Archive for 12月, 2009

Date: 12月 23rd, 2009
Cate: 瀬川冬樹, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その25)

エリカ・ケートのドイツ歌曲集のCDにある石井不二雄氏による対訳を書き写そう。
     *
夕暮だ、太陽は沈み、
月が銀の輝きを放っている、
こうして人生の最もすばらしい時が消えてゆく、
輪舞の列のように通り過ぎてゆくのだ。

やがて人生の華やかな情景は消えてゆき、
幕が次第に下りてくる。
僕たちの芝居は終り、友の涙が
もう僕たちの墓の上に流れ落ちる。

おそらくもうすぐに──そよかな西風のように、
ひそかな予感が吹き寄せてくる──
僕はこの人生の巡礼の旅を終え、
安息の国へと飛んでゆくのだ。

そして君たちが僕の墓で涙を流し、
灰になった僕を見て悲しむ時には、
おお友たちよ、僕は君たちの前に現われ、
天国の風を君たちに送ろう。

君も僕にひと粒の涙を贈り物にし、
すみれを摘んで僕の墓の上に置いておくれ、
そして心のこもった目で
やさしく僕を見下しておくれ。

涙を僕に捧げておくれ、そしてああ! それを
恥ずかしがらずにやっておくれ。
おお、その涙は僕を飾るものの中で
一番美しい真珠になるだろう!
     *
1981年、瀬川先生はアルテックの620Bで、聴かれたのだろうか……。

Date: 12月 23rd, 2009
Cate: 瀬川冬樹, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その24)

この年、瀬川先生はスイングジャーナルの記事で、
604EとマッキントッシュC22、MC275の組合せの再現ともいえることをやられている。

604Eが604-8Hに、612の銀箱のエンクロージュアが620型に、MC275がマイケルソン&オースチンのTVA1に、
C22がアキュフェーズのC240に変ってはいるが、
この組合せは、あきらかにエリカ・ケートのモーツァルトの1曲のためだけに、欲しい、と思われた音を、
もういちど聴きたいと欲されたのではないだろうか。

それが無意識的にであったのか、それとも意識的に行なわれたのかは、誰にもわからないが、
無意識のうちに、この組合せをつくられたように感じるのは、私だけではないだろう。

この歌の歌詞も、偶然とは思えないのだ。

K.523 Abendempfindung(夕暮の想い)

Abend ist’s, die Sonne ist verschwunden,
Und der Mond strahlt Silberglanz;
So entfliehn des Lebens schönste Stunden,
Fliehn vorüber wie im Tanz.

Bald entflieht des Lebens bunte Szene,
Und der Vorhang rollt herab;
Aus ist unser Spiel, des Freundes Träne
Fließet schon auf unser Grab.

Bald vielleicht -mir weht, wie Westwind leise,
Eine stille Ahnung zu-
Schließ ich dieses Lebens Pilgerreise,
Fliege in das Land der Ruh.

Werdet ihr dann an meinem Grabe weinen,
Trauernd meine Asche sehn,
Dann, o Freunde, will ich euch erscheinen
Und will himmelauf euch wehn.

Schenk auch du ein Tränchen mir
Und pflücke mir ein Veilchen auf mein Grab,
Und mit deinem seelenvollen Bli cke
Sieh dann sanft auf mich herab.

Weih mir eine Träne, und ach! schäme
dich nur nicht, sie mir zu weihn;
Oh, sie wird in meinem Diademe
Dann die schönste Perle sein!

Date: 12月 23rd, 2009
Cate: 瀬川冬樹, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その23)

1988年9月号の無線と実験に、伊藤先生製作の7027Aプッシュプルアンプの記事が載っている。
出力トランスはパートリッジのP5201、1次側のインピーダンスが10kΩのもの。
出力段はAB1級のUL接続で、出力はおよそ20W。

RA-1574-Dは五極管接続で、7027Aの規格表をみると、
AB1級で、出力トランスに6.5kΩのものを使えば、76Wの出力となっている。

1次側インピーダンスが6.5kΩのトランスで70Wを超える出力でも使えるものとなると、まずないと思っていたが、
スウェーデンのトランス専門メーカー、ルンダールのラインナップのなかに、6kΩのものがある。
7027Aは、やはりAB1級で6kΩのトランスを使えば、50Wの出力を取り出せる。

