Archive for 8月, 2019

Date: 8月 10th, 2019
Cate: High Resolution

MQAのこと、カセットテープのこと(その3)

今回もそうだが、高校生だった時も、
SB-F01との距離は1mよりももっと近い。

スピーカーとヘッドフォンのあいだくらいの聴き方とでもいおうか、
イヤースピーカー的といったほうがいいのか、
耳との距離は50cmぐらいしかない。

小さい音場である。
その小さな音場で音楽を聴きながら、
LS3/5Aの音のことを想像していた。

ロジャースのLS3/5Aのことは、
私にとって初めてのステレオサウンドである41号とともに買ったもう一冊、
「コンポーネントステレオの世界 ’77」で、
井上先生が女性ヴォーカルを聴くためのコンポーネントとして、
そのためのスピーカーシステムとして知った。

このころからLS3/5Aで、女性ヴォーカルを聴きたい、とずっと思っていた。
なのに聴く機会はなかなかおとずれなかった。

瀬川先生が熊本のオーディオ店に来られた時も、
LS3/5Aを聴くことはなかった。

そのオーディオ店には展示してあった、と記憶しているが、
買えるだけの余裕のない高校生が、店員に聴かせてほしい、とは言い難かったし、
それだけでなく、オーディオ店の騒がしさの中で、本領を発揮するスピーカーではない、
そのことは理解しているつもりだったから、きちんとした条件で聴きたい、
それだけを思っていた。

音色としてはLS3/5AとSB-F01はずいぶん違うだろうな、と思っていたが、
そこでの音場の小ささと、近距離での聴き方は、
どこかに通じるところがあるのかもしれない──、
そんなことを思いながら、SB-F01でいろいろ試して聴いていた。

そのことを今回、同じような位置関係で聴いていて思い出していた。

Date: 8月 10th, 2019
Cate: 会うこと・話すこと

会って話すと云うこと(audio wednesdayのこと・その3)

ラインケーブルの応急処置をするあいだ、
まったく音を鳴らしていないと、アンプやCDプレーヤー、
それにスピーカーのウォーミングアップも進まないので、
とりあえず、俗にいう赤白ケーブルで接続して、とりあえず鳴らすようにはしていた。

ケーブルのトラブルがあったため、
開始の19時すぎても、スピーカーやアンプなどのきちんとしたセッティングは終っていなかった。

音を鳴らしながら、スピーカーの細かな位置決め、ガタとり、
ホーンの前後位置の調整、
それからアンプ、CDプレーヤーに関しても、いくつかのことをやって、
開始時間よりも30分くらい過ぎて、どうにか準備完了である。

ケーブルは赤白ケーブルのままである。
まず、これで聴いてもらい、
応急処置したケーブルを交換する。

赤白ケーブルよりもいいけれど、もやもやした気分が晴れない。
やっぱり前日の晩に、ケーブルの第二弾を作ってくればよかった……、
と後悔しても、遅い。

どうしようかな……、と思って、トートバッグの中をみたら、
ケーブルが入っていた。入れたつもりのないケーブルがあった。

打痕があったため、前回引き上げたケーブルが入っていた。
一度はバッグから取り出していた。
前日の晩に、一緒に引き上げてきたアース線を使おうと思って、
まとめてバッグに入れていたようだった。

これで、新しく来てくださった人たちに、いつも通りの音を聴いてもらえる。
これは、音を出している側にとって、安心感である。

常連の人たちだけであったら、説明すれば納得してくれても、
新しい人たちに対して、そういうことはしたくない。

何かトラブルがあったとしても、できるかぎりいつも通りの音、
できればいつも以上の音を出したい、という気持は常にある。
それでも予期せぬトラブルがあると、場合によってはなかなか難しくなる。

とにかく、そうやって8月7日のaudio wednesdayは始まった。

Date: 8月 10th, 2019
Cate: 再生音

ゴジラとオーディオ(その7)

秩序から連想したのが、暖炉だった。
暖炉には炎がある。

その炎を、オーディオによる音として連想することが、またある。

「音は人なり」は何度もくり返し書いてきている。
「音は人なり」なのだから、暖炉の炎は人なり、である。

この炎は、奔馬ではないか、と連想する。
辞書には、
《勢いよく走る馬。あばれ馬。また,転じて物事の勢いの盛んなたとえ》とある。
だから奔馬の勢いという表現がある。

