Archive for 11月, 2019

Date: 11月 17th, 2019
Cate: ディスク/ブック

André Cluytens – Complete Mono Orchestral Recordings, 1943-1958(その1)

フォーレのレクィエムの名盤といえば、以前はクリュイタンス盤だった。
いまはどうなのだろうか。

クリュイタンスのフォーレのレクィエムには、モノーラル録音とステレオ録音とがある。
名盤としてよく知られているのはステレオ盤であるし、
私が初めて買ったフォーレのレクィエムも、クリュイタンスのステレオ盤だった。

いま聴いてもいい演奏だ。
でもしばらくして、音楽之友社がCDを独自に復刻するようになった。

セルの「エグモント」が出たし、その後にクリュイタンスのモノーラル盤が出た。
モノーラル盤のことは、黒田先生のレコード評で知っていた。

黒田先生はステレオ録音よりも、モノーラル録音のレクィエムをより高く評価されていた。
そのころから聴きたい、と思っていた。

でも音楽之友社が復刻するまで廃盤だった、と記憶している。
それからしばらくして東芝EMIからもモノーラル盤が出た。
さらにテスタメントからも復刻CDが出た。

たしか、黒田先生は、ステレオ盤でのクリュイタンスの演奏は、
音楽の身振りが大きくなっている──、
そういう趣旨のことを書かれていた、と記憶している。

ステレオ盤だけを聴いているときは、そうかな、と感じていた。
けれどモノーラル盤を聴いたあとに、ステレオ盤を聴くと、そう感じられる。

音楽の身振りが大きくなったことがよい方向に働く音楽もあるだろうが、
フォーレのレクィエムにおいて、
それはフォーレのレクィエムならではの色調を損うよう働くようにも聴ける。

いまモノーラル盤は、
André Cluytens – Complete Mono Orchestral Recordings, 1943-1958”で聴ける。
数年前に出たボックスのことを、いまごろ書いているのは、
さきほどe-onkyoを検索してみたら、あったからだ。

ここまで書けば気づかれる方もいるだろう。
MQAで、96kHz、24ビットで配信されている。

Date: 11月 17th, 2019
Cate: 五味康祐

続・無題(その11)

その1)の冒頭で引用したことを、また書き写しておく。
     *
暴言を敢て吐けば、ヒューマニストにモーツァルトはわかるまい。無心な幼児がヒューマニズムなど知ったことではないのと同じだ。ピアニストで、近頃、そんな幼児の無心さをひびかせてくれたのはグレン・グールドだけである。(凡百のピアニストのモーツァルトが如何にきたなくきこえることか。)哀しみがわからぬなら、いっそ無心であるに如かない、グレン・グールドはそう言って弾いている。すばらしいモーツァルトだ。
(五味康祐「モーツァルト弦楽四重奏曲K590」より)
     *
《ヒューマニストにモーツァルトはわかるまい》とある。
そう書いている五味先生が、「モーツァルト弦楽四重奏曲K590」を書いている。

その10)で引用しているように、
五味先生は、モーツァルトの弦楽四重奏曲第23番 K.590を聴かれていない。

なのに三万字をこえる「モーツァルト弦楽四重奏曲K590」だ。

五味先生はヒューマニストでないから書けたのか。

Date: 11月 17th, 2019
Cate: ジャーナリズム

オーディオの想像力の欠如が生むもの(その61)

オーディオの想像力の欠如した耳は、必要とされる音がわからないのかもしれない。

Date: 11月 17th, 2019
Cate: 快感か幸福か

快感か幸福か(白黒つけたがる人たち・その1)

日本人は、特にそうなのかもしれない。
何事にも白黒つけたがる人たちがいる。

こっちがいいに決っている、
あれはダメに決っているだろう、
そんなことにとらわれている人たちである。

最近ではMQAはダメ、と全否定する人がいる。
ここでも白黒つけたがっている、というか、白黒つけている。

なぜ、こうまでも白黒つけたがるのか。
白黒つけることに、快感をおぼえるからではないのか。

自分の下した白黒に賛同してくれる人がいれば、それも快感につながっていく。
賛同者が多いほど、快感は増していくことだろう。

でも、それはどこまでいっても快感でしかない。
快感は慣れてしまうのかもしれない。

だから、より強い快感を求めることになる。
そのために、より過激な白黒をつけていく──。

Date: 11月 17th, 2019
Cate: 1年の終りに……

2019年をふりかえって(その8)

