す。
ケーブルで、同じ状態を電流密度が低い、という。
径の細いホースに大量の水を通す。
ケーブルでは、電流密度が高い、ということになる。
低能率で低インピーダンスのスピーカーで、
しかも大音量で聴くのであれば、太いケーブルでも電流密度が低くなることは、
まずないだろう。
反対に高能率でインピーダンスが16Ωと高いスピーカーであれば、
太いケーブルを使うと電流密度は低くなる。
電流密度と音との関係は、測定できる性質のものではないだろう。
電流密度が低いよりも高いほうが、いい結果が得られるという感覚的なものがある。
ラインケーブルであれば電流密度を高くしたければ、
受け側のインピーダンスを低くすればいい。
パワーアンプの入力インピーダンスを1/10にすれば、
ラインケーブルを流れる電流値は10倍になる。
電流密度は高くなる。
確かに昔から、受けのインピーダンスは高いよりも、
過負荷にならない程度に下げたほうがいい、という人は少なくなかった。
その一方で、受けのインピーダンスを1MΩまで高めたほうがいい、という人もいる。
ジェームズ・ボンジョルノもSUMOのパワーアンプでは、
アンバランス入力のインピーダンスは1MΩにしていた。
マークレビンソンが1MΩにする十年ほど前のことである。