続・再生音とは……(その8)
なぜ天馬博士はトビオ(アトム)に、7つの力を与えたのだろうか──、
を考える前に、天馬博士にとってトビオは、いったいどういう存在なのかについて、もう一度考えてみたい。
トビオは、実の息子の飛雄の代りとして──生れ変り、とも言い換えられるだろう──、つくられた。
トビオは精巧につくられたロボットであり、その外観は飛雄そっくりであることは、
トビオ(アトム)は飛雄の記憶である、と考えられるのではないだろうか。
つまり天馬博士は交通事故で死ぬ直前の飛雄を、
それまでの飛雄をトビオに求めていた、とすれば、トビオはそれまでの記憶でしかない、ともいえる。
トビオが成長しないのはロボットだから、が、もちろん最大の理由なのだが、
実は記録だからこそ成長しない、ともいえよう。
天馬博士には飛雄の記憶は、そこまでしかないのだから……。