伊藤先生の製作例があること、ウェストレックスのカッターヘッド用のドライブアンプに使われていたこと、
このふたつの理由に、ぴったりのトランスがいまでも入手できることがわかり、
7027Aのプッシュプルアンプをつくるのもよさそうだと、ひとり納得していたところで思い出したことがある。
     *
 しかしその試聴で、もうひとつの魅力ある製品を発見したというのが、これも前述したマッキントッシュのC22とMC275の組合せで、アルテックの604Eを鳴らした音であった。ことに、テストの終った初夏のすがすがしいある日の午後に聴いた、エリカ・ケートの歌うモーツァルトの歌曲 Abendempfindung(夕暮の情緒)の、滑らかに澄んで、ふっくらとやわらかなあの美しい歌声は、いまでも耳の底に焼きついているほどで、この一曲のためにこのアンプを欲しい、とさえ、思ったものだ。
     *
瀬川先生が、1981年に書かれた文章だ。

Date: 12月 22nd, 2009
Cate: 瀬川冬樹, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その22)

真空管アンプでは、出力が50Wをこえるあたりから(できれば70W以上はほしい)、
トランジスターアンプにくらべれば小さな値ではあっても、
出力の余裕から生れてくるものが感じとれるような気がする。

70Wクラスのパワーアンプといえば、マッキントッシュのMC275が75W+75W、マランツのModel 9が70W。
もう少し新しいところではマイケルソン&オースチンのTVA1が70W+70W、ジャディスのJA80が80W。
マランツだけが出力管はEL34のパラレルプッシュプルで、あとの3機種はKT88のプッシュプル。

個人的には出力管をパラレル使用はしたくない。
となると使える真空管は限られてくる。

ウェストレックスに、RA-1574-Dというアンプがある。
出力管は7027のプッシュプルで、出力は75W。
このアンプは、WESTREX 3D STEREODISK SYSTEM に使われている。
つまりカッターヘッド用のアンプである。

パワーアンプ部を見ると、初段は12AU7で、次段が12AU7のP-K分割、12BH7で増幅したあと、
7027の固定バイアスの出力段となっている。

RA-1574-Dの回路図を見たときから、これでスピーカーを鳴らしてみたら……と妄想していたのである。

Date: 12月 22nd, 2009
Cate: 瀬川冬樹, 組合せ

妄想組合せの楽しみ(その21)

アルテックの604-8Gが来てから、あれこれ考えるのが楽しい。
エンクロージュアをどうするか、ネットワークは、あれを試してみたい、
それにユニットの取り付け方でも試してみたいことがあって、
時間が空くと、とにかく妄想をふくらませている。

パワーアンプについても、妄想している。
やはりいちどは真空管アンプで鳴らしてみたい、とも思っている。

604-8Gは、型番が示すように604Eまでの16Ω仕様から、
トランジスターアンプで鳴らすことを前提に8Ω仕様に変更されている。

最新のトランジスターアンプで鳴らすことも考えながら、真空管アンプまで自作しようかな、などと、
いったいいつ実現するのかわからないくらいに、妄想的計画は大きくなっていく。

出力管は何にしよう、と考えると、たしかにウェスターンの300Bに惹かれるものはあるが、
プッシュプルで20W弱。
604-8Gを鳴らすには、これでも十分といえるものの、最新のプログラムソースに対応するためには、
正直もうすこし出力の余裕がほしい、と思ってしまう。

トランジスターアンプも、真空管アンプにしても、
良質の大出力アンプのもつ余裕から生れる特有の魅力は、
オーディオにとって必然の条件ともいいたくなる。

Date: 12月 21st, 2009
Cate: 音楽性

「音楽性」とは(その3)

「現代スピーカー考」を書いている。

(その1)に、なぜ、この項をはじめたのかについてふれているが、
このときははっきりと書かなかったが、現代スピーカーの代表と巷で云われているいくつかの製品を、
じつのところ、私はまったく認めていない。

それらのいくつかは、ステレオサウンドでも割と高い評価を与えているひとがいるし、
個人のサイトやブログでも、なぜか高い評価を得ている。

他人の好みに口出しするのは僭越な行為だというひともいようが、
それでも「欠陥」スピーカーを、現代スピーカーのひとつとしてあげられることには、
つよい抵抗感がたえずわいてくる。

早瀬さんとは長いつき合いで、お互いに好みは知り尽くしているところもある。
よく長電話している。本音で語れるからだ。

早瀬さんが鳴らしてきたスピーカー、鳴らしたいと思っているスピーカーと、
私が鳴らしてきたスピーカー、鳴らしたいと思っているスピーカーは、意外と重なり合うことはない。
けれど、絶対に認めることのできないスピーカーに関しては、完全に一致している。

それらは音の好みといったこととはまったく無関係で、あきからに「欠陥」スピーカーだからである。
ここに欠陥と欠点の違いがある、ともいえる。
どんなスピーカーにも「欠点」はある。
だが多くの「欠点」を抱えているスピーカーが、「欠陥」スピーカーなわけではない。