オーディオマニアならば、裡に奔馬を秘めているのではないのか。
だからこそのオーディオマニアではないのか。

つまり、暖炉の炎は、裡なる奔馬、
そう連想してしまう。

Date: 8月 9th, 2019
Cate: 再生音

ゴジラとオーディオ(その6)

(その5)で秩序と書いて連想したのは、暖炉だった。

オーディオによる音とは、暖炉での炎ではないのか、と思ったからだ。
音も炎も一瞬として静止することはない。
自在に形を変えていく。

炎には薪が必要である。
薪がなければ、どんなに立派な暖炉であっても、そこに炎は立たない。

薪があれば、それでいいわけでもない。
暖炉の大きさによって、そこに焼べる薪の量は関係してくる。

暖炉を薪でいっぱいにしたらどうなるのだろうか。
暖炉のある家に住んだことはないので、なんともいえないが、
おそらく炎は立たないであろう。

酸素も必要になるからだ。

暖炉の大きさに見合った薪の量と酸素があって、
つまり一つの秩序が成り立っているからこそ、暖炉は暖炉として機能する。

炎が音であるとすれば、
薪と酸素は何になるのか。

Date: 8月 8th, 2019
Cate: オーディオ入門

TSURUYA CLASSIC SALON

出身地・熊本のオーディオ事情には疎い。
たまに帰省しても実家でごろごろしているだけで、熊本市内にでかけることもしないから、
熊本のオーディオ事情は疎い、というよりまったく知らない。

PHILE WEBの記事
百貨店でレコードが楽しめる - 熊本の老舗百貨店「鶴屋」クラシックサロンを訪ねる」を
読んだところだ。

私が小学生のころは、熊本には三つのデパートがあった。
この鶴屋の他に、大洋デパートがあった。
当時は大洋デパートのほうが繁盛していたイメージがある。
大洋デパートは、1973年に火災を出し閉店した。

それから岩田屋伊勢丹というのもあった。
福岡の岩田屋と東京の伊勢丹によるデパート(ショッピングセンターか)だったが、
大洋デパート閉店後、鶴屋の躍進に押されてしまったのか、
伊勢丹が撤退し、岩田屋になってしまい、それも閉店してしまった(はずだ)。

熊本では鶴屋の一人勝ちになっているようだ。
その鶴屋に、クラシックサロン(TSURUYA CLASSIC SALON)がオープンしている、
しかも五年前のことである。まったく知らなかった。
嬉しいニュースである。

クラシックサロンだから、オーディオ店ではない。
これが、また嬉しく思うところだ。

今度帰省した時に行ってみよう。

Date: 8月 8th, 2019
Cate: audio wednesday, 会うこと・話すこと

会って話すと云うこと(audio wednesdayのこと・その2)

audio wednesdayでは、自作の直列型ネットワークを使用している。
通常は、コイズミ無線製のネットワークに私が手を加えたモノを使用している。

自作のネットワークで通常も鳴らしてほしい、と思いつつも、
そうしないのは、(その1)で書いた演劇の人たちの扱いのひどさだけが理由である。

演劇の人たちの扱いだと、二、三ヵ月でどこかおかしくされるはず。
半年と持たない、とみている。

そういう環境には置いておけない。
なので毎回ネットワークも交換するという面倒なことをしている。

ユニットには、それぞれCR方法を、audio wednesdayではやるけれど、
通常はやっていない。
以前は、やっていたけれど、コンデンサーのリード線を捥ぎ取られてしまったことが二回あった。

audio wednesday以外の日の音も、できるだけaudio wednesdayの音に近いものにしたい。
そう思っていても、演劇の人たちがいるかぎり無理である。

壊されても修理はできる。
壊されたのが一週間ほど前にわかれば、当日までに部品を調達して、ということもできるが、
すべて当日になって判明することだから、あーっ、またか……、と思うしかない。

昨晩もそうだった。
しかも自作ラインケーブルの第二弾も、暑さにまけて用意してこなかったので、
不本意な音で鳴らすしかないのか、
来てくれる人も、常連の人たちばかりだから、事情を説明すればわかってくれるだろう……、
そんな甘い考えをもっていた。

