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Date: 6月 15th, 2014
Cate: 新製品

新製品(フィデリティ・リサーチの場合・その2)

FR7はなぜシェル一体型なのか。
それまでのフィデリティ・リサーチのカートリッジにシェル一体型はなかった。

FR7の構造図をみれば、すぐに理解できる。
シェル一体型でなければ実現できない構造である。

ステレオサウンド 47号の新製品紹介のページにFR7は登場した。
記事は井上先生が書かれている。
その他に井上先生と山中先生が、このカートリッジについて語られている。
このふたつを読めば、FR7がどういうカートリッジなのかは伝わってくる。

そして構造図が掲載されていた。
通常のMC型カートリッジはマグネットはひとつだけである。
FR7はふたつのマグネットを持つ。
そのためどうしてもカートリッジの横幅が通常の、マグネットがひとつのタイプよりも増すことになる。

井上先生は、FR7の発電方式をプッシュプルと紹介されていた。

FR7の音が、それまでのフィデリティ・リサーチのカートリッジとはずいぶん違ってきていることは、
47号の特集ベストバイでの評価を読んでもわかった。

それにしても、どうしてこうも変ったのだろうか、ともそのとき思っていた。

Date: 6月 14th, 2014
Cate: 試聴/試聴曲/試聴ディスク

試聴ディスク考(その3)

東京に住んでいればオーディオ店も当時は数多くあった。
ちなみにダイナミックオーディオは、当時、秋は原と新宿以外に六本木、新橋、渋谷、丸の内にも店舗があった。

そういう環境であれば、そういう場に赴けば、あれこれ試聴できるだろう。
お金を持っていない中学生、高校生でも、他に購入しそうな客がいて、
その人が試聴をしていれば、音を聴くことはできたと思う。

それが私が住んでいた田舎ではそうはいかない。
熊本市内にオーディオ店はあった。
けれど東京のオーディオ店と比較できるところは、当時は一店舗だけだった。
そこに行くにも時間と交通費が、小遣いと新聞配達のバイト代だけの高校生にとってはけっこう負担だった。

とにかく、このころの私は渇望していた。
オーディオのこと、音楽のことを、とにかく知りたかった(聴きたかった)。
それはステレオサウンドの誌面の世界を少しでも実体験(追体験)してみたかった、ともいえる。

ステレオサウンドで高い評価を得ていたオーディオ機器を聴きたい。
でも、そうそう聴けるわけではない。
聴けたとしても、そう長い時間で聴けるわけでもないし、くり返し聴けるわけでもない。

それでもレコードは、当時もいまと変らぬ価格だったから、決して安くはなかった。
けれどオーディオ機器に比べれば、ずっとずっと買いやすい。

レコードならば、すべとはいかないまでも何枚かは買える。
自分のモノであれば、いつでも聴きたい時にくり返し聴ける。

これが当時の私にとっては、ステレオサウンド誌面の実体験(追体験)であった。

Date: 6月 14th, 2014
Cate: 新製品

新製品(フィデリティ・リサーチの場合・その1)

私のフィデリティ・リサーチについてのイメージは、
ステレオサウンド 43号の瀬川先生の文章で、でき上がった。
     *
この独特の音質をなんと形容したらいいのだろうか。たとえばシンフォニーのトゥッティでも、2g以上の針圧をかけるかぎり、粗野な音や荒々しい歪っぽい音を全くといっていいほど出さないで、あくまでもやさしく繊細に鳴らす。油絵よりも淡彩のさらりとした味わいだが、この音は一度耳にしたら好き嫌いを別として忘れられない。出力がきわめて低いので、良質なトランスかヘッドアンプを組み合わせることが必要条件。
     *
オルトフォンのSPU、EMTのTSD15、それにデンオンのDL103といったMC型カートリッジが、
発電コイルの巻き枠に磁性体を使用したタイプに対し、
フィデリティ・リサーチのFR1は空芯コイルのMC型だった。

