ポジティヴな前景とネガティヴな後景の狭間で(その4)
システム(system)とドグマ(dogma)。
すでに存在しているものである。
グレン・グールドはトロント大学王立音楽院の卒業生に、
《諸君はシステムとドグマ、つまりポジティヴな行為のために教育されてきました》と話している。
グールドが「諸君」と呼びかけているのは、卒業生たちである。
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諸君のなかには、いつか音楽のいずれかの方面で教育に携わる方も多いと想像します。そうした役割を果たしておられるときこそ、ポジティヴな思考のもたらす危険と呼んでよいものに陥りやすい,そう私は思っています。
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システムとドグマ、どちらも人工物である。
人工的構築物である。
グールドはいう。
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じつのところ、想像力の駆使とはシステムの中にしっかりとおさまった場所からシステムの外にあるネガティヴの領域へと用心深く身を浸していくことだからです。
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用心深くネガティヴな領域に身を浸していくことをせずに、
システムの中にしっかりとおさまった場所での思考、
つまりがそれがポジティヴな思考であり、それがもたらす危険とは、
「システム化された思考には相補的存在」があることを忘れてしまうことである。