100という数字(WIN LABORATORIES SDT10)
ウイン・ラボラトリーズというカートリッジメーカーがあった。
ステレオサウンド 43号に広告が載っていた。
当時は菅原商会というところが輸入元になっていて、その後別のところに変ったと記憶している。
ウイン・ラボラトリーズのSDT10というカートリッジに関する資料は少ない。
43号に掲載された菅原商会の広告の文章、
それにインターネットで検索して得られることぐらいである。
SDT10の型番は、Semiconductor Disc Transducerの略であり、
型式としては、Semiconductor Strain Gaugeとなっている。
半導体型のカートリッジと理解していいはずだ。
だからPOWER SOURCEと名づけられた外部電源を必要とする。
詳細についてあまりわかっていない。
実物をみることはできなかった。
いったいどれだけ日本に輸入されたのかもわからない。
でも、聴いてみたかったカートリッジのひとつであり、
いまも機会があればぜひとも聴いてみたい、と思い続けている。
SDT10はかなりの高出力型である。
たしか500mVで、負荷インピーダンスは500Ωとなっていた。
SDT10の出力電力は0.5mWとなる。
桁違いの出力電力の大きさである。
SPU-Synergyにしてもマイソニックの一連のカートリッジにしても、単位はnW(ナノワット)だった。
SDT10はmW(ミリワット)である。
オルトフォンのSPU-Synergyよりも、マイソニックのカートリッジよりも圧倒的に高い出力電力ではあるが、
オルトフォン、マイソニックのカートリッジが磁界中のコイルを動かして発電しているのに対し、
SDT10は発電をして、これだけの高出力電力を得ているわけではない。
あくまでも外付けの電源から供給されるバイアスを変調させているのだから。
とはいうものの、イコライザーアンプも原則として必要としない振幅比例型で、
しかも高出力ということでライン入力、ボリュウムつきならばパワーアンプに直結もできる。
SDT10は出力の高さから高効率といえるけれど、発電という意味ではない。
同じ高効率でも発電しての高効率との音の出方の違い、表現の違いがあるのかどうか。
そして高効率ということに共通する良さが、SDT10にもあるのかどうか──、
こうやって書いていると、一度でいいから聴きたいという気持はますます強くなってくる。