(その7)へのfacebookでコメントを読んで気づいたことがあった。
シスコン(システムコンポーネントの略)で、音楽を聴いていない、ということだ。

いまではシスコンという呼称も、どれだけ通用するのだろうか。
私が中学生のころは、システムコンポーネントの全盛時代といえる。

テレビでもシステムコンポーネントのコマーシャルが流れていたくらいだ。
親戚の家、友人の家に、確かにシステムコンポーネントはあった。

あったけれど、それで音楽を聴いた、という記憶はほとんどない。
一度くらいは聴いているだろうが、
少なくともオーディオに興味をもってからは、
つまり中学二年の秋以降は、システムコンポーネントで音楽を聴いた記憶はない。

システムコンポーネントではなく、ラジカセで音楽を聴いていた。

ステレオサウンドでは、
いわゆる高級システムコンポーネントといえるシステムは聴いている。

例えばB&Oが、その代表といえるし、
マッキントッシュ、メリディアン、QUADなど、他にもいくつもあるが、
そういう高級システムコンポーネントは聴いていても、
いわゆるシスコンで、多くの人がイメージするシステムコンポーネントは聴いていない。

私が特別だとは思っていない。
同世代のオーディオマニアでも、シスコンの経験がない人は多いのではないのか。

シスコンで聴いていた、という人も、多いように思う。
半々ぐらいなのか。

そのへんのことははっきりとはいえないが、
シスコンは流行っていた。
流行っていたけれど……、ということに、今日、コメントによって気づかされた。

Date: 11月 17th, 2019
Cate: 1年の終りに……

2019年をふりかえって(その7)

40年前、
ここまで遡られなくとも30年前ぐらいでもいい。
そのころ評価の高かったオーディオ機器は、いま聴くとどうなのだろうか。

20年前、30年前、さらにもっと以前のオーディオ機器でも、
当時最高級だったアンプやスピーカーではなく、
普及クラスや中級クラスのオーディオ機器はどうなのか、とういことに関心がある。

今回303は、15,000円で入手できた。
かなり安く手に入れられた、と思っている。

ヤフオク!は、いますぐ欲しい、ということでなければ、
じっくり待てば、タイミングもあるけれど、こんなに安く、と思う価格で落札できる。

その価格で、いま新品で購入できるスピーカーやアンプには、どういった製品があるのかといえば、
魅力的に感じられるモノは、ほとんどないのが実情だ。

ならば10代の若者がオーディオに興味をもってスタートしようとすれば、
新品にこだわる気持がなければ、ヤフオク!に限らず中古も、
選択肢に入ってくるはずだと思う。

ここが私が10代のころと大きく違っている。
昔も中古市場はあったけれど、いまとは比較にならない。

とはいえ中古まで選択肢になってくると、選ぶ基準をどうするのか。
興味をもったばかりの10代には、大いに迷うところのはずだ。

当時買えなかったから、いま──、という世代には一応の基準はある。
それによって選択肢は絞られていくが、10代にはそれはない。

インターネットで検索すれば、製品情報は得られるが、バラツキもある。
数多くのヒットする製品もあれば、そうでない製品もある。
ヒット数が多い製品がよい製品であるならば苦労はしないし、
よい製品であったとしても、その人に向いているかどうかは、また違ってくる。

Date: 11月 16th, 2019
Cate: 1年の終りに……

2019年をふりかえって(その6)

今年は、KEFのModel 303をヤフオク!で手に入れた。
40年ほど前のスピーカーシステムを、
それも中級クラスのスピーカーシステムを、いまごろになって自分のモノとした。

303というスピーカーについては、これまでにも何度か書いている。
1980年ごろ、見た目は地味ながらも、その音は高く評価されていた。
価格的には、日本の598スピーカーと同じといえる。

けれどウーファーの口径も小さいし、ユニット構成も3ウェイではなく2ウェイだし、
なによりも軽い。
アンバランスな要素は、まったくない、といえる設計である。

とはいえ40年前のスピーカーである。
送料無料で、かなり安く落札できたからといって、
いまさら……、という気持がまったくなかったわけでもない。

中古のスピーカーは、見た目だけでは判断しにくい。
自分の手で鳴らしてみないことには、コンディションについての判断はできない。

それでも303を入手したのは、単に欲しかった以外にも理由があって、
その理由も強かったからでもある。

いまヤフオク!で、20年、30年以上前のオーディオ機器を落札している人たちは、
おそらく私と同じ世代か上の世代がメインなのかもしれない。

若かった時、買えなかった──、それをいま手に入れている感がある。

でも、その一方で、オーディオに興味をもった10代の人たちはどうなのか、と思う。
私のころは、ほぼすべての価格帯に万遍なく製品があった、といえる時代だ。

いまはそうではない。
いまの10代は、どこからオーディオをスタートするのだろうか。
この疑問がある。

そして、どこからスタートしたらいいのだろうか、とも考える。

Date: 11月 16th, 2019
Cate: High Resolution, James Bongiorno

MQAのこと、James Bongiornoのこと(その1)

