Archive for category テーマ

Date: 9月 26th, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・続々続々余談)

このレベル調整の大事なところのひとつは、ものには順番がある、ということ。
これは、スピーカーシステムのレベル調整だけではなくて、システム全体の調整についても同じことがいえる。

基本的にシステムの調整は、音の入口側(上流側ともいう)、
つまりアナログプレーヤー、CDプレーヤーから手をつけていく。
ここが一通り終ったら、次はアンプにうつり、スピーカーシステムへと手をつける。
長年愛用してきて、ずっと調整をしてきたシステムであれば、どこか一箇所に手をつけることのほうが多くなるが、
システムを構築したばかりのころは、今日はアンプ関係を、明日はスピーカーシステムを、と、
気のむくままにあちこちに手をつけるのではなくて、基本にしたがい音の入口側からきちんとやっていく。

スピーカーシステムのレベルコントロールの調整も同じで、
初めて鳴らすスピーカーシステムで、しかも4343のようにレベルコントロールが3つのあるような場合、
音を鳴らして気になった帯域を気のむくままいじっていても、全体のバランスをうまくとることはむずかしい。
めんどうくさいと感じても、ここでも順番を守って調整していくことで、基本的なバランスを得られる。

この基本的なバランスを得ずに、気の向くままいじっていては、オーディオはいつまでたっても泥沼のままだ。
とにかく基本的なバランスを最初に得ることが大事である。
そして、低音を基本として、という意識をつねにもっていたい。

低音こそ音楽の土台であり、この土台をしっかりと構築していくことが基本である。
土台をいいかげんなままにしておいて、その上に築き上げられる帯域をあれこれいじっても、うまくいくわけがない。
そうやっていても、たまたまうまく鳴ることがあるけれど、ほかのところをいじって、その音がくずれたとき、
もう一度、その音を再現できるかというと、難しいはずだ。
それは土台となる低音域が構築されていないからである。

五味先生は「音の清澄感を左右するものは、低音である」と「五味オーディオ教室」に書かれていた。

低音という土台・基本を出発点としているならば、この言葉を実感できるはずだ。

Date: 9月 26th, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・続々続余談)

ミッドバス(2121)のレベル調整がいちおう決まったら、
次はミッドハイのレベルコントロールを上げていきレベル調整を行う。
ここでも、くり返すが、モノーラル音源を使うことを忘れないこと。

ミッドハイのあとはトゥイーター(2405)のレベル調整を行う。
もちろん、ここでもモノーラル音源を使う。

モノーラル音源は、なにもモノーラル録音である必要はない。
コントロールアンプにモードスイッチがついていれば、モノーラルにすればいい。
思い出してほしいのは、コントロールアンプについている機能は、
音を調整していくためにも必要な機能でもある、ということだ。

こうして4343を構成する4つのスピーカーユニットのレベル調整が終ったら、
しばらくの期間は、好きな音楽を聴いて過ごすのがいいと思う。

もちろんモノーラルでのレベル調整を終えた後にステレオで再生して、さらに細かいレベル調を続けて行っていい。
けれど、トゥイーターのレベル調整を終えるのに、ひとりでこの作業を行っているとけっこうな時間をとらえる。
誰か協力してくれる人がいて、4343の脇でこまかくレベルコントロールをいじってくれる人がいれば、
椅子から立ち上らなくても済むだけでなく、それ以上にレベル調整の作業ははかどるものである。

でもひとりだと、そうはいかない。
何度も何度も椅子から立ち上り4343のところへ行きレベルコントロールを動かしては、
また椅子に坐り音を聴き……、をくり返さなければならない。

まとまった時間のとれた時にこの作業を行ったとして、けっこうくたくたになる人もいるはず。
2405のレベル調整を終えた時点で疲労を感じていたら、その日はもうやめたほうがいい。

微調整は残っているとはいえ、ここまできちんと調整を行っていれば、
4343が変なバランスで鳴っている、ということはないからだ。

Date: 9月 24th, 2011
Cate: 使いこなし, 快感か幸福か

快感か幸福か(その6)

