KEF Model 109 “The Maidstone”(その3)
レイモンド・クックも老いたな、と思えたのが気にくわなかった。
昔のクックなら、同じユニット構成でも、違うエンクロージュア構成としたはず、という確信があった。
そして、もしかして……、と思った。
調べたらレイモンド・クックは1995年に亡くなっている。
“The Maidstone”の形に納得できた。
クックが携わっていたのではなかった。
これで”The Maidstone”への興味はしぼんでいった。
聴きたい、という気持もなくなっていた。
あれば、どこかへ出掛けてでも聴いていた。
“The Maidstone”が気にくわなかったのには、もうひとつ理由がある。
なんとなくJBLの4343を模倣したようなところが感じられるからである。
4343を、JBLのスタッフがS9500のスタイルでつくりなおしたとしたら、
“The Maidstone”のような形になるのではないか。
そんなふうにも捉えていた。
4343も”The Maidstone”も、ウーファーは15インチ、ミッドバスは10インチ。
4343も”The Maidstone”も基本的にはインライン配置。
バスレフポートの位置と数も4343と”The Maidstone”は同じである。
4343はウーファーとミッドバスのあいだにスリットがある。
このスリットは4343のデザインになくてはならないものである。
“The Maidstone”もエンクロージュアが独立構造としたため、自然とスリットが生じる。
外形寸法も4343の横幅は63.5cm、”The Maidstone”は60cmと近い。
1999年の私は、レイモンド・クックが携わっていなかったというだけで、
“The Maidstone”から積極的に良さを見つけようとはしなかった。