MQAのこと、カセットテープのこと(その4)
LS3/5Aを聴いたのは、ステレオサウンドで働くようになってからだった。
そのころにはロジャースからだけでなく、
いくつかのメーカーからもLS3/5Aが発売されていたけれど、
私が初めて聴いたLS3/5Aはロジャースの15Ω仕様のモノだった。
そしてアナログディスクによる音だった。
プログラムソースがCDが主になってからのLS3/5Aは、11Ω仕様になっていたことが多い。
いつごろ15Ωから11Ωになったのか、もう忘れてしまったが、
私にとって聴く機会のあったLS3/5Aは、LPからCDへの移行とほぼ一致していたようだった。
もちろん11Ω仕様のLS3/5Aをアナログディスクで、
15Ω仕様のLS3/5AをCDで聴いたこともある。
それでも私のなかでは、
LS3/5Aの印象として、いまも強くあるのは、
15Ω仕様をアナログディスクで鳴らした時の音である。
その音こそが、
「コンポーネントステレオの世界 ’77」での井上先生の組合せからイメージした音であり、
その後、瀬川先生の文章からイメージしたLS3/5Aの音である。
少し横路にそれるが、なぜオーディオ雑誌ではLS3/5AをLS3/5aと表記するようになったのか。
以前、別項「サイズ考(その6)」でも指摘したときは、
主にインターネットでの表記がそうだったが、いつしかオーディオ雑誌もそうなってしまった。
復刻版は、確かにLS3/5aである。
だから、それはそれでいい。
けれどオリジナルは、LS3/5Aである。
エンクロージュアに貼ってある銘板にも、LS3/5Aとある。
大文字か小文字か。
わずかな違いといえばそうであるが、
わずかな違いに一喜一憂するのがオーディオの面白さであると思っている私は、
いまのオーディオ雑誌が、以前のLS3/5AまでもLS3/5aとしてしまうのを目にすると、
この人たちのオーディオの楽しみは、わずかな違いなどどうでもいいんだなぁ、と思ってしまう。