AAとGGに通底するもの(その6)
奇妙なことに、聴けば聴くほど「グールドのゴールドベルグ」という確信がなくなっていく。
グールドの演奏を真似た、まったく知らない人の演奏のように聴こえてくる。
とにかく、まずピアノがヤマハのCFには、どうしても聴こえない。
アップライトピアノにしか聴こえない。
580kgの重量のあるピアノが鳴っている感じが全く、そこで鳴っていた音には感じとれなかった。
重量だけではない、アップライトピアノだから、コンサートグランドピアノとは大きさも違う。
響きがこじんまりとしていて、空間に響きが拡がっていく感じがしない。
そのためもあろうが、弾いているひとも、なんとなく細い人というより、存在感が希薄、
もしくは自動ピアノの演奏じゃなかろうか、そんなところまで妄想がいってしまう音なのだ。
グールドのゴールドベルグのCDは、回数の多さだけでなく、じつにさまざまなシステムで聴いてきた。
ステレオサウンドの試聴室で、いろんなCDプレーヤー、多種多様なスピーカーで聴いてきた。
そこで鳴っていた音は、首を傾げたくなるほど不思議な音だった。
なぜ? と思っていたら、開始時間になり、CDプレーヤーからCDが取り出され、
ケースにおさめられているときに見えたジャケットは、
やはり、というべきなのか、グールドのゴールドベルグ変奏曲のものだった。