KEF Model 109 “The Maidstone”(その2)
“The Maidstone”はエンクロージュアが独立している。
15インチ口径のウーファーをおさめたエンクロージュアの上に、10インチ口径のミッドバスのエンクロージュア、
さらにその上に6.5インチ口径と1インチ口径のドーム型の同軸型ユニットのエンクロージュアが乗っている。
親亀、子亀、孫亀といったところで、孫亀の上にはスーパートゥイーターがちょこんと乗っている。
Uni-Qを搭載したModel 105とでもいおうか。
ただModel 105はスコーカー、トゥイーターをおさめているエンクロージュアは横幅を狭めていた。
だから階段状になっていた。
“The Maidstone”でも同じことはできたにもかかわらず、
それぞれのエンクロージュアの横幅は同じである。
だから堂々とした体躯のスピーカーに仕上っている。
Model 105とは、ここが違う。
けれどModel 105には思い出がある。
熊本のオーディオ店に瀬川先生が来られた時に(それまでの定期的に来られていたのはまた違う企画だった)、
このModel 105を聴いた。
この時瀬川先生が、ちょっと待ってて、行って席をたち、
Model 105の調整をされた。おもにスピーカーの振りの調整だった。
女性ヴォーカルのレコードをかけて、スピーカーの向きをまずあわせ、
それからスコーカー・トゥイーターの振りと仰角の調整。
手際よくやらていた。
時間にすれば10分くらいだった。
そしてここに坐ってごらん、といい、その席を譲ってくれた。
ここまで見事に音像は定位するものだ、と体験できた。
このことがあるからことさらModel 105への思い入れは強い。
だから、なぜ”The Maidstone”は、ミッドバス、同軸型のエンクロージュアの横幅を狭めなかったのか。
それが気になっていた。そして気にくわなかった。