オーディオ機器は、高価なモノ、能力の高いモノ、そういったモノだけを揃えてポンとおいて鳴らしても、
いい音が鳴ってくることは、まずない。
たまたま、いくつかの条件がうまく組み合わさって、幸運が重なることで、
ポンとおいただけでも、そこそこいい音が鳴ってくることもあろう。
それでもそこから先の領域には、使いこなしが求められる、といわれつづけてきている。

使いこなしの重要性は、人一倍認識している。
けれど、最近、使いこなし、という言葉自体に抵抗感を感じはじめてもいる。

使いこなし、とひとことで表現しているが、
ここにはセッティング、チューニング、エージングがひとまとめになっているところもある。
セッティングとチューニングの違いとはなにか。
あるところまでセッティング、ここからはチューニングといえるようでいて、
はっきりとこのふたつに境界線があるわけではない。
それはチューニングとエージングに同じことがいえる。

便宜上、セッティング、チューニング、エージングとわけて説明することもあるが、
これらをふくんだ言葉として「使いこなし」という表現を使うことが、私は多い。
にもかかわらず、どうしても「使いこなし」を口にすることに抵抗を感じるようになったのはなぜなのか。

いくつか理由らしきことはある。

まず「使いこなし」を頻繁に口にする人、
しかも、それを売り物にしている人──人のシステムを調整して仕事としている人──に対して、
うさんくささを感じるようになったことも大いに関係している。

そして、そういった人たちが口にする「使いこなし」には、大事なものが欠けている、と感じているからでもある。

Date: 9月 24th, 2011
Cate: 素朴

素朴な音、素朴な組合せ(その19)

「フィガロの結婚」
プロデューサーは、Peter Andry, Victor Olof
バランスエンジニアは、James Brown, Cyrill Windebank

「ラインの黄金」
プロデューサーは、John Culshaw, Erik Smith
バランスエンジニアは、Gordon Parry, James Brown

「ワルキューレ」
プロデューサーは、John Culshaw
パランスエンジニアは、James Lock, Gordon Parry, James Brown

ドイツ・グラモフォンのサイトで得られる情報では上記のようになっている。
「ジークフリート」、「神々の黄昏」ではJohn Culshawの名のみがあるだけ。

カルショウが率いる録音スタッフが、意を尽くした、と書いた。
その意を尽くした録音と対照的と書いたエーリッヒ・クライバーの「フィガロの結婚」の録音スタッフも、
また意を尽くして「フィガロの結婚」を残した、と思っている。

なのに対照的と私が受けとめるのは、その「意を尽くした」が双方の録音スタッフでは同じではないこと。
そしてカルショウのほうには、
「意を尽くした」ところとともに「意を凝らした」といいたくなるところも感じられなくもない。

カルショウがデッカに残した録音には、
意を尽くしたところと、凝らしたところが綯交ぜになっている。
これはカルショウの美意識が生み出したものように感じられてならない。
そしてそうなってしまうのは、カルショウが、
ほかのプロデューサーよりも録音の可能性を信じ賭けていたからなのかもしれない。

Date: 9月 23rd, 2011
Cate: 素朴

素朴な音、素朴な組合せ(その18)

カルショウが「自分がドラマの中にいるという感じ」を強めるためにデッカでやってきたことの数々は、
つまりソニック・ステージを実現するための創意工夫は、つねにその時代の録音技術で可能な、
ときにはその時代時代の録音技術の限界を打ち破ろうとしてきた、といえるかもしれない。

それは、その時代での最高の技術であろうとしていたのかもしれない。
ただ、そのことがときが経つことによって、古さと変質していくこともある。
録音技術もつねに進歩している。器材の進歩、録音テクニックの進歩によって、
最新録音だったものは、いずれ最新録音ではなくなってしまう。