鉄芯と空芯。
このふたつの言葉がイメージする音が、そのままフィデリティ・リサーチのFR1と重なっていた。
といってもFR1の音を、このとき聴いたことがあったわけではない。

フィデリティ・リサーチはおもしろい会社で、
FR1のあとに、FR1E、FR1MK2、FR1MK3と出しているけれど、
1978年ごろはすべて現行機種てあった。

型番末尾にMK2、MK3とついているわけだから、改良型であることに違いない。
ふつう改良型が出るときに以前のモデルは製造中止になるのに、フィデリティ・リサーチは違っていた。

オーディオに興味をもちはじめたばかりのころは、これが不思議でならなかった。
そのフィデリティ・リサーチが、1978年に新製品を出した。
FR1MK4ではなく、FR7という、シェル一体型の、
それまでのフィデリティ・リサーチの製品とは趣の異るカートリッジだった。

Date: 6月 13th, 2014
Cate: 新製品

新製品(その7)

改良型としての新製品でもっとも気になるのは、
いま自分が使っているモデルの改良型が新製品として登場してくることである。

最初はベタボレして買ったオーディオ機器でも、何年か使っていると、
いいところもそうでないところもはっきりとしてくる。
そのオーディオ機器を使っている何年かの間に、自分の部屋以外では音を聴かないということはまずない。
オーディオショウ、オーディオ販売店にでかけたり、
オーディオ仲間のリスニングルームを訪問をしたりして、いくつもの音を聴いていく。

そうやって聴いた音の中には、自分のシステムが不得手とするところをうまく鳴らしていることもある。
そういう音を一度でも耳にすれば、よけいに自分のシステムの不得手なところがはっきりとしてくる。

そんなときに、タイミングよく、いま使っているスピーカーもしくはアンプの改良型の新製品が出た。
これは気になる。
気に入っているところはそのまま残していて、
気になっているところがなくなってくれれば、それがいちばんありがたい。

改良型の新製品が、いまは懐の事情で買えないとしても、
改良型の新製品が、元のモデルとどこがどう違っているのか。
細部をよく観察していくことで、得られるものはきっとある。

Date: 6月 12th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その22)

どういう人ならば、アナログプレーヤーを使いこなしているのか。

キャリアが長い人なのか、
名器といわれるアナログプレーヤーを使っている人なのか、
これまで多くのアナログプレーヤーを使ってきた人なのか、
いくつものカートリッジを持っている人なのか──。

どれもあてにはならない。

キャリアの長い人でも実にいい加減な使い方をしている人はいる。
キャリアが短くともきちんと使っている人もいる。

音がいいといわれているプレーヤーを使っていても、
世評の高いカートリッジをいくつも持っていても、使いこなしのできていない人はいる。
それほど高価なプレーヤーでなくとも、きちんと使いこなしている人だっている。

人さまざまであり、こういう人ならば、アナログプレーヤーを使いこなしているということは、
確実なことは何も言えない。

数年前のインターナショナルオーディオショウでも、
あるオーディオ評論家の人(私よりもひとまわりくらい上)が、あるブースでLPをかけていた。
アナログプレーヤーの操作はそのブースのスタッフにまかせずにやられていたのだが、
そのおぼつかないことといったら──、自覚がないのだろうか。

私は瀬川先生がレコードをかけかえられるところを何度も何度も見詰めてきた。
レコードはこうかけるもの、ということをそこで学んできた。

いま、こういう人がほとんどいないように見受けられる。

Date: 6月 11th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その21)

ゴードン・ガウの言葉を借りるまでもなく、
音の入口にあたるアナログプレーヤーがきちんと設置・調整されていなければ、
システムの調整をやってもうまくいかないことは明白である。

井上先生も何度も、このことは強調されていた。
音をつめていく作業は、音の入口から順にやっていくこと。
つまりアナログプレーヤーをきちんと調整する。
それからアンプ、そしてスピーカーという順にやっていく。