でも、おもしろいもので、そういう晩にかぎって、新しい人たちが三人も来てくださった。

Date: 8月 8th, 2019
Cate: audio wednesday

第104回audio wednesdayのお知らせ

9月のaudio wednesdayは、4日。
テーマは未定でも、音出しの予定。

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。
19時からです。

Date: 8月 8th, 2019
Cate: audio wednesday, 会うこと・話すこと

会って話すと云うこと(audio wednesdayのこと・その1)

昨晩のaudio wednesdayは、ちょっとしたトラブルから始まった。
毎回、スピーカーをふくめて、アンプ、CDプレーヤーすべての機器のセッティングを、
すべてやるわけだが、
アンプ、CDプレーヤーをラックからひっぱり出すために、裏にまわって驚いた。
ラインケーブルのコネクターが、一箇所、引きちぎられていた。

実は前回も、ラインケーブルに、何か硬い角のあるモノを落したような打痕があった。
喫茶茶会記では、いろんな催しが行われている。

定期的に演劇を行っている人たちは、
オーディオ機器を動かしている、という話は以前から聞いていた。
その扱いが゛そうとうに乱暴なことは、これまでにも気づいていた。

それでもCDプレーヤーとアンプを接続するケーブルまでは、
演劇の人たちによる被害を受けるとは、まったく思っていなかった。

オーディオにまったく関心ない人たちのオーディオ機器の扱いは、
人にもよるのはわかっているけれど、ひどいことがある。

もっともオーディオマニアを自称している人でも、
そんな持ち方をするのか……、と呆れるというか驚かされることはある。

二ヵ月続いて、ラインケーブルがけっこうな被害を受けている。
しかもaudio wednesdayの当日に判明するなのだから、
昨晩は、ケーブルの補修をやらなければならなかった。

しかも、必要な部品を用意していたわけではないから、応急措置でしかない。

打痕がついたケーブルは、4月から導入したもので、
打痕があったため、先月引き上げた。
なので、それ以前のケーブルを先月から接続していたのだが、それをダメにされた。

実をいうと、今回、ラインケーブルを自作して持ってくるつもりだった。
コネクターも買って、必要な加工もしていた。
でも、暑さに負けて、そこで止ってしまった。

Date: 8月 8th, 2019
Cate: Jazz Spirit

ジャズ喫茶が生むもの

5月に「ジャズ喫茶が生んだもの(Tokyo Jazz Joints)」を書いた。

ドイツに、日本のジャズ喫茶から着想をえたというジャズ喫茶が誕生した、という記事を紹介した。
その後も、同じような記事を数本目にした。

ドイツだけではなく、アメリカにもイギリスにも誕生している、とのこと。
日本でも、四ツ谷のいーぐるでは、外国人の客が増えている、という記事も目にした。

昨晩のaudio wedneadayには、三人の、初めての方が来られた。
新しい人が来てくれると、嬉しい。

一人の方が、二年後にジャズ喫茶を開店する予定だ、ときいた。
横浜のちぐさで六年間働いていたという人だから、単なる夢では終らないはずだ。

駅までの短い帰り道、Sさんと話していて、
もしかすると古くからのジャズ喫茶、これから誕生するジャズ喫茶を含めて、
もし再びオーディオブームが訪れるとしたら、それはジャズ喫茶が生むものかもしれない、
そうおもった次第。

Date: 8月 7th, 2019
Cate: オーディオ入門

オーディオ入門・考(Dittonというスピーカー・その10)

その9)で書いた女の子。
このような子供たちは大勢いるのだろうか。

大勢いるとして、大きくなっても、同じことをいうのだろうか。
「映画館って、映画観るだけでしょ。何が楽しいの。観る以外何もないでしょ」と。

ライヴには行っても、CDは買わないという人たちが増えている、ということは、
数年前から耳にするようになった。

「CDを買っても、音楽が聴けるだけでしょ。何が楽しいの。聴く以外何もないでしょ」
こんなことを思っているのか。

握手券がついているCDは、聴くだけではない。
好きなアイドルに会いに行ける、握手ができるという楽しみ・特典がついている。
もうすでに、上記の女の子のような人は、すでに大人の中にもいるのだろう。

オーディオブームはもうこない、ともいえるし、
ホームシアターという趣味にしても、
音だけでなく映像もついているとはいえ、
上記の女の子にとっては、映画と同じだとしたら、
観る以外何もないでしょ、ということになるはずだ。

