D130とアンプのこと(その3)
1951年には50W-2がマッキントッシュから出ている。
50W-1からの変更点については詳しいことははっりきしないが、
50W-2でも出力トランスはNFBループに含まれていない。
マッキントッシュのパワーアンプで出力トランスがNFBループに含まれる(2次側からNFBをかけている)のは、
1853年発売のA116からである。
A116は業務用として開発されたアンプで、その後のMC30、MC60とはシャーシー・コンストラクションも、
シャーシーの仕上げも異る。型番のつけ方も、これアンプだけ違っている。
A116は実際にウェスターン・エレクトリックのトーキーシステムに採用されている。
話は少し脱線してしまうが、このA116について、伊藤先生が語られている。
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マッキントッシュを使ったアンプリファイアーの番号はA116というんですが、これはたぶんマッキントッシュの型番だと思います。というのは、これと同じところにウェスターン26というアンプリファイアーがあるんです。このアンプの年代が1954年8月になっていて、中のサーキットはA116とまったく同じなんです。(中略)
このA116、すなわちウェスターン26ですね、これは私も見ましたし音も聴きました。ちょうど映画がシネマスコープになりはじめたころで、シネマスコープはアンプが4台必要ですから、それまでのウェスターンの製品ではとても大きくて取り付けられなかったんです。(中略)
(A116は)いわゆるハイフィデリティー用でしょう。だから高域から低域まで、スキーンと伸びたすばらしい音がしました。だけどね、このアンプをトーキーに使ったときに、一つの問題があったんです。それは、あまりに帯域が広いために、余計なビンビン、バリバリ、ドンドコというノイズが出てきて困ったことがあるんです。もっとも、トーキー用にするために方々にフィルターを入れて取ってはいますけどね。やはり、アンプリファイアーの癖として、フレケンシー・レンジの広い奴はトーキーに持ってくると困るねえ。……それで泣いた事があります。
(ステレオサウンド別冊 世界のオーディオ〈マッキントッシュ〉「劇場やスタジオでつかわれたマッキントッシュ」より)
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A116は伊藤先生が語られているように業務用アンプとして日本にもはいってきており、
仙台日活劇場、田川東洋劇場、京都東洋現像所試写室、東映京都撮影所試写室、大映京都撮影所試写室、魚津大劇、
スイト会館(大垣)、内田橋劇場(名古屋)、知多キネマ(半田)、鶴城映画劇場(西尾)、
大映東京撮影所試写室に設置、使用されていた。
A116はさらにRCAの放送設備用アンプとしても使われており、
RCAの製品としての型番はM111229、50W-2もM111236という型番になっている。