素朴な音、素朴な組合せ(その8)
アルテックの755Eをもっていたことがある。
ときどき箱から取り出しては鳴らしていたけど、
755Eのために専用のエンクロージュアを設計してつくろう、とは考えていなくて、
なんとなくもっていた、という感じだった。
あるとき、友人と、その友人が、755Eを聴いてみたい、という。
エンクロージュアはないから、たまたまもっていたアメリカ製のダンボール箱を切り開いて、
適当な大きさの平面バッフルがわりにした。
このころのアメリカ製のダンボール紙のなかには、指で弾くと、けっこう硬い感じの音がするものがあって、
このときのダンボール紙も、そういうものだった。
これまた適当に真中当りに、755Eの口径とだいたい同じくらいの孔をあけて、
755Eのケツを手でもち、もう片方の手でダンボール製の平面バッフルの上辺をもって、という、
かなりいいかげんなセッティングで鳴らした。
たまたま3人いたからできるやりかたで、スピーカーの正面で聴けるのはひとりだけ。
一曲ごとに代り番こに聴く。
このときの音は、意外にもウケた。