けれどオーディオが、単なるブームではなく、
その世界の深さと広さがほんとうに広まっていけば、
聴く以外何もないでしょ──、そんなことはいわなくなるはずである。

Date: 8月 6th, 2019
Cate: audio wednesday

第103回audio wednesdayのお知らせ(Walls and GODZILLA KING OF THE MONSTERS)

明日(8月7日)のaudio wednesdayのテーマは、決めずにいく。

前回書いているように、バーブラ・ストライサンドの「Walls」は持っていく。
もう一枚、「GODZILLA KING OF THE MONSTERS」も持っていく。

なんの脈絡もないディスク選定である。

たまにはこういうのもいいのではないか。
(単に暑くて準備するのが面倒なだけ……かも)

場所はいつものとおり四谷三丁目のジャズ喫茶・喫茶茶会記のスペースをお借りして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。
19時からです。

Date: 8月 6th, 2019
Cate: アナログディスク再生

「言葉」にとらわれて(トーンアームのこと・その5)

ファイナル・ブランドといえば、
いまではすっかりイヤフォン・ヘッドフォン専門メーカーという色が濃いが、
以前は違っていた。

私のなかでは、アナログ関連のメーカーという印象が、いまも残っている。
KKC48という、トーンアーム用のアクセサリーがあった。

アームパイプの先端にとりつけるモノで、
いわば綱渡りの際の長い棒のような役割を果たすものだと、私は理解している。

実物を見たことはない。
広告の写真だけである。
オーディオ雑誌の記事で紹介されたのもみた記憶はない。

試してみたい、と思っていたけれど、試さず仕舞いだった。
綱渡りの棒と表現したが、おそらくそうであろう。

綱渡りの経験はないが、あの棒があるとないとでは、
綱を渡っていく人の困難さはずいぶん違うのではないのか。

ここではワンポイントサポートのトーンアームについて書いている。
ワンポイントサポートのトーンアームは、調整をきちんと行えるのであれば、
かなりいい結果も期待できる。

けれど、頭で思っている以上に、調整はそれほど簡単ではない。
理屈を理解して、コツをつかめば、巷でいわれているほど難しいわけではない。

それでも、もうすこし安定性をどうにかできないものかと考える時に、
KKC48のことが浮んでくる。
KKC48こそ、ワンポイントサポートのトーンアーム用アクセサリーといってもいい。

といっても試していないのだから、なんともいかないところは残るけれど、
考え方としては正しいはずだ。

オーディオのプロフェッショナルの条件(その3)

facebookには便利な機能というか、ややおせっかいな機能というか、
過去のこの日、何を投稿したかを知らせてくれる機能がある。

2011年8月5日に書いたことを、facebookが表示してくれた。
こんなことを書いている。
《オーディオのプロのいないオーディオ販売店は、オーディオだけを扱っていたとしても、それは家電量販店と同じこと。》

私のコメントを含めて、20件のコメントがついた。
これだけのコメントがつくことは、私の場合めったにない。
おそらく20件は、これまでの最高のはずだ。

実は、この投稿の前に、
いまのオーディオ店にいるのは、オーディオのプロフェッショナルではなく、
オーディオ機器販売のプロフェッショナルだ、とも書いていた。

ある人と話していて、共通の知人のことに話題がうつった。
共通の知人は、都内のオーディオ店の店員である。
特に親しかったわけではないが、何度か会っているし、何人かで飲み食いもしている。

共通の知人は、私よりもひとまわり以上若い。
それにしても……、と思うことが、会う度にあった。

私が彼と同じ年の頃、あたりまえのこととして知っていたことを、
彼はほとんど知らない。
これで、オーディオ店の店員がつとまるのかと心配になるくらいだが、
きちんと売上げを達成しているようだ。

だから、彼のことを私は、オーディオのプロフェッショナルではない、とある人に言ったところ、
その人は、顔を真っ赤にして、彼をかばう。

彼はきちんと売り上げているから、プロフェッショナルだ、とその人はいう。
そして、あなた(私のこと)は、売り上げられないでしょ! とつけ加えた。

その人の基準では、オーディオ店で売上げを達成できる人はオーディオのプロフェッショナルで、
そうでない人は、オーディオのプロフェッショナルではない、ということらしい。

