「いい音を身近に」(その23)
「仕事は?」ときかれたときに、
「オーディオマニア」と答えることがある。
相手が男性だと、怪訝な顔をされることが多い。
女性だと興味をもつ人が時々いる。
そして訊ねられることがある。
「いい音って?」
これに答えるのは、難しい。
オーディオに関心のない人が相手であるからで、
オーディオマニア相手に、いい音について語るようにはいかない。
そんなときに使ったのが、(その21)で引用した瀬川先生が書かれていることである。
それをそのまま伝えたわけではなく、
疲れて帰宅して、一分でも早く寝たいんだけども、
十数分でもいいから、この音を聴いてから寝よう──、
そう思える音はいい音だ、と答えたことが何度かある。
でも、これだけでいい音について答えたことにはならない。
「いい音」とは、便利な言葉である。
なぜ便利かといえば、曖昧さを多分に含んでいるからだ。
確かに親しいオーディオ仲間との会話で、「いい音だよ」で伝わる場合はある。
でも、それは限られた条件において、であって、
オーディオ雑誌やブログのように不特定多数の人を相手に書いているところでの「いい音」は、
何も伝えてはいない、ともいえる。
だから2016年12月から、「いい音、よい音」というタイトルで書き始めている。