真空管アンプの存在(番外)
瀬川先生とグッドマンのAXIOM80について、いつか書きたいと思っているが、
今日、ステレオサウンド 62号をめくっていて気がついたことがある。
瀬川先生がAXIOM80のためにUX45のシングルアンプをつくられたことは知られている。
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暗中模索が続き、アンプは次第に姿を変えて、ついにUX45のシングルになって落着いた。NF(負饋還)アンプ全盛の時代に、電源には定電圧放電管という古めかしいアンプを作ったのだから、やれ時代錯誤だの懐古趣味だのと、おせっかいな人たちからはさんざんにけなされたが、あんなに柔らかで繊細で、ふっくらと澄明なAXIOM80の音を、わたしは他に知らない。この頃の音はいまでも友人達の語り草になっている。あれがAXIOM80のほんとうの音だと、私は信じている。
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ステレオサウンド 62号には、上杉佳郎氏が「プロが明かす音づくりの秘訣」の3回目に登場されている。
そのなかで、こう語られている。
「試みに裸特性のいい45をつかってシングルアンプを作って鳴らしてみたら、予想外の結果なんです。
AXIOM80が生れ変ったように美しく鳴るんです。」
45のシングルアンプが、ここにも登場してくる。
瀬川先生の先の文章につづけて書かれている。
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誤解しないで頂きたいが、AXIOM80はUX45のシングルで鳴らすのが最高だなどと言おうとしているのではない。偶然持っていた古い真空管を使って組み立てたアンプが、たまたまよい音で鳴ったというだけの話である。
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出力管に UX45を使えば、それでシングルアンプを組めさえすれば、
AXIOM80に最適のアンプができ上がるわけでないことはわかっている。
どんな回路にするのか、どういうコンストラクションにするのか、配線技術は……、
そういったことがらも有機的に絡んできてアンプの音は構成されている。
それでも45のシングルアンプ、いちど組んでみたい気にさせてくれる。