レコーディングの可能性を信じていたカルショウにとって、
録音という行為は、熟成された技術だけを使って冒険を拒否した行為ではなかったはず。
だからカルショウの録音は、そのすべてが、とはいわないけれど、
やはり後から登場したより進んだ、
優れた技術・器材を駆使した録音に追い越されてしまう宿命的な面も併せ持っている。

ここは、同じデッカでもエーリッヒ・クライバーの「フィガロの結婚」と対照的なところでもある。
カルショウの録音では、あるひとつの録音の中でも、いま聴くと古さにつながってしまうところがあるのは、
否定できなかったりする。
同じ意味で、テラークの「1812年」の大砲の音も、いま聴くとどう感じるのだろうか、と思ってしまう。

それでもテラークの「1812年」とカルショウが残した録音の数々の違いは、
カルショウの録音は、それはカルショウとしての意を尽くしたものであることが、
いまも聴き続けられている理由のであるはずだし、
一方で、カラヤンが「オテロ」を再録音する理由にもなっている、と考えたくなる。

意を尽くすことは、カルショウの美意識ゆえであり、
そのカルショウの美意識と、そして、もうひとりの強烈な美意識の持主であるカラヤン、
このふたりの美意識が衝突しないはずがない。

Date: 9月 22nd, 2011
Cate: 純度

オーディオマニアとしての「純度」(その5)

マーク・レヴィンソンは自家用としてはLNP2よりもJC2を使っていた、ときいたことがある。

LNP2は、もともとミキサーとして開発されたLNP1を原形としているし、
チック・コリアのコンサートではLNP2がミキサーとして複数台使用されている写真を、
当時のスイングジャーナルの記事で見たこともある。
そんなLNP2に対し、JC2はVUメーターもトーンコントロールもなく、
コントロールアンプとしての機能は最低限のものしか備えていない。
左右のレベルコントロールにしても、LNP2は連続可変のポテンショメーターを左右独立で備えているが、
JC2のそれは左右独立ではあっても1dBステップの切替えスイッチによるもので、
しかもラインアンプのNFB量を変化させてのものである。

同時期に同じ会社から出たコントロールアンプにも関わらず、LNP2とJC2の性格は異るところも多い。
LNP2は何度か改良されてはいったが、型番の変更はなかった。
LEMO端子の採用にともなってLNP2Lと型番末尾にLEMOの頭文字の「L」がつくようになっているが、
これは日本向け用のことであって、アメリカで売られていたモノには「L」はついていない。

JC2はLEMO端子の採用直後にML1と型番の変更があった。
このときからマークレビンソンのアンプの型番の頭には、マーク・レヴィンソンの頭文字のMLがつくようになる。
ML1はさらにML6というヴァリエーションを生み出している。

ML6はマークレビンソンのアンプで唯一シルバーパネルを採用したアンプであるだけでなく、
ステレオ時代になってからのコントロールアンプとしては、
少なくともコンシューマー用コントロールアンプとしては初めて、
シャーシーから電源部まで完全に独立したモノーラルコンストラクションを採用している。

しかもフロントパネルにツマミは2つだけ。
ML1では4つのツマミと4つのレバースイッチがあったのが、
ML6は入力セレクターとレベルコントロールだけとなった。
しかも入力セレクターもフォノ1系統、ライン入力1系統の必要最小限という仕様。

ここまで徹底しているわりには内部をみると、ML1のメイン・プリント基板をそのまま流用している。
つまり片チャンネルのモジュールは当然抜いてあるわけだが、
不要となっているチャンネルのパターンはそのまま残っている。

ここまで、いわば純度を追求しているアンプなのに、なぜモジュールが載るメイン・プリント基板を、
ML6専用につくり直さなかったのか。たいした手間でもないはずなのに……、といまでも疑問に思っている。

Date: 9月 22nd, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・続々余談)

ここからのレベル調整で気をつけたいのは、レベルコントロールの位置を左右で合わせようとしないこと。
スピーカーユニットにはバラツキがある。
これは以前も書いていることだが、
JBLはスピーカーユニットに関しては、生産上の能率差を±1dBを許容範囲としている。
もっともこれは4343をつくっていた頃の、
JBL proのアプリケーション・エンジニアのゲーリー・マルゴリスの発言で、いまのJBLがそうだということではない。

