素朴な音、素朴な組合せ(その5)
要素を減らしたもの=シンプル・イズ・ベストではない、とわかったうえで、
それでも、あえて構成要素の少ないスピーカーシステムを、
これまでの数多くの市場に出廻った製品の中から選ぶとすると、ダイヤトーンの2S305が、まず浮んでくる。
このスピーカーは、コーン型ウーファーとコーン型トゥイーターによる2ウェイ構成で、
よく知られているようにネットワークは、
トゥイーターへの低域信号をカットするコンデンサーひとつのみである。
トゥイーターの能率をウーファーと合わせるためのレベルコントロールも、
ない、という徹底したものだ。
トゥイーターの能率は磁束密度をコントロールすることで、ウーファーと能率を合わせている。
マルチウェイのスピーカーシステムで、ここまで構成要素を減らすことは、もう無理である。
JBLの4311も部品点数の極端に少ないネットワークだが、
レベルコントロールまでは省略していない(できていない)。
2S305のウーファーの高域のカットは、ボイスコイルボビンとコーン紙とのあいだに、
コンプライアンスをもつ材料を挿入することで、機械的フィルターを構成している。
何を使っていたかまでは忘れてしまったが、経年変化により、この部分が硬化してしまえば、
機械的フィルターは動作しなくなり、2S305本来の音は得られなくなる。