情景(その13)
少し前に、心に近い音、耳に近い音について書いている。
結局のところ、ここで語っていることと、
心に近い音、耳に近い音について語っていることは、
私にとって同じことを、別の側面から語っていただけ、である。
リアルな音は、私にとって耳に近い音、
リアリティな音こそ、私にとっては心に近い音。
少し前に、心に近い音、耳に近い音について書いている。
結局のところ、ここで語っていることと、
心に近い音、耳に近い音について語っていることは、
私にとって同じことを、別の側面から語っていただけ、である。
リアルな音は、私にとって耳に近い音、
リアリティな音こそ、私にとっては心に近い音。
昨晩(10月5日)のaudio wednesdayの締めは、
やはりナルシス。
今回で五回目。
いつも坐るところはほぼ同じなのに、
昨晩気づいたことが一つあった。
ナルシスのシステムは、作り付けの棚におさめられている。
真ん中の棚二段にアナログプレーヤーが置かれている。
ステレオ用とモノーラル用とで、プレーヤーの使い分けである。
アナログプレーヤーの下の棚にカセットデッキとCDプレーヤーがあるが、
ほとんど使われていない、といっていい。
一番上の棚にプリメインアンプ。
このアンプの用に、CDが置いてある。
ジャケットが見えるように置かれている一枚があった。
カザルスのバッハの無伴奏である。
第二回audio wednesday (next decade)は、11月2日。
第一回、二回と同じように地味にやる予定。
いまの私にとっての、平面バッフルは、
アルテックの604-8Gを取りつけて鳴らす、ということである。
604-8G以外にも平面バッフルで鳴らしてみたいと思うユニットは、いくつかある。
でも、それらのユニットを所有していないし、
どれもすでに製造中止になってけっこう経つモノばかりだから、
ある程度のコンディションのモノとなると、みつける手間も、費用もそこそこにかかる。
604-8Gは手元にあるのだから、てっとりばやく、平面バッフルに取りつければ、
その音を聴ける。
(その8)で、audio wednesdayが終ったこともあって、
よけいにアルテックの音が聴きたいのかもしれない、
そんなことを書いてしまったが、
喫茶茶会記のアルテックのユニット構成はA7に近いものであって、
604-8Gとは、同じアルテックということでひとくくりにはできない面、
というか領域があるように感じている。
もちろん同じアルテックのスピーカーだけに、共通する特質はある。
それでも604というユニットは近距離で聴かれることを前提としている。
A7のように中ホール、小ホールで大勢に音を届けるスピーカーというわけではない。
一人で聴くスピーカーといってもよい。
そんなことを書きながらも、
以前、audio wednesdayでかけたラドカ・トネフの“FAIRYTALES”の音のことをおもい出してもいた。
しっとりとみずみずしい音で、ラドカ・トネフが鳴ってくれた。
一人のための歌、という感じで鳴ってくれた。
そういうこともあるからこそ、
よけいに604-8Gはさらに、その感じが濃厚になってくれるのではないか。
そう期待してしまう、と同時に、そのためには──、と考えることも出てくる。
50CA10の単段シングルアンプを自作するにあたって、
小さなところではあるが、無視というか、妥協したくないのがソケットである。
50CA10はコンパクトロン管で、12ピンである。
いまでも12ピンのソケットは新品で入手できるけれど、
積極的に使いたいと思わせないモノばかり。
個人的に真空管のソケットは、
マイカ・フェルド・フェノリックで作られているのがいい。
真空管のソケットの色を気にするなんて、といわれそうだが、
黒とか白とかのソケットだと、それがメーカー製のアンプならば、
それほど気にならなくても、自分で作るとなると違ってくる。
ソケットをどうするか。
そんなことをなんとなく思っていたら、ヤフオク!で、
12ピンのソケットが出品されていた。
アメリカ製である。
しかもおもっていたよりも安価で出品されていて、
誰も入札していなくて、即決価格が設定されていたから、すぐさま落札。
今日、そのソケットが届いていた。
ゆっくりではあるが、確実に進んでいる。
オーディオアクセサリー 186号には、仮想アース関連の記事も載っている。
光城精工の製品、Crystal Epシリーズが取り上げられている。
光城精工のサイト、オーディオアクセサリーの記事を読めばわかるように、
Crystal Epの内部は電解コンデンサーである。
具体的にどうやっているのかというと、
コンデンサーの両極をショートさせているはずだ。
分解して中を確かめたわけではないが、間違いないはずだ。
コンデンサーの両極をショートさせてオーディオ機器に接続するという手法は、
Crystal Epが最初ではない。
製品としては最初だろうが、手法としては前からある。
なので、Crystal Epに興味、関心がある人は、簡単に試すことができる。
電解コンデンサーを買ってきて、やってみればいいだけのことだ。
作業にかかる時間はわずか。
部品さえあればすぐに試せる。
両極をショートするので、コンデンサーの耐圧は低くても問題ない。
それで効果を確認できたら、さらにあれこれ試してみればいい。
コンデンサーの容量によっても効果は変化するし、
コンデンサーの種類、銘柄によっても変化する。
簡単な実験である。
だからといって光城精工のCrystal Epシリーズを買う必要がないとは思わない。
両極をショートさせた電解コンデンサーをアース端子に接続するのは、
