舌読という言葉を知り、「きく」についておもう(その4)
本を朗読してもらう、
朗読者がトレースしたものを、きくことになる。
レコード(LPやCD)をオーディオで再生して、
レコードにおさめられている音楽をきく行為は、
どこか本を誰かに朗読してもらい、それをきく行為に似ている。
本には文字が並んでいる。
LPには文字ではなく溝が刻んである。
CDにはピットが並んでいる。
LPの溝はカートリッジの針先がトレースする。
CDのピットは、レーザーがトレースしていく。
そうやってトレースされたことによる電気信号を増幅し処理して、
スピーカーの振動板を動かし、空気の疎密波をつくる。
LPやCDという本を、
オーディオという朗読者が読み上げてくれる。
ここには聴き手(読み手)によるトレースは存在しないことになる。