MQAのこと、カセットテープのこと(その3)
今回もそうだが、高校生だった時も、
SB-F01との距離は1mよりももっと近い。
スピーカーとヘッドフォンのあいだくらいの聴き方とでもいおうか、
イヤースピーカー的といったほうがいいのか、
耳との距離は50cmぐらいしかない。
小さい音場である。
その小さな音場で音楽を聴きながら、
LS3/5Aの音のことを想像していた。
ロジャースのLS3/5Aのことは、
私にとって初めてのステレオサウンドである41号とともに買ったもう一冊、
「コンポーネントステレオの世界 ’77」で、
井上先生が女性ヴォーカルを聴くためのコンポーネントとして、
そのためのスピーカーシステムとして知った。
このころからLS3/5Aで、女性ヴォーカルを聴きたい、とずっと思っていた。
なのに聴く機会はなかなかおとずれなかった。
瀬川先生が熊本のオーディオ店に来られた時も、
LS3/5Aを聴くことはなかった。
そのオーディオ店には展示してあった、と記憶しているが、
買えるだけの余裕のない高校生が、店員に聴かせてほしい、とは言い難かったし、
それだけでなく、オーディオ店の騒がしさの中で、本領を発揮するスピーカーではない、
そのことは理解しているつもりだったから、きちんとした条件で聴きたい、
それだけを思っていた。
音色としてはLS3/5AとSB-F01はずいぶん違うだろうな、と思っていたが、
そこでの音場の小ささと、近距離での聴き方は、
どこかに通じるところがあるのかもしれない──、
そんなことを思いながら、SB-F01でいろいろ試して聴いていた。
そのことを今回、同じような位置関係で聴いていて思い出していた。