うまく調整がいけば、調整前よりも細かな音の違いがより明瞭に聴こえるようになる。
だからまた音の入口のアナログプレーヤーの調整を、さらにつめていく。
そしてアンプ、スピーカーへの順で行う。

これを何度も何度もくり返しシステムをつめていくのが基本。
気が向いたところから手をつけていっても、音の入口であるアナログプレーヤーがいいかげんな状態であれば、
アナログプレーヤーで発生している不具合を、
アンプやスピーカーのところでなんとかしようと悪戦苦闘しても、実際はなんともならない。

アナログプレーヤーの不具合は、アナログプレーヤーの設置・調整をきちんとやる以外にやりようはない。

そのアナログプレーヤーの調整をきちんと行うためには、
アナログプレーヤーをきちんと設置する必要がある。
設置がいいかげんなままでは、それこそ何を調整しているのかわからなくなる。

アナログプレーヤーの調整に限らず、オーディオで大事なことは、
いま自分がやっていることは、何をどうしているか、ということをはっきりとさせることである。

そんなことわかっているよ、というだろう。
自分はカートリッジの調整をやっている、と。

だがプレーヤーの置き台(ラック)がガタついて、水平も出ていない状態。
プレーヤーの水平もあやしい状態で、何を調整しているといえるのか。

そして意外にもトーンアームのゼロバランスがきちんととれていない例も少なくない。

Date: 6月 11th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その20)

花村圭晟氏がいわれる「単純な取り扱い上のミス」は、日本のオーディオマニアに限ったことではない。
アメリカのオーディオマニアもそうだ、ということが、ステレオサウンド 64号掲載の記事を読めばわかる。

Spirit of Audio-scienceとつけられた記事は、
マッキントッシュのゴードン・ガウのインタヴューをまとめたもの。
副題は「私は音の仕立屋(サウンドテイラー)になりたい ヴォイシング(音場補正)をめぐるインタビュー」。

「オーディオ製品は、ディズニーのミッキーマウスのようなキャラクター商品ではないのです」
ゴードン・ガウのこの言葉のあとに、アナログプレーヤーに関する発言が続く。
     *
実は、ヴォイシングにうかがうと、まず最初にカートリッジが正しくプレーヤーに取りつけられているかどうかチェックすることから始めるのです(笑)。ディーラーと協力して調査した結果、実に6割のユーザーが、オーバーハング、トラッキングアングル、インサイドフォース・キャンセラー、針圧の調整の不備によって、正しくカートリッジを使いこなしてません。超楕円針がこれほど普及してきた今日、レコードの音溝に対して5度傾いていても、多量のIM歪の発生につながります。XRT20は、とりわけIM歪を減らすことを重要な課題として設計されていますから、カートリッジ出力からIM歪だらけの信号を再生していたのでは、お話になりません。
いくら、ヴォイシングで調整しても左右の拡がりのバランスがとれないと思って調べてみると、シェルに正しくカートリッジが取りつけられていなかったりする。音溝の左右に均等に針圧がかかっていないケースが非常に多いのです。
いくら高価な装置を買いそろえても、音の入口がその状態では、ヴォイシングの意味はなくなってしまいます。
     *
ステレオサウンド 64号は1982年9月発売だから、まだCDは登場していない。
この時代のアメリカでも、マッキントッシュのアンプ、スピーカーを購入する人たちでも、
六割の人がカートリッジを正しく使いこなしていない、という事実。

いまはどうなっているのだろうか。

Date: 6月 10th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その19)