あくまでも実験の範疇である。
アース端子に電解コンデンサーがぶら下がっている。
これが許せない、という人は、ケースをどうにかするしかない。
けっこう悩むところだ。
Crystal Epの中身が電解コンデンサーだとわかると、
いわゆる原価厨と蔑まされている人たちは、すぐに高い、と批判するだろうが、
そう思う人は、ケースを含めて自作してみればいい。
ずっと以前は、それこそステレオサウンドを記事だけでなく、
広告まで熱心に読んでいた。
いまは──、というと、読んでいるといえばそうなのだが、
眺めている、といったほうか近い、そんな読み方である。
そんな読み方であっても、気になるところが目につくのはどうしてだろうか。
224号でも、あった。
136ページ、特集記事である。
パラダイムのPERSONA Bのページである。
写真の下に、簡単な説明文がある。
そこに《1980年代前半に設立されたカナダのスピーカーメーカー》とある。
352ページ、傅信幸氏によるFOUNDER 70LCRの紹介記事がある。
傅信幸氏の文章の冒頭、
《パラダイム(Paradigm)はカナダ・オンタリオ州で1982年に創業した》とある。
1982年は1980年代前半だから、136ページの説明文は間違っているわけではない。
けれど、傅信幸氏が1982年と書かれているのだから、
136ページの説明文も、1982年に設立された、とすべきだ、と誰も思わなかったのか。
ステレオサウンドの編集部の全員、照らし合せることをしないのか。
編集者ではなく、編集捨になりつつある……
facebookでGerman Physiks(ジャーマン・フィジックス)をフォローしている。
9月17日のGerman Physiksの投稿は、
オーディオアクセサリー 186号で取り上げられたことについて、であった。
そこに石原俊氏の文章が、英訳されて一部引用されていた。
そして、最後にはこうある。
Our thanks to Mr. Ishihara and the Audio Accessory editorial staff and Mr. Iori of Taktstock, our Japanese distributor, for arranging the review.
これを読んでいたから、オーディオアクセサリーのHRS130の記事が楽しみだった。
オーディオアクセサリー 186号が発売になって、
一ヵ月足らずでのGerman Physiksの、この投稿である。
ステレオサウンド 224号が発売になって、一ヵ月。
そろそろGerman Physiksの投稿で、
ステレオサウンドのこと、山之内正氏のことが取り上げられるのか。
Our thanks to Mr. Yamanouchi and the Stereo Sound editorial staff and Mr. Iori of Taktstock, our Japanese distributor, for arranging the review.
という投稿がなされるのだろうか。
オーディオアクセサリーの石原俊氏の文章、
ステレオサウンドの山之内正氏の文章、
この二つのHRS130についての文章を読んだ後に、
ステレオサウンド編集長の染谷一氏の編集後記を読むと、あれこれ妄想してしまう。
染谷編集長は、試聴記について書かれている。
そこには、
《自分の好みをただ押し付けただけの感想の羅列を試聴記として読まされると、いったい何の目的を持って誰のために書かれた文章なのかと理解に苦しむ》
とある。
そして最後には、
《プロ意識が欠けたまま書かれた試聴記には何の価値もないと思う。自戒の念を強く込めて。》
と結ばれている。
最初、読んだ時、どういう心境の変化なのだろう──、と思った。
それにしても、ただ試聴記とあるだけで、
この試聴記が、どの試聴記を指しているのかは、ひどく曖昧というか、
どうとでも読めるような書き方だ。
インターネットにあふれている個人の試聴記なのか、
それともステレオサウンド以外のオーディオ雑誌の試聴記なのか、
《自戒の念を強く込めて》とあるのだから、
ステレオサウンドの試聴記も含めてのことなのか。
オーディオアクセサリー 186号の発売日と、
この編集後記が書かれたであろう時期とを考えると、
オーディオアクセサリーを読んでの編集後記ではない、と思われる。
にしても、HRS130についての石原俊氏の文章と山之内正氏の文章を読むと、
こういうことを書きたくなるのかもしれない──、というのは私の妄想でしかない。
おそらく今日からなのだろうが、
ステレオサウンド 224号がKindle Unlimitedで読めるようになった。
224号は、少し楽しみにしていた記事がある。
おそらく224号で取り上げられているであろう、
ジャーマン・フィジックスのHRS130の新製品紹介の記事である。
8月発売のオーディオアクセサリー 186号でもHRS130は取り上げられている。
9月発売のステレオサウンド 224号でも取り上げられていて、
オーディオアクセサリーでは石原俊氏、ステレオサウンドでは山之内正氏、
オーディオアクセサリーはカラーで6ページ、ステレオサウンドはモノクロ2ページである。
カラーであるとかモノクロであるとか、
6ページなのか2ページなのかよりも、そこに書かれている内容である。
内容が薄ければカラー6ページであっても、モノクロ2ページの記事に劣ることだってある。
けれど、HRS130に関しては、オーディオアクセサリーの4ページである。
ステレオサウンドの山之内正氏の文章よりも、
書き手(石原俊氏)の熱っぽさが伝わってくるからだ。