Date: 12月 20th, 2009
Cate: ワイドレンジ

スーパートゥイーターに関して(続々余談)

底面開放型に関することで、感心するのはもうひとつあって、
それはエンクロージュア下部のカーテンの存在である。

底面開放型もしくは底面にバスレフポートがあるスピーカーでは、
とうぜんここから高域成分がもれてくるわけだが、
ベイシーのスピーカーのようにカーテン状のものがあると、
うまいぐあいに高域成分は吸音されていることだろう。

底面開放型であることを隠すためのカーテン状のものを下げられたのかもしれないが、
結果的には、音の面でもうまいやり方だと思う。

底面開放型を採用する場合、カーテンのアイディアもいっしょに使いたい。
もちろん見映えをどう処理するかは考えなくてはならないけれども。
アルテック604-8G用のエンクロージュアで、底面開放型か、底面にスリットをいれてみるかもしれない。

Date: 12月 20th, 2009
Cate: ワイドレンジ

スーパートゥイーターに関して(続余談)

ベイシーの開店当初から底面開放型だったのか、それとも最初は密閉型だったのかははっきりしないが、
エンクロージュアの底が抜けていることを教えてくれた人は、
低音の鳴りに応じて、エンクロージュアの下部にカーテンのように垂れ下がっている布がはためているのに気づき、
スピーカーのところまで行き、布の奥に腕を入れたところ、底板がないことに気がついたそうだ。

底面開放型だということをきいて、いいアイディアだと思った。
エンクロージュアを構成する面の、どれかをなくすので広く知られているのは後面開放型だが、
底面開放型はセッティングの自由度の高さで、より使いやすいのではなかろうか。

後面開放型では、音場感の再現に好適な位置が、低音再生に好適とは限らないし、
低音がうまく鳴ってくれる位置では、音場感の拡がり、奥行の再現が十全でなかったりする。
もちろんうまくいくポイントがあるかもしれないが、たいていはどちらかをすこし犠牲にするか、
ほどほどの妥協点を見つけることになる。

その点、底面開放型では、低音の鳴り方は床との間隔の調整が重要になってくるはず。

Date: 12月 20th, 2009
Cate: ユニバーサルウーファー

ユニバーサルウーファー考(その2・余談)

腰の負担という視点で椅子をみれば、坐り心地よりも立ち上がるときのことが重要になってくる。

オーディオほど、椅子に坐ったり立ち上がったりする回数が多い趣味はないと思う。
真剣に音を調整する時に、短時間の間になんども、この行為をくり返す。

ぎっくり腰の経験のない人、腰に不安のまったくない人はわからないかもしれないが、
坐り心地が良い椅子でも、立ち上がるときの腰の負担が意外に大きいものがある。
腰を痛めているときは、よけいにそのことに敏感になるし、気を使う。

腰への負担がなくスッと自然に立ち上がれる椅子は、意外に少ない。

Date: 12月 19th, 2009
Cate: ユニバーサルウーファー

ユニバーサルウーファー考(その2)

サーロジックのSPD-SW1600を導入してほぼ2年。
置き位置もほぼ決まった夏に、高さを3段階試してみた。

高さを上げるほどに、メインスピーカーとの一体感が増していくように鳴る。
そこで思いついたことを試してみた。
メインスピーカーを小型スピーカーにする。
ウーファーの口径は10cm、エンクロージュアの高さは20cm強だから、
SPD-SW1600のウーファーの口径(30cm)よりも小さいから、すっぽりおさまるようなかっこうになる。

これは、疑似的な同軸型スピーカーにできるかもしれないと思い、
SPD-SW1600の置き台に、使っていないスピーカー・エンクロージュアを使う。
ちょうどうまい具合に、SPD-SW1600のウーファーの位置が、小型スピーカーのほぼ真横になる。

サブウーファーを、この高さまで持ち上げて聴いたことはなかった。
かなりの重量があるSPD-SW1600を、ひとりで数10cm持ち上げるのが、じつは億劫だったこともある。
それに実際に試してみるとわかるが、持ち上げるのよりも大変なのは床に降ろすほうである。
ふたりでは降ろす方が楽だろうが、ひとりだと降ろす作業は、腰への負担がかなり増す。

Date: 12月 18th, 2009
Cate: ワイドレンジ

スーパートゥイーターに関して(余談)