ステレオサウンド 63号には、オーディオクラフト・ニュース No.5が掲載されている。
そこにこう書いてある。
     *
 このような問題点も、カートリッジのものに起因するもともと偏差の大きいカートリッジでない限り、意外と単純な取り扱い上のミスによるものが少なくありません。
 その何点かを列記すると
 ①ヘッドシェルの水平度、またはカートリッジの取り付けが不備である場合。
 ②レコード面の水平度が不十分である場合。
 ③レコードプレーヤーそのものの水平度が出ていない場合。
 レコード再生時のトラブルはこのような要因が圧倒的に多く、水平度のくるいから生ずるカートリッジの誤動作、とりわけクロストークバランスに影響してくる誤動作は、高域の不快な歪感をつきまとわせる結果となります。
(中略)
 一般的に、レコードプレーヤーキャビネットの水平チェックはするが、レコード面の水平度はチェックしにくいことも手伝って、確認されていないケースが多いように思われます。弊社のようにワンポイント方式のトーンアームを作っていると、ユーザーの方から〝どうしてもラテラルがとれない〟といった苦情をいただくケースが多いのですが、実際に調べてみると反ったレコードをターンテーブルを止めたまま調整していることが良くあります。ターンテーブルが回転していれば、反ったレコードですとカートリッジが上下にゆれますから気付くのですが、調整確認のためターンテーブルが止まっている場合が意外に多いのです。
     *
ステレオサウンド 63号は1982年6月に出ている。
CDはまだ登場していなかった。
このころでさえ、こういう状況だったことがわかる。

Date: 6月 10th, 2014
Cate: アナログディスク再生, 広告

アナログプレーヤーの設置・調整(その18)

ステレオサウンド 59号から、オーディオクラフトの広告はがらっと変った。
確かに広告ではある。オーディオクラフトの製品を紹介はしている。
けれど、全体的な印象は、花村圭晟氏による記事でもあった。

オーディオクラフト・ニュースと扉のページにある。
いまステレオサウンドに掲載されている、いかなる広告ともはっきりと異る。
すへての広告がこうなるべきだ、とはいわないが、
この時代、こういう広告をしかるべきお金を払ってステレオサウンドに払って、
いわぱページを買い取っての掲載で、そこでの内容は広告であっても広告ではない内容でもあった。

ジョン・カルショーについて書かれたこともある。
オーディオメーカーの広告に、デッカのプロデューサーだったジョン・カルショーの名前が出てくる。
それは、ジョン・カルショーの本「ニーベルングの指環・プロデューサーの手記」の再版要望だった。

これはステレオサウンド 62号に載っている。
そして63号で、この本を訳された黒田先生が、「さらに聴きとるものとの対話を」で、
オーディオクラフトの広告についての書き出しで、取り上げられている。

このころのオーディオクラフト・ニュースは抜き刷りにして出してほしいくらいである。
このころのステレオサウンドを持っている人には不要であっても、
30年以上前のステレオサウンドだから、いまでは持っていない人の多いかもしれない。
そういう人のためにも出してほしい、と思うけれど、すでにオーディオクラフトもなくなっている。

花村圭晟氏も行方知らず、ときいている。

Date: 6月 10th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その17)

ここまで書いてきたこと、
そんなこと当り前すぎて、何をいまさらと思われるかもしれない。

だが、意外にここまて書いてきたことがきちんとなされていないケースが少なくないから、書いている。

私はそれほど多くの方のリスニングルームに行っているわけではないが、
それでもアナログプレーヤーの使いこなしのいいかげんさは目にしてきている。
本人はきちんと設置・調整しているつもりでも、そうでないことがあった。

たまたま私が行ったところだけがそうではない。
アナログディスク再生に関しては大先輩といえる花村圭晟氏。

花村氏に関して、瀬川先生がステレオサウンド 58号に書かれている。
     *
 余談かもしれないが、社長の花村圭晟氏は、かつて新進のレコード音楽評論家として「プレイバック」誌等に執筆されたこともあり、音楽については専門家であると同時に、LP出現当初から、オーディオの研究家としても永い経験を積んだ人であることは、案外知られていない。日本のオーディオ界の草分け当時からの数少ないひとりなので、やはりこういうキャリアの永い人の作る製品の《音》は信用していいと思う。
     *
花村氏はオーディオクラフトの社長でもあった。
瀬川先生の文章はオーディオクラフトのトーンアームAC3000MCについて書かれたものからの抜粋だ。

