Date: 7月 28th, 2016
Cate: 表現する
Tags:

音を表現するということ(間違っている音・その6)

その2)の続きにもどろう。

間違っている音を出していた男は、
私に「瀬川先生の音を彷彿させる音が出ているから、来ませんか」と誘った。

間違っている音を出していた男は、瀬川先生と一度も会ったことがない。
東京で暮していて、
あのころ瀬川先生が定期的に来られていたメーカーのショールームにいつでも行ける環境にいながら、
一度も足を運んだことがない男でもある。
そして、一度も会えなかった、と嘆く。

彼は、別項で書いた知人である。
その程度の読み方しかしてこなかった男が、「瀬川先生の音を彷彿させる音」といっていた。

そういう時にかぎって、ひとりよがりな音を出していることが多い人だ。
だからその時もそうなんだろう、と思って出掛けていた。

ひよりよがりな音を、私は間違っている音といっているのではない。
この時の彼の音は、ひとりよがりの音といってすまされるのを逸脱していた。

だから「間違っている音」は、私にとっては二重の意味があるわけだ。

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