スーパートゥイーターに関して」を書いたときに、
スピーカーのエンクロージュアの天板の鳴りの変化についてふれた

スーパートゥイーターではなく、自然素材の吸音材(フェルトやウールなど)を乗せた音を聴くと、
天板の鳴りをできるだけ抑えてみたい、とも思うようになる。
石や金属といった、重量のある硬いものを乗せるという手もあるが、
天板の対向面である底板とのあいだで定在波が発生しているわけで、
これをなくせれば、天板の鳴りはずいぶん減るであろう。すっきりした鳴りになるのではなかろうか。

定在波は平行面があるから発生するわけで、
底板がなければ、エンクロージュア内部で垂直方向の定在波は発生しないだろうし、
そこまでしなくとも底板に空気穴、バスレフポートをもうけるのは、どうだろうか。

今年登場したスピーカーでは、リンデマンのSwing、
インターナショナルオーディオショウでA&Mのブースにあったジャン平賀氏設計のスピーカーは、
どちらもエンクロージュア底面にスリットがある。

さらに一関ベイシーのスピーカーも、実は底面開放型エンクロージュアである。

Date: 12月 18th, 2009
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その13)

川崎先生は「プレゼンテーションの極意」のなかで、特徴と特長について語られている。
     *
「特徴」とは、物事を決定づけている特色ある徴のこと。
「特長」とは、その物事からこそ特別な長所となっている特徴。
     *
ベッセル型フィルターの「特徴」が、同軸型ユニットと組み合わせることで「特長」となる。

Date: 12月 18th, 2009
Cate: ジャーナリズム

オーディオにおけるジャーナリズム(その36)

いま、そしてこれから語るべきこと」のなかで、川崎先生のことば「機能性、性能性、効能性」をかりて、
オーディオの効能性についてすこしばかり書いた。

この「機能性、性能性、効能性」は、オーディオそのものについてもあてはまるし、
個々のオーディオ機器について語る時にも「機能性、性能性、効能性」をどこかで意識していく必要があるだろう。

新製品紹介の記事は、どのオーディオ雑誌にもある。
そこでもっぱら語られるのは、音について、である。

読者がもっとも知りたいことも、新製品のスピーカーなりアンプが、
どういう音を聴かせてくれるのかに興味があることだろうし、
そこに重点がおかれるのも理解できないわけではない。

それでも、「音のよさ」とは、いわゆるそのオーディオ機器の「性能性」の部分でしかないともいえる。

性能性は、物理特性のことのみではない。音のよさも、ここには含まれるとすべきである。

Date: 12月 17th, 2009
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その12)

UREIの813のネットワークに使われているのは、ベッセル型フィルターである。
おそらくESL63のディレイ回路も、ベッセル型フィルターのはずだ。
ベッセル型フィルターの、他のフィルターにはない特徴として、
通過帯域の群遅延(Group Delay)がフラットということがあげられる。

つまりベッセル型のハイカットフィルターをウーファーのネットワークに使えば、
フィルターの次数に応じてディレイ時間を設定できる。

604シリーズのウーファーのハイカットを、ベッセル型フィルターで適切に行なえば、
トゥイーターとの時間差を補正できることになり、
これを実際の製品としてまとめ上げたのが、UREIの813や811といったスピーカーシステムと、
604E、604-8G用に用意されたホーンとネットワークである。

ホーンの型番は800H、ネットワークの型番は、604E用が824、604-8G用が828、
さらに813同様サブウーファーを追加して3ウェイで使用するためのネットワークも用意されており、
604E用が834、604-8G用が838であり、TIME ALIGN NETWORKとUREIでは呼んでいる。

Date: 12月 17th, 2009
Cate: 604-8G, ALTEC, ワイドレンジ

同軸型ユニットの選択(その11)

ステレオサウンド 61号の記事には、ESL63の回路図が載っている。
たしか長島先生の推測を元にしたものだったと記憶している。

8個の同心円状の固定電極に対して、直列に複数のコイルが使われている。
同心円状の固定電極は、外周にいくにしたがって、通過するコイルの数がふえていくようになっていた(はず)。

やはり、コイルの直列接続によって、時間軸の遅れをつくり出しているのはわかっても、
動作原理まではわからなかったし、どういうふうに定数を決定するのかも、とうぜんわからなかった。

ESL63やUREIの813に使われている回路技術はおそらくおなじものだろうと推測はできても、
具体的なことまで推測できるようになるには、もうすこし時間が必要だった。

ESL63の翌年にCDプレーヤーが登場する。
そしてD/Aコンバーターのあとに設けられているアナログフィルターについての技術的なことを、
少しずつではあるが、知ることとなる。

フィルターには、いくつかの種類がある。
チェビシェフ型、バターワース型、ベッセル型などである。