MC型カートリッジの構造は、各メーカーによって異る点はあるものの、
まずカートリッジ本体の半分ほどを占めるマグネットがあり、
このマグネットの前後に磁気回路を形成するポールピースがある。
オルトフォンのSPUでは前方ポールピースの片方の先端部に孔が開けられ、
ここをカンチレバーが貫通している。
後方ポールピースにさらに円柱状のポールピースが固定され、
この円柱状のポールピースがカンチレバーの近くまで伸びてきていて、
針先、カンチレバー、コイルなどう含む振動系はサスペンションストリングによって、これに固定される。
カンチレバーはたいていパイプであり、
サスペンションストリングの先端はストリングホルダーと呼ばれる部品によってカンチレバー内で固定され、
サスペンションストリングの大部分は円柱状のポールピースに、これもまたストリングホルダーによって固定される。
ストリングホルダーは、径も長さも異なるふたつが、それぞれカンチレバーとポールピースにあるわけだ。
このふたつのストリングホルダーの間にダンパーがある。
このダンパーの中心をサスペンションストリングが貫通している。
サスペンションストリングはたいては腰の強い金属製のワイヤーなのだが、
ダンパーの厚みが存在するために、支点が不明確になる問題が発生しやすい。
つまりダンパーが薄ければ薄いほど前後のストリングホルダーは近接することになる。
そうなればサスペンションストリングだけの部分は短くなる。
この部分が短くなればなるほど支点は明確になり、
長くなればそれ分がたわむことになり、支点が不明確になってしまう。
初期のSPUでは後方のストリングホルダーの先端が細くなるように加工され、
この細い先端がダンパーを貫通し、図を見る限りカンチレバー内のストリングホルダーと接触している。
もちろん接触部分は丸めてある。
これが中期のSPUでは後方のストリングホルダーは短く先端の加工がなされていない。
つまり単純は円柱状で、しかもダンパーを貫通することなく円柱状のポールピース内から出てこない。
これでは前方のストリングホルダーとの間にダンパーの厚み分だけの距離が生じ、
ダンパーの厚み分だけサスペンションストリングはたわむわけで、
支点も初期のSPUではコイルとダンパーの接触面よりも針先寄りにあったのが、
中期ではダンパーの中心へと、つまり後方に移動して支点が「点」というよりも線に近くなっている。
後期のSPUでは初期と中期の中間といえるストリングホルダーの長さと構造になっていて、
支点も初期型に近いところまで戻っている。
とはいうものの初期のSPUのワンポイントといえる支点の設定にくらべれば、
まだ甘い設定といわざるを得ない。