2016年ショウ雑感(その20)
ヤマハのスピーカーの型番のNSはnatural soundである。
natural(ナチュラル)には、自然の、天然の、といった意味の他に、
天為の、本有の、といった意味もある。
ヤマハのnatural soundは、おそらく自然の音だと思う。
ヤマハのこれまでのスピーカーシステムで名の知れたモノ、
NS1000M、NS690、NS10Mなどを聴いて、
どの音をヤマハのnatural soundと捉えるかは、難しいところがある。
そんなに型番の意味に拘らず……、とは私だって思う。
けれど、昨年のインターナショナルオーディオショウでのNS5000が聴かせた音は、
初めてヤマハの考えるnatural soundとは、この音のことなのか、と思えた。
そう思ったのはヤマハの与り知らぬところの、私の勝手な捉え方でしかないわけだが、
そこにNS5000でしか聴けぬ、何かが感じられた。
けれど今年のNS5000には、そういったことが感じられなかったし、考えることもなかった。
ただただ「優秀なスピーカーのひとつになってしまいましたね……」、
そんなことを心の中で呟いていた。
完成品のNS5000の音が、ヤマハが考えるnatural soundとなるのだろうか。
おそらくそうなのだろう。
私は、勝手にnatural soundに、天為の音、本有の音を求めていただけなのかもしれない。
だが聴きたいのは、そういう音のはずだ。
ヤマハ天為の音、ヤマハ本有の音が、昨年の、試作品のNS5000からは聴けた。
今年の、完成品のNS5000からは聴けなかった。
そういうことである。