トランスからみるオーディオ(その3)
銅線を巻いたものは、オーディオ機器にはいろんなところで使われている。
コイルがまずある。
アンプの部品としてのコイルもあれば、
カートリッジの中で発電するものとしてのコイルがあり、
スピーカーユニットにはボイスコイルがある。
コイルを鉄心にふたつ以上巻いたもの、つまりトランスがある。
トランスは音声信号用と電源用とがある。
最近ではスイッチング電源用(高周波用)もある。
それにモーターにも巻線技術は使われている。
プログラムソースがアナログ全盛時代にくらべると、
モーターの使われ方は減ってきている。
けれど以前はアナログプレーヤー、オープンリールデッキ、カセットデッキ、CDプレーヤー、DATデッキなどで、
モーターは重要なパーツだった。
巻枠に銅線を巻きつけていくだけ──、
そんなふうにトランスのことを捉えている人がいるのかもしれない。
たしかに何かに銅線を巻きつけていく作業である。
だが自分でやっていみると、巻線の技術は誰にでもできることではない。
いわゆるガラ巻きと呼ばれる、いいかげんな巻き方ならば誰にでもできよう。
けれど巻枠に対して銅線が浮かないように、ある一定のテンションを与えて巻いていく。
しかもトランスは一回巻けば終りではなく、
二層、三層……と巻きつけていく。
トランスの製造なんて、さほど難しいものではない、と思う人は、
一度トランスをバラしてみるといい。
シールドケースがあるものはシールドケースをはぎとり、
トランス本体を取り出して、巻線をバラしていく。
そんな作業を自分でやってみれば、トランスをつくることの大変さが少しはわかるはずだ。