けれど4343の時代では、最大で2dBの能率差が生じることもあるわけだ。
ステレオサウンドで使っていた4343、4344ではコーン型ユニットに関しては能率差は感じなかったが、
ドライバーユニットに関してははっきりと認められるだけの能率差があった。

だから前回の補足になるが、ウーファーだけを鳴らしたときも、
できれば左右の音圧差がないかどうかチェックしておきたい。
このときプログラムソースはモノーラルのものを使った方がいい。
これは、マルゴリスも、ステレオサウンド 51号掲載の4343研究の中で語っていることだ。

左右一本ずつでの音出しをし、モノーラルでの両チャンネルの音出しで中央に音源が定位するようにすること。
場合によってはアンプのバランスコントロール、
もしくはパワーアンプの入力レベルコントロール(左右独立調整のもの)での調整が必要になるかもしれない。

ミッドバス(2121)のレベルコントロールも同様で、モノーラルの音源を用意しておきたい。
モノーラル1本ずつでレベルを調整し、モノーラル音源の中央の定位が明確になるようにしていく。

ウーファーをネットワーク通さずに鳴らしたときと、
ネットワーク通しミッドバスまで鳴らしたときの再生帯域はそう違わない。
けれど、実際にこのふたつの音を比較すると、大きな違いがある。
片方はネットワークを経由していないウーファーだけの音、
もう片方は3つのフィルター(ウーファーのハイカット、ミッドバスのローカットとハイカット)を通って、
しかも2つのスピーカーユニットが鳴っているわけだから、違いがあって当然なのだが、
このときの音の違いは記憶しておきたい。

Date: 9月 21st, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・続余談)

4343のウーファー2231Aが弾むような感じでうまく鳴ってくれるところ、
音楽を聴いて手応えを感じられるような音で鳴ってくれるところが見つかったら、
ここで床からの距離を試してみる。

最初から1cm刻みで高さを変えていくという人もいるだろうが、
最初は5cm単位、10cm単位ぐらいでいい。
それで床に直置き、5cmあげた状態、10cmあげた状態、15cmあげた状態の音を聴いて、
たとえば床直置きと5cmあげた状態、どちらか迷うのであれば、その中間を試してみる。
このとき4343をもちあげる台は、まず木のブロックがいい。
もちろんほかの材質のブロックを使ってもかまわないが、
最初は同じ材質で高さの違うブロックを用意しやすいということで、木をすすめる。

この時点で、ウーファーを固定しているネジの締付け具合による音の変化も確認しておきたい。
しっかり締めた状態、すこしゆるめた状態、あきらかにゆるめた状態の音を聴いて、
音楽のメロディが明瞭に聴こえるところにしておく。
締めつけすぎはよくないが、しっかり締まっていなければ、音楽のメロディは明瞭に聴こえてこないはずだ。

ここまでやって、これから上3つのユニットのレベル調整にとりかかる。
ここからはバイアンプ駆動のロータリスイッチを通常のポジションに戻す。
ミッドバス(2121)、ミッドハイ(2420)、トゥイーター(2405)のレベルコントロールは完全に絞っておく。
そしてミッドバスのレベルコントロールをあげていく。ウーファーとのバランスをはかりながら調整していく。
ミッドバスのレベルをあるところまで調整できたら、ここでもミッドバスを固定しているネジ締付け具合を調整する。

だからといって、ここでものすごいこまかい微調整まで行わなくてもいい。
まだチューニングの途中なのだから。

Date: 9月 21st, 2011
Cate: 4343, JBL, ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15・余談)

低音域こそが土台であり基本であり、そこに、その上の帯域を築いていく、ということは、
なにも既存のスピーカーシステムにスーパーウーファーを加えて調整するときだけでなく、
既製品のスピーカーシステムについても同じことだ。

