トランスからみるオーディオ(その2)
タンゴ(Tango)の名のつくトランスがなくなるのは、
ほぼ間違いなくトランスをつくる職人の高齢化と、
若い職人がいないことによるものであろう。
6月5日に四谷三丁目の喫茶茶会記で行った「岩崎千明と瀬川冬樹がいた時代」において、
元パイオニアの片桐さんが話されたことがあった。
「昔、オーディオの御三家はサンスイ、トリオ、パイオニアといわれていて、実は順番もそうだった。
理由はサンスイは古くからトランスを作ってきていたし、トリオもコイルを作ってきていた。
パイオニアはスピーカーは作ってきていたけど……」
トランスを作ってきていたから、御三家の中で一番──、
このことに頷かれる人もいれば、そうでない人もいる。
私は頷くほうである。
トランスを作ってきたことより、アンプやスピーカーの優れたモノを作れれば、
それでいいのではないか、そちらの方が重要ではないのか。
たしかにそうではある。
けれどトランス、コイルの優れたモノを作るのに必要な基本的な技術は、
巻線の技術であることを思い出してほしい。