オーディオに関することで、お金を稼ぐことができれば、
オーディオに詳しくなくとも、オーディオのプロフェッショナルといおうとおもえばできる。

どんなにオーディオに詳しくても、
セッティング、チューニングの確かな技術をもっていても、
それでお金を稼いでなければ、オーディオのプロフェッショナルではない──、
これも一つの理屈である。

けれど、20件のコメントを読めば(サンプル数が少ない、という人もいよう)、
世の中のオーディオマニアがどう思っているかは、わかる。

Date: 8月 5th, 2019
Cate: ジャーナリズム, ステレオサウンド

編集者の悪意とは(その17)

沢村とおる氏、
それから74号でマーク・レヴィンソンにインタヴューした人が、
結果として誌面に掲載された記事を見て、どう思ったのかは、全く知らない。

沢村とおる氏とは一度も会っていない。
74号の人とは、その後も顔を合せ話もしているが、
74号のことについて何かいわれたことはない。

ただ、どちらの記事にしても、私が担当編集者だったわけではないから、
担当編集者には、なんらか反応があったのかもしれないが、
担当編集者から、そのことをきかされてもいない。

二人とも、私がやったことを、編集者の悪意と捉えているのかどうか。
どうでもいいことである。

私にしてみれば、こんなつまらない原稿を、平気な顔して編集者に渡してしまえる方が、
そこには悪意に近いものがある、と思う。

この人たちは、どこを向いて原稿を書いているのだろうか。
少なくとも読者を向いているとは思えない。

思えなかったからこそ、私は、ここに書いてきたことをやった。
ただそれだけのことである。

編集者も読者なのである。
いまならばインターネットで原稿は、パッと送信できるし、
すぐにコピーもできるから、原稿が届けば、
複数の編集者が読むこともできる。

でも私がいた時代は、原稿を取りに行っていた時代だ。
原稿を受けとって、会社に向う電車のなかで読む。

最初の読者なわけだ。
これこそ編集者の特権ともいえるわけだが、
ここでは編集者としてよりも、ステレオサウンドの読者、
オーディオマニアとしての読者として読んでいた。

Date: 8月 4th, 2019
Cate: きく

カセットテープとラジカセ、その音と聴き方(余談・その21)

TC800GLと同時代のヤマハの製品は、
プリメインアンプのCA2000をみればわかるように、
そのジャンルの製品として、必要される機能はできるかぎり搭載しようとコンセプトがある。

CA2000は、その後に登場したA1とは違う。
メーターも搭載しているし、トーンコントロールはどちらもあるが、
A1にはターンオーバー周波数切替えはない。
フィルターはA1はローカットのみ、CA2000はハイカットも持つ。

PHONO入力もCA2000は、負荷抵抗の三段切替が可能。
テープモニターは、A1は一系統、CA2000は二系統、
モードセレクターも、A1は二点、CA2000は五点。
ミューティングはA1はなし、CA2000は-20dBである。

そしてCA2000はパワー段のA級/B級動作の切替えもできる。

CA2000にこれ以上の機能を搭載しようとすれば、
フロントパネルの面積がもっと必要になるほどに、
使い手が望む機能は、ほぼ備えている、といえる。

それはコントロールアンプのCIにもいえる。
そしてパワーアンプのBIもそうである。

CIはフロントパネルを視れば、それがどれだけ多機能なコントロールアンプなのかは、
誰の目にも明らかなのに対し、BIはちょっと違う。
別売のコントロールユニットUC-Iを取り付けていないBIは、
シンプルなパワーアンプにしかみえない。

けれどリアパネルをみると、スピーカー端子が五組ある。
これを活かすにはUC-Iが必要となる。

UC-Iを装備したBIは、五系統のスピーカー端子が使えるようになるだけでなく、
それぞれにレベルコントロールが可能にもなる。

そこまでの機能を必要とする使い手がどれだけいるのかといえば、そうはいなかっただろう。
それでも、この時代のヤマハは、それだけ機能を搭載した。

CA2000の機能、CIの機能もそうであろう。
すべての使い手が、すべての機能を使いこなしている、必要とするとは限らないが、
メーカーの都合で、使い手に不自由はさせない──、
そういうコンセプトが感じられる。

それはカセットデッキのTC800GLにもいえる。
だから据置型としても可搬型としても使えるカセットデッキなのである。