花村氏については、菅野先生からも話を聞いたことがある。
「ぼくらの大先輩だ」といわれていた。

Date: 6月 10th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その16)

アナログプレーヤーから雑共振をできるだけ排除することは、大事なことだ。
そのためにはアナログプレーヤーの周りをきれいに片付けることもだが、
アナログプレーヤーの機械的な点検も行っておきたい。

機械的点検とはガタついているところがないかのチェックである。
ガタつきまではいかなくとも、取り付けネジが緩んでいないかのチェックを行う。

ネジは使っているうちにたいてい緩んでくる。
カートリッジをヘッドシェに取り付けているネジ、
ネジではないが、ヘッドシェルとトーンアームの結合箇所、
トーンアームをベースに取り付けているネジ、
ベースがプレーヤー・キャビネットに取り付けるタイプであれば、その取り付けネジ、
それからターンテーブルプラッターを外して目に見えるネジ、
ダストカバーをもつモデルであれば、ヒンジのネジ、
もっと細かなことをいえば裏側のネームプレートをネジ止めしているモノならば、そこだし、
たとえばSMEのトーンアームのように針圧印加用のウェイトはネジ止めできるようになっているから、
ここもわすれないように締めておく。

アナログプレーヤーには、けっこう数のネジが使われている。
これらを増し締めしておきたい。

ただここで注意しておきたいのは、締めすぎないこと。
緩みすぎてガタついているのは論外だし、そこまでではないにしろ緩んでいたら、音に影響を与える。
とはいえ力を入れすぎて締めすぎになってしまうのもよくない。

どのくらいはいいのかは、これは感覚に頼ることになる。
どのくらい締めればいいのかわからない人は、
まず意図的にネジを緩めてみたらいい。どんなふうに音が変るのかを、まず自分の耳で確かめる。

Date: 6月 8th, 2014
Cate: 試聴/試聴曲/試聴ディスク

試聴ディスク考(その2)

私がステレオサウンドを読み始めたころには、試聴ディスクのリストが必ず載っていた。
レコード番号も表記されていたから、それが国内盤なのか輸入盤なのかもわかった。

試聴は複数の人が合同で行うときもあれば、
一人ひとり別々の時のあるから、
試聴ディスクに、その違いは出てくる。

一人ひとりであれば、一人ひとりの試聴ディスクが書いてある。
合同試聴の場合は、数枚のレコードが書いてあるけれど、
それらのディスクがどういうふうに選ばれたのか、その詳細については書いてない。

互いに長年一緒に仕事をしてきている人たちだから、
それほどもめることなく試聴ディスクは決るんだろうな、と読者のころはそう思っていた。

試聴ディスクのリストは、オーディオに関しても初心者、
音楽の聴き手としても初心者であった私にとって、いいガイドになっていた。

試聴ディスクのすべてを、当時は買えはしなかった。
それでも何枚かは買っていく。

次はこのディスクを買いたい、とも考える。
新しいステレオサウンドが出て、そこに試聴ディスクが書かれていれば、
その中に新しいディスクが登場していれば、音楽の好き嫌いにあまり関係なく、一度は聴いてみたい。

Date: 6月 8th, 2014
Cate: 音楽性

「音楽性」とは(映画性というだろうか・その6)

技術は進歩していくものだから、将来はどうなのかはっきりしたことはいえないが、
少なくともあと数年やそこらでドルビーアトモスと同等のものがホームシアターで実現できるようになると思えない。

となれば、私は映画館を足を運ぶ。
すべての映画がドルビーアトモス対応で制作されればいいとは思っていない。
ドルビーアトモスをそれほど必要としない映画もあれば、
ドルビーアトモスがあればこそ活きてくる映画もある。

