Date: 2月 10th, 2015
Cate: 井上卓也
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井上卓也氏のこと(井上卓也 著作集)

3月25日にステレオサウンドから「井上卓也 著作集」が出る、とのこと。

私がまだ読者だったころ、井上先生のすごさはよくわかっていなかった。
黒田先生が井上先生のすごさを誌面で語られていても、
それを疑っていたわけではないものの、井上先生の文章から、そのことは伝わり難いことでもあった。

ステレオサウンドで働くようになって、井上先生の新製品の試聴があった。
このときも編集部の先輩から、井上先生のすごさについて聞かされた。
具体的なことではなかったけれど、すごいことは、黒田先生の文章で知っている、と心の中では思っていた。

実際に試聴に立ち会ってみると、そのすごさに驚く。
なぜ、この人は、こんなわずかな音の違いまではっきりと聴き分けられるのか、とも思ったし、
それだけでなく、とにかく驚きの連続だった。

それに井上先生はタフだった。

文字だけの世界では井上先生のすごさ、魅力は伝えるのがほんとうに難しい。
オーディオフェアやショウで、ときどき講演をやられたこともある。
けれど井上先生のすごさを知らない人は、途中で席を立つこともあった。

明瞭にわかりやすく話される人ではなかった。
不特定多数の人を相手に話すのを得意とされていたわけでもなかった。
だから席を立つ人がいるのもわからないわけではない。

でもあとほんのすこし辛抱していれば……、と、そういう場にいると思ってしまう。
オーディオには辛抱も必要である。
その辛抱ができずに出ていってしまう。
そういう人には、井上先生のすごさはわからないのではないか。

「井上卓也 著作集」に、どの記事がおさめられるのかはわからない。
もちろん編集者は、いい記事を選んでいるはずだ。
それでも井上先生と一度も会ったことのない世代に対しては、
井上先生が書かれたものだけでなく、補うものが必要だと思う。

そしてもうひとつ思うのは、私も井上先生の書かれたものをaudio sharingで公開している。
けれどステレオサウンドが一冊の本としてまとめて出すのは、意味合いにおいて違うところがある。

いまステレオサウンドは岩崎先生、瀬川先生、岩崎先生の著作集を出している。
このことをいまステレオサウンドに書いているオーディオ評論家を名乗っている人たちは、
どう感じているのだろうか。何も感じていないのだろうか。

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