ジェームズ・ボンジョルノは2013年に亡くなっているから、
MQAの音は聴いていない。

昨年秋からMQAの音をいろんな機会で聴くたびに、
いい方式が登場してくれた、と思う。

それだけに、ここでMQAやメリディアンのことについて書くことが多くなっている。

書いていて、ふと思った。
ボンジョルノはMQAをどう評価するのだろうか、と。

Date: 11月 16th, 2019
Cate: ワーグナー

ワグナーとオーディオ(その5)

ワグナーのハイライト盤はあまりない。
ワグナーの楽劇は、かなり長い演奏時間を要するにも関らず、である。

つまりワグナーの楽劇を聴くのであれば、ほぼ全曲盤を聴く、ということになる。
最初から最後まで一気に聴きとおさなければならない──、
そういいたい気持はあるけれど、現実にはなかなかそれだけの時間を確保するのが難しい。

私も、ワグナーの楽劇を一気に最後まで聴いたことは、そうそうない。
どこかで休憩をいれるか、
もしくは二日に分けて聴くこともあるし、途中まで、もしくは途中から、という聴き方もする。

LPからCDになり、ワグナーの楽劇は、途中で盤面を変えることが減った。
単に回数が減っただけでなく、幕の途中でのディスクのかけかえも減っている。

この点では、LPよりCDのほうが、ワグナーの楽劇の鑑賞に適している、ともいえる。
このことはCDが登場したときから思っていたけれど、
だからといって、一気に聴く時間がのびたかというと、必ずしもそうとはいえなかった。

厳密な比較ではない。
感覚的な比較でしかないのだが、
CDだと、聴きとおすしんどさが増しているように感じていた。

LPだと20数分で盤面をかえる必要があるから、
わずかな時間とはいえ、息抜きのようなことができるが、そのおかげとは思えなかった。

CDだと、なぜだが息苦しさ的なことを、LPよりも強く感じてしまう。

──実は、ここまでは(その4)のあとに書いたままにしていた。
二年経って、続きを書き始めた。

書き始めた理由はMQAにあり、
なので、なんとなく、こんなことを書こうかな、と決めていたことと、
少しばかり変ってきている。

この一年MQAを聴いて感じていることの一つが、
ワグナーの楽劇を聴くための技術のようにも感じていることだ。

Date: 11月 16th, 2019
Cate: デザイン, 川崎和男

WAVELET RESPECT Carbon Fiber(その2)

9月12日から二ヵ月。
あの日感じたことで、ひとつ書かなかったことがある。

大きく的外れな解釈のように思えたからだった。
二ヵ月経っても、そう感じている。

WAVELET RESPECTは、一輪挿しである。
WAVELET RESPECTという一輪挿しの「花」は、人である。

Date: 11月 15th, 2019
Cate: ショウ雑感

2019年ショウ雑感(その16)

OTOTEN、ヘッドフォン祭、インターナショナルオーディオショウ、
これらの催しに行って毎回思うのは、
ネットの記事にしても、オーディオ雑誌の記事にしても、
そこで行われているイベントの内容を伝えていることは、ほとんどない──、
そのことにいつも不満がある。

ここのブースには、こういう製品がありました──、
そんな記事は、インターネットの記事で十分だ、と思う。
むしろオーディオ雑誌は写真の点数も少なかったり、モノクロだったりするのに、
インターネットの記事だとカラーで点数も多かったりする。

それにこういう製品がありました──、
それらの製品は遅かれ早かれ新製品紹介のページに登場してくる。

会場に来られなかった人に向けての記事であってほしい、といつも思う。
来られなかった人は、どういうことう知りたいのか、
そこへの想像力がほとんど感じられない記事ばかり、
毎年、どのオーディオ雑誌でもそうだ。

今回のヘッドフォン祭でいえば、
roonのイベントは、来られなかった人にきちんと伝えたい、と思うだけの内容だった。
とはいえ、計八時間のイベントだっただけに、
すべてを伝えるのは文章だけでは無理なところもある。

会場となったブースにはビデオカメラがあった。
記録しているのはわかっていた。
でも公開してくれるとはまったく思っていなかった。

主催のフジヤエービックのブログに、YouTubeで公開した、とある。

やっとこういうことをやってくれる主催者が現れてくれた。

Date: 11月 15th, 2019
Cate: plus / unplus

plus(その18)

瀬川先生は、
かなり以前からフルレンジからスタートする4ウェイ構成のシステム構築について、
何度か書かれている。

私が読んだのは、ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 1での記事だった。
当時高校生だった私は、JBLの4343、4350に憧れていた。

