the Review (in the past)を入力していて……(続々・作業しながら思っていること)
チューナーの名器といえば、まず浮ぶのはマランツの10Bと、
その設計者であるセクエラが、自分の名前をブランドとしたセクエラのModel 1が、
それぞれ真空管、トランジスターのチューナーの、価格的にも性能的に最高のチューナーとして存在している。
国産メーカーでは高周波に強いメーカーとしてトリオがある。
ケンウッドと社名を変更したいまでもアマチュア無線機を製造しているトリオは、
1957年に日本初のFMチューナーを開発したメーカーであり、その前身は高周波部品を手掛ける春日無線である。
社名がトリオ時代だったころ、アメリカでは使用していたブランド、ケンウッドを,
国内では最高級ブランドとして使いはじめたのが、1979年に発表したプリメインアンプL01A、
チューナーのL01T、アナログプレーヤーのL07Dからである。
いまではすっかり昔のケンウッド・ブランドのイメージはなくなってしまっているけれど、
1981年のL02T、翌82年のL02Aのころのケンウッドのブランド・イメージはマニア心をくすぐってくれた。
プリメインアンプのL02Aの価格は55万円。
いまではプリメインアンプでも100万円を超すものが珍しくなくなっているけれど、
この時代に55万円という価格は、きちんとしたセパレートアンプが購入できる金額でもあった。
L02Aよりも先に登場したケンウッド・ブランドのセパレートアンプ、L08CとL08Mはトータルで48万円。
プリメインアンプのL02Aの方が価格的に高かっただけでなく、
トリオという会社がケンウッドというブランドにかける熱意が感じられるモノだった。
L02Aは測定データも良かった。
ステレオサウンド 64号で長島先生がやられた、
負荷インピーダンスを8Ωから1Ωへと順次切替えを行っての測定で、
もっとも優秀な結果を出したのが、実はL02Aだった。
64号ではプリメインアンプだけでなくセパレートアンプも含まれている。
価格的にはL02Aよりもずっと効果で物量も投入されているパワーアンプよりも、L02Aは優っていた。
このL02Aとペアとなるチューナーとして開発されたL02Tが、
国産チューナーとしては最高のモノといってもいいだろう。
けれど、トリオの現在までの製品で、ひとつだけとなったら、L02Tは選ばない。