5月にコレド室町にあるTOHOシネマズで観た「アメイジング・スパイダーマン2」は、格好の映画である。

「アメイジング・スパイダーマン2」がドルビーアトモスでなければ、
3D上映館でなくてもいいかな、とも少しは思っていた。
けれどドルビーアトモスの映画館で観れるのであれば、そこで観たい。

最初「スパイダーマン」三部作はサム・ライミ監督、
「アメイジング・スパイダーマン」シリーズはマーク・ウェブ監督。

どちらが優れているか、というより、サム・ライミの描くスパイダーマンは、
平面のスクリーン、つまり従来の上映で最大限に活きるスパイダーマンの撮影だったことを、
「アメイジング・スパイダーマン2」を3D+ドルビーアトモスで観て、思った。

2Dで完結しているといえるスパイダーマンの表現だからこそ、
サム・ライミは3Dでの撮影を拒否した、という噂は、ほんとうかもしれない、と思えてくる。

マーク・ウェブは、だから同じ土俵には立っていない。

Date: 6月 7th, 2014
Cate: 音楽性

「音楽性」とは(映画性というだろうか・その5)

いまでこそ上映中の映画館はかなり暗い。
ずっと以前も暗かった。
けれど1980年代にはいってから、消防法の規制により上映中でもそれほど暗くなくなっていった。

座席の脚部には小さなライトが取り付けられ、上映中でも光っていてた。
ぼんやりと暗い中での上映という時代があった。
そのころは、いまのように音の良さを謳う映画館は、ほぼ皆無だった。
むしろひどい音のところも少なくなかった。

東京にはそれこそウェスターン・エレクトリックのシステムの映画館があったのは知っていた。
そういう映画館は、私が上京してときには完全に消え去っていた。

映画館のシステムは、少なくとも声(セリフ)の通りがいい、はずなのに、
1980年代の東京の映画館で、そういう印象を覚えたことはなかった。

日本語の映画を観るのは、時として億劫だった。
洋画ならば字幕があるから、セリフの明瞭が悪くてもまだなんとかなるが、
日本語の場合は字幕はないのだから、はっきりと聞き取れないのは、映画館の体をなしているとは言い難かった。

いまはそういう映画館はもうないだろう。
音もそのころよりは良くなっている。
椅子も良くなっている。

それでもすべての映画館が同じクォリティで上映しているわけではなく、
広さも新しさもばらばらである。
いいところもあればそうでないところもまだまだある。

いいところもそうでないところも入場料は同じであり、
周りに見知らぬ人が大勢イルなかで観るのが苦手な人もいるだろうから、
映画館で観るよりも、入念に調整したホームシアターの方がクォリティもよく、気兼ねなく観れるから、
映画館に行く価値・必要性を感じなくなった──、
それがわからないわけではないが、それでも最新の映画館はさすがに映画館と思わせる。

いま現在、3D+ドルビーアトモスによる上映がそうである。

Date: 6月 7th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その15)

アンプが受けとるのはカートリッジが発電した信号である。
アンプはその信号を増幅してスピーカーを鳴らす。

つまりカートリッジの信号が、アンプにたどりつくまでに欠落する、
もしくは歪められるようなことがあったら、それをアンプやスピーカーでなんとかすることはできない。
だから接点はこまめにクリーニングする習慣をつけておきたい。

同時にカートリッジができるだけレコードの溝を精確に電気信号に変換できるようにすることも、
アナログプレーヤーの使い手には求められる。

私がアナログプレーヤーの周りをきれいに片付けろ、といういうのもそのためである。
このことはずっと以前から、井上先生がたびたび言われていたこと。
ステレオサウンドにも何度か書かれている。

にも関わらず忘れられつつある、と感じることもある。

カートリッジは振動を電気信号へと変換する。
この信号も非常に微細な振動である。

そこに雑共振をするものがアナログプレーヤーの周りにあったら、どうなるか。
それは電気信号の通り道の接点がひどく汚れているのと同じと捉えてもいい。

雑共振とは、汚れた共振(振動)だからだ。