今年の2月から毎月第一水曜日に四谷三丁目の喫茶茶会記で行っている公開対談の前々回で、
JBLの4343をどう鳴らすのかをテーマにしたときにも話したことだが、
4343の調整方法として、こういうやり方もある。

4343はバイアンプ駆動が行えるようになっている。
リアバッフルの入力端子の近くに、
マイナスドライバーで切り替えられるようになっているロータリースイッチがある。
これをまずバイアンプ駆動のポジションにする。
そしてパワーアンプからのスピーカーケーブルは下側の端子(つまりウーファー用の端子)に接ぐ。
ウーファーの2231A(もしくは2231H)をフルレンジとして鳴らすことになる。

ボイスコイルボビンとコーン紙との接合部分に、
f0を下げるためのマスコントロールリングが装着されている2231Aだから、
2220やD130のウーファー版の130Aのように、
またはアルテックの515のようにある程度まで中高域まで伸びているわけではないが、
高域は完全に不足しているものの、音楽のメロディは聴きとれる。
この状態で、4343の設置場所をあれこれさぐる。
つまりウーファー(低音域)ができるだけよくなるところをさぐりだすわけだ。

スピーカー背面の壁からの距離、左右の壁からの距離をあれこれ試す。
このときは、床に直置きでもかまわない、というか、直置きのままのほうが動かしやすく、
最適もしくは好適な場所をさぐりやすい。

床からどのぐらい離すかは、最初にやらなくてもいい。
もちろんブックシェルフ型のスピーカーシステムだったら別だが、
4343は4面仕上げしてあるとはいうもののフロアー型スピーカーシステムであるからだ。

Date: 9月 20th, 2011
Cate: audio wednesday

第9回公開対談のお知らせ

毎月第1水曜日に行っています公開対談は、10月5日です。
前回は「幻聴日記」の町田秀夫さんとの「音を語る言葉・表現について」でした。
今回も町田さんとスピーカーをテーマにして行う予定でしたが、町田さんのご都合により、
町田さんとの2回目の公開対談は12月になります。

ですから今回は、工業デザイナーの坂野博行さんと、オーディオのデザインについて語ります。

時間はこれまでと同じ夜7時からです。
場所もいつものとおり四谷三丁目の喫茶茶会記のスペースをおかりして行いますので、
1000円、喫茶茶会記にお支払いいただくことになります。ワンドリンク付きです。

Date: 9月 20th, 2011
Cate: ナロウレンジ

ナロウレンジ考(その7)

BBCの研究所が提唱したことがはじまりであるインパルスを使ったスピーカーの測定方法だが、
発表当時はコンピューターの処理能力の関係で実際に測定することは不可能だったと聞いている。
これを実用化したのは、KEFのフィンチャムを中心としたグループで、
インパルスを複数回スピーカーに加え、ノイズの位相成分がランダムであるという性質を利用することで、
測定結果をコンピューターで加算することによってノイズの打消しをおこなわれ、
信号成分のみを取り出せるようになったからである。

ステレオサウンドでも47号ではじめてインパルスによるスピーカーシステムの測定結果が掲載された。
47号では、サインウェーヴによる従来のアナログ計測では周波数特性、高次高調波歪率、混変調歪率など、
インパルスによるデジタル計測ではインパルスレスポンス、群遅延特性、エネルギータイムレスポンス、
累積スペクトラム、混変調歪など、である。

47号の測定で使われたインパルス信号は、幅10μsec、高さがピークで50Vのものである。
理論的には幅がゼロで高さが無限大の信号が理想的なインパルスということになるが、
現実にそういう信号を作り出すことは不可能だし、
スピーカーシステムの測定に理想のインパルス信号が必要とは思えない。

47号で使われたパルス幅10μsecは、0.7Hzから50kHzまでの周波数成分をフラットにもっている。
高さ50Vということは、8Ω負荷では312.5Wのパワーとなる。
これだけの大きなパワーを、
しかも0.7Hzから50kHzまでフラットな周波数特性で加えたらスピーカーシステムが壊れないのか、
ということになるのだが、パルス幅が10μsecと狭いため、
パルス1波あたりのエネルギー量としてはごくわずかということになり、スピーカーの動作上の問題は発生しない。
これだけパルス幅が狭いと、パワーアンプの出力をショートしていても、アンプには異常が発生しないとのことだ。