とはいえ、手の届く存在ではなかったからこそ、
瀬川先生の4ウェイのスピーカー構築の記事は、嬉しかったし、夢中で読んだ。

4343(正確には4341)を鳴らされている瀬川先生の記事だからこそ、
何度も読み返し、記憶している。

フルレンジからスタートして、トゥイーターをつけて2ウェイ、
その後、ウーファーを足して3ウェイ、
最後にミッドハイを追加しての4ウェイの実現である。

フルレンジからスタートするからこそのフルレンジ。
何を書いているのか、と思われそうだが、
瀬川先生は、その記事で、一度に4ウェイにしてもかまわない、とも書かれていた。

ならばミッドバス帯域を受け持つのはフルレンジでなくとも、
JBLでなら、2121や2202というユニットを使う手もある。

あのころは、この点が、理解に苦しむところだった。
でも、いまなら、やはりフルレンジからのスタートがいい、と結論に達することができる。

(その17)で引用したことである。
フルレンジ一発の音に、いつでも戻せるからだ。
フルレンジ一発の音を、すぐに聴けるからである。

いつでもスタート時の音を再確認できる。

Date: 11月 15th, 2019
Cate: High Resolution

MQAで聴けるピーター・ガブリエル

この一年、e-onkyoのサイトを訪れては、
ピーター・ガブリエルを月一回くらい検索していた。

SACDが登場した時、ピーター・ガブリエルはアルバムのすべてをSACDで出した。
e-onkyoでDSD音源で配信されないのか、と期待して、であった。
けれど、ない。

出ない、とは思っていなかった。
いつかは出るんだろうけど、まだなのか、と思っていた。

9月に“Flotsam and Jetsam”が発表になった。
CDも発売になるのか、とあれこれ探しても、非可逆圧縮音源のみの配信しか見当たらなかった。

この件があったから、よけいに期待は遠のいていった。
今日、SNSを眺めていたら、TIDALで、ピーター・ガブリエルのMQAでの配信が始まった、とある。
ということは、e-onkyoでも始まっているはず。

今日の期待は、もう確信である。
始まっていた。
しかもflacだけでなく、MQAでも配信されている。

Flotsam and Jetsam”もある。
48kHz、24ビットではあるけれど、MQAである。

それに“Passion”もある。
こちらは96kHz、24ビットで、もちろんMQAもある。

“Passion”、いったいどんなふうに鳴ってくれるのだろう。

Date: 11月 15th, 2019
Cate: 菅野沖彦

菅野沖彦著作集

菅野沖彦著作集」が、ステレオサウンドから11月18日に発売になる。
あわせて、「菅野沖彦のレコード演奏家訪問〈選集〉」も出る。

「菅野沖彦著作集」はステレオサウンドのウェブサイトをみればわかるように、
今回は上巻であり、下巻の発売も予定されている。

せっかくの著作集なのだから、
ステレオサウンドに掲載された内容だけでなく、
スイングジャーナルに掲載されたものも読みたい、と思う人は多いはずだ。

スイングジャーナル社がいまもあれば、
スイングジャーナル版菅野沖彦著作集が出るのを期待できるが、
スイングジャーナル社はすでにない。

下巻のあとに、スイングジャーナルだけでなく、
他のオーディオ雑誌、レコード雑誌に書かれた文章をおさめた著作集を出してほしい。

菅野先生の本が、こうやって出るのはいいことだと思う。
それでも、こうやって一冊の本にまとめられて、
それを手にして読むことで、いまのステレオサウンドをはじめ、
オーディオ界からなくなってしまったものに、読み手は気づくのではないだろうか。

すべての読み手が気づくとは思っていないが、少なからぬ人たちが気づくであろう。
この読み手のなかには、ステレオサウンドだけでなく、
オーディオ雑誌の編集者、それにオーディオ評論家と呼ばれている人も含まれる。

気づく人はどれだけいるのか、何に気づくのか。
それがはっきりとしてくるのは、どのくらい経ってからなのだろうか。

Date: 11月 14th, 2019
Cate: audio wednesday

第107回audio wednesdayのお知らせ(バーンスタインによる「第九」)

今年はベルリンの壁が崩壊して30年。
30年前の12月25日に、
バーンスタインがベルリンの壁崩壊を記念しての、ベートーヴェンの第九を振っている。

すぐさまCDになった。
ベルリンの壁のカケラが付属していた限定版も出ていた。

今年9月に、同じジャケットで再発売になった。
CDとDVDがセットになっている。
さらにLPでも発売になっている。

12月4日のaudio wednesdayの最後にかける曲は、
バーンスタインのこの「第九」にしたい。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。