ワグナーとオーディオ(その5)
ワグナーのハイライト盤はあまりない。
ワグナーの楽劇は、かなり長い演奏時間を要するにも関らず、である。
つまりワグナーの楽劇を聴くのであれば、ほぼ全曲盤を聴く、ということになる。
最初から最後まで一気に聴きとおさなければならない──、
そういいたい気持はあるけれど、現実にはなかなかそれだけの時間を確保するのが難しい。
私も、ワグナーの楽劇を一気に最後まで聴いたことは、そうそうない。
どこかで休憩をいれるか、
もしくは二日に分けて聴くこともあるし、途中まで、もしくは途中から、という聴き方もする。
LPからCDになり、ワグナーの楽劇は、途中で盤面を変えることが減った。
単に回数が減っただけでなく、幕の途中でのディスクのかけかえも減っている。
この点では、LPよりCDのほうが、ワグナーの楽劇の鑑賞に適している、ともいえる。
このことはCDが登場したときから思っていたけれど、
だからといって、一気に聴く時間がのびたかというと、必ずしもそうとはいえなかった。
厳密な比較ではない。
感覚的な比較でしかないのだが、
CDだと、聴きとおすしんどさが増しているように感じていた。
LPだと20数分で盤面をかえる必要があるから、
わずかな時間とはいえ、息抜きのようなことができるが、そのおかげとは思えなかった。
CDだと、なぜだが息苦しさ的なことを、LPよりも強く感じてしまう。
──実は、ここまでは(その4)のあとに書いたままにしていた。
二年経って、続きを書き始めた。
書き始めた理由はMQAにあり、
なので、なんとなく、こんなことを書こうかな、と決めていたことと、
少しばかり変ってきている。
この一年MQAを聴いて感じていることの一つが、
ワグナーの楽劇を聴くための技術のようにも感じていることだ。