このインパルスによる測定を、
80Hz〜5kHzのバンドパスフィルターを通したスピーカーシステムで行ったら、どんな結果が得られるのだろうか。

Date: 9月 19th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その16)

私自身も、最初からそう捉えていたわけではなくて、
QUADのESLの低音に大きな不満は感じていたわけではないが、
さらに拡充しようとしたときには、そこに「つけ足す」という認識でいた。

当然そういう選択眼で、市販されているウーファー(ユニットを含めて)見ていたから、
これといって目ぼしいモノはないように受けとめていた。

これが変っていったのは、ずっと後である。
自分でサーロジックのスーパーウーファーを使いはじめたこと、
それと菅野先生の「音」を聴くことができたからである。

菅野先生のスピーカーは、ここで改めて書くまでもないと思うが、3システムある。
既製品のスピーカーシステムはマッキントッシュのXRT20だけで、
あと2つのシステムは、菅野先生自身によってスピーカーユニットを組み合わせてまとめあげられたもの。

ここで注目してほしいのは、その2つのシステムの低音を受け持つのは共通している、ということだ。
JBLのオリンパス風の一種のバスレフ型のエンクロージュアに、ユニットはJBLの2205をおさめられている。

この上に、2つのシステムを構築されている。
ひとつはJBL375と蜂の巣(537-500)の組合せを中心としたもので、
もうひとつはジャーマン・フィジックスのDDD型ユニット、Trobadour80を中心としたものだ。

菅野先生のシステムの変遷についてご存じの方は説明は不要だろうが、
いま2205がおさめられているエンクロージュア(パイオニアLE38A)には、
いくつかのウーファーがとりつけられてきた。
パイオニアのPW38A、ソニーのULMやトリオのユニット、
アルテックのウーファーも515Bをはじめいくつかを試されている。
JBLではLE15Aから2220、そして現在の2205である。

このあいだ中高域を受け持ってきたのはJBL375+537-500である。
トゥイーターは075。このところには変化はなかった。

Date: 9月 18th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その15)

中高域にコンデンサー型ユニットを採用し、低音域だけをコーン型ユニットに受け持たせた、
いわゆるハイブリッド型と呼ばれることの多いスピーカーシステムのすべてを見て聴いているわけではない。
だから、もしかすると私がこれから書くことと違う構成のものが存在していたかもしれないが、
すくなくとも大きな傾向として、このハイブリッド型スピーカーシステムのウーファーは、
比較的小口径のコーン型が採用されている。

なぜかといえば大口径のコーン型のウーファーの、いわゆる音の重さを嫌ってのことだろう。
コンデンサー型ユニットの軽やかさに追従するためには、コーン型ウーファーも、
小口径、中口径のもののなかから選び、振動板の面積が不足するのであれば、複数使用する──。

もっともらしい理屈のように思えるが、
実はこれが、うまくいかなかった、大きな理由ではないだろうか、と私は考える。

たとえば、中高域が無指向性ユニットならばウーファーも無指向性にしたほうがいい。
そのためにウーファーをエンクロージュアの正面にとりつけずに、
エンクロージュアの底面にとりつけ床に向けて放射して無指向性にする──、
これと似たような発想に思えてしまう。

なぜ低音域に関しては、スーパートゥイーターにあった発想の自由度がこうも失われてしまうのか。
むしろスーパートゥイーターに関してよりも、
スーパーウーファーに関してのほうが自由度がなければうまくいかないのではないだろうか。

この問題について考えると、この項の(その14)に書いた、
「コーン型ウーファーをつけ足す」という発想そのものが、じつは間違いの元、
スーパーウーファーは難しい、ということに生み出している、としか思えない。

