黄金の組合せ(その14)
QUAD・405のフィードフォワード回路の基となっているのは、
フィードバック理論の発明者、H. S.ブラックが、
フィードバックよりも9年前に発明していた技術であり、
ブラックは4つの抵抗からなるブリッジ回路にしていたのを、
QUADのピーター・ウォーカーは2つの抵抗、残り2つの抵抗をそれぞれコンデンサー、コイルに置き換えている。
フィードバックよりもフィードフォワードのほうが先に生まれていながら、
フィードバック理論の方ばかり普及していったわけである。
そのフィードフォワード理論を、ウォーカーは4年かけて実用化している。
405に採用されたフィードフォワード回路はカレントダンピングと名づけられ、
1974年のAESで発表されている。
4年の歳月が、405を完成し発表するまでなのか、
AESで発表するまでなのかははっきりしないが、
仮にAES発表までに4年かかったとしたら、1970年ごろから、ということになる。
ウォーカーは1916年生れだから、54歳。
かなりの試行錯誤の末、カレントダンピングは生れたのかもしれない。
ウォーカーが実際にどのようにフィードフォワードの問題を解決していったのかはわからない。
AGIのスピーゲルはスーパーコンピューターを使い、フィードフォワード技術を実現している。
ウォーカーがスーパーコンピューターを使っている図は思い浮ばない。
ESLを実用化・実現したときと同じように進めていったように思う。
フィードフォワードという同じ技術用語でくくられても、
AGI・511とQUAD・405では、フィードフォワードの利用の仕方に違いがある。
違いは当然ある。
それでも同じ時期にフィードフォワード理論を、
現実のアンプへ応用していったふたりのエンジニアによるアンプだけに、
不思議と共通するところもある。