スーパートゥイーターはつけ足す、という感覚でとらえてもいいが、
スーパーウーファーはつけ足す、という感覚ではうまくいかない。
なぜなら、低音域こそが土台・基本であるからだ。
つけ足す、のではなく、そこに築いていくものであるからだ。

Date: 9月 18th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その14)

振動板といっても、コーン型ユニットとコンデンサー型ユニットでは、
前者が振動板であれば後者は振動膜である。
さらに前者にはボイスコイルとボイスコイルボビンがそこにぶらさがり実効質量が大きくなりがちなのに対し、
後者の振動膜にはボイスコイルもボイスコイルボビンもいらない。

それに駆動力のかかりかたも大きく違う。
コーン型ではボイスコイルが振動板の駆動源となるが、コンデンサー型では振動膜全面に駆動力がかかっている。

その駆動力を生み出している原理の違いもあるから、どちらがどうとは一概にはいえないところはあるけれど、
コンデンサー型スピーカーは、やはり軽やかな音を出すものが多い。
鈍い、なにかをひきずったような、悪い意味での重さにつながるような音は出さない。

そういうコンデンサー型スピーカーシステムの低音域の再現能力をより充実させようと思ったときに、
安易にコーン型ウーファーをつけ足してもうまくいかない──、
そんなふうに、これまでいわれてきた。

確かにメーカー製の、コンデンサー型ユニットにコーン型ウーファーを足したスピーカーシステムで、
うまくいった例はあるのだろうか。
私が聴いた範囲内では、残念ながら成功例といえるものには出合えなかった。

そういった製品ばかりが続いていると、なにか原理的にうまくいかないのではないか、
とつい考えてしまいがちになるが、ほんとうにそうなのだろうか。
コンデンサー型スピーカーの低音域を拡充するには、
同じコンデンサー型の大型ユニットをもってこないとだめなのか。

スーパートゥイーターに関しては、ユニットの動作原理・振動板の形状について比較的自由であったのに、
なぜかスーパーウーファーに関しては、その自由度を、自ら手放してしまっているように感じることがある。

Date: 9月 18th, 2011
Cate: ユニバーサルウーファー

スーパーウーファーについて(その13)

スーパートゥイーターとスーパーウーファー、
このふたつは、ワイドレンジ再生にとって有効な手法でありながらも、
実際に取り組まれている方の意識、といおうか、自由度といおうか、
それがスーパートゥイーターとスーパーウーファーとでは捉え方に差異がある、とみえる。

たとえばタンノイのキングダムはスーパートゥイーターにドーム型ユニットを採用している。
システムの中核となる同軸型はコーン型とホーン型は複合形ゆえに、
これまでのスピーカーシステムの構成的にはスーパートゥイーターにはホーン型ユニットとなることが多いし、
それを自然なことだと受けとめられることだろう。
ホーン型でなければリボン型ユニットとなるだろう。
そこをあえてタンノイは、そのどちらでもなくドーム型をもってきたところに、
タンノイ初の4ウェイ・システムのキングダムがうまくいった要因のひとつが感じられる。

スピーカーを、自分でユニットを組み合わせて構築されている方でも、
中域にホーン型ユニットを採用し、それに惚れ込みながらも、
スーパートゥイーターに関してはリボン型ユニットという方も少ないないと思う。
なにもそれは中域がホーン型ユニットの場合にかぎらない。
ドーム型ユニットの中域の上にリボン型という人もおられるだろう。

中域・高域がホーン型ならばスーパートゥイーターもホーン型、
中域・高域がドーム型ならばスーパートゥイーターもドーム型、
このことにとらわれている方はあまりおられないと思えるし、
メーカーのスピーカーシステムをみても同じ方式のユニットで必ずしも統一しているわけではない。

つまりスーパートゥイーターの選択に関しては、自由度を感じられる。
なのにスーパーウーファーに関しては、どうだろうか。

よくいわれている、つまり昔からいわれていることがある。
コンデンサー型のスピーカーにスーパーウーファーをつけ足すのは、うまくいかない、ということがある。