石原俊氏は以前はステレオサウンドに書かれていた。
いつのころからか、さっぱり書かれなくなっていた。
そしていつのまにかオーディオアクセサリーに登場されるようになった。
山之内正氏はオーディオアクセサリーに書かれていた、いまも書かれている。
二年ほど前からステレオサウンドに登場されるようになった。
いまではメイン執筆者の一人である。
その二人がHRS130の記事を書いている。
私は、石原俊氏の文章(オーディオアクセサリーの記事)を読んでほしい、と思っている。
実を言うと、TDA1541Aは、いま三つ所有している。
NOSのD/Aコンバーターを、いつかは作ろうと思って、取っておいたモノだ。
なので、以前からTDA1541Aは、
どこまでのサンプリング周波数に対応できるのかは、きちんとしたところが知りたかった。
ところが情報が錯綜しているというか、
はっきりとしたことはわからなかった時期もあった。
今回、メリディアンの210の登場によって、改めて調べてみた。
Audialというブランドに行き着いた。
S5 DACという製品がある。
このS5 DACは、TDA1541Aを搭載したNOS D/Aコンバーターである。
S5 DACの製品ページをには、こう書いてある。
●Non-Oversampling, real multibit TDA1541A DAC
●Master USB device (“asynchronous USB”), operating up to 384 kHz, with galvanic isolation and two low jitter master clocks
S5 DACのページには、TDA1541Aに関する興味深いことも記されている。
Mojoより上のグレードの、同じChordのD/Aコンバーターと組み合わせていったら、
どんな音がしてくるのだろうか。
Hugoがあって、Daveがあるわけだが、メリディアンの210は、
どのグレードまで対等に対応するのだろうか、ここにも興味がある。
単純に価格的にはHugoあたりまでだろうが、
それぞれの機能と価格ということを考慮すると、まだまだいけそうな感じもする。
現行機種でMQAに対応していないD/Aコンバーターと210の組合せもいいけれど、
同じくらいに私が関心があるのは、少し古い世代のD/Aコンバーターとの組合せの音だ。
たとえばワディアのD/Aコンバーター、
それも以前のD/Aコンバーターと210との音はどんなだろうか。
そのころのワディアのD/Aコンバーターは、
32kHz、44.1kHz、48kHzのサンプリング周波数にしか対応していない。
88.2kHz、96kHzには対応していない。
それでも、その音を聴いてみたい。
TIDALでは、44.1kHz、48kHzのMQAのアルバムはかなりの数が配信されている。
グレン・グールドも44.1kHzである。
私は、その音を聴いてみたい。
そしてさらに聴いてみたいと思っているのが、もうひとつある。
フィリップスのD/Aコンバーター・チップ、TDA1541のノン・オーバー・サンプリングの音だ。
TDA1541はいまから四十年ほど前のD/Aコンバーターである。
それこそ古すぎないか──、そういわれそうだが、
以前見たTDA1541に関する記事では、96kHzまで対応できる、とあった。
そうであるならば、
TDA1541のノン・オーバー・サンプリング(NOS)D/Aコンバーターは、
210との組合せで96kHzまでのMQAのコアデコードの音が聴けるわけだ。
メリディアンの210で試したいことの一番は、
MQAに対応していないD/Aコンバーターとの組合せである。
といっても私が所有しているD/Aコンバーターといえば、
メリディアンの218とChordのMojo、それにいわゆるTiny USB DACだけである。
このなかで、MQAにまったく対応していないのはMojoだけ。
なのでMojoでしか試すことができなかった。
これまでMojoでは、
iOS対応のアプリ、Amarra Playがソフトウェアによるコアデコードを行ってくれるので、
iPhoneとの接続でその音は聴いてきていた。
とはいえ、別項で触れているようにAmarra Playのコアデコードは、
途中のヴァージョンから、
サンプリング周波数を二倍にアップしたうえで出力するようになり、
レンダリングのみMQA対応D/Aコンバーターとの組合せでは、フルデコードができなくなった。
MQAのフルデコードは、コアデコードとレンダリングの両方が行われてのことだ。
210とMojoを接続する。
iPhoneとの接続はUSBだったが、210との接続はSPDIFである。
MojoのSPDIF入力は3.5mmのミニジャックなので、
デジタルケーブルは片側が3.5mmのミニプラグのモノが必要となる。
そういう仕様のデジタルケーブルは市販されている。
それを購入しようかと思っていたら、RCAとミニプラグの変換アダプター持っていた。
デジタル伝送に関わるところなので、
プラグとはいえインピーダンスを考慮しなければならないのはわかっている。
けれど、市販されているRCA-ミニプラグのデジタルケーブルがそうなのか、
ちょっと疑問に感じるところもあったし、とにかく音を聴きたい欲求がまさって、
変換プラグを使っての音出しである。
結果を先に書くと、よかった。
だからといって、iPhone(Amarra Play)+Mojoの音との比較ではない。
Mojoより上流のシステムが、210を使う時とiPhoneとでは大きく違うため、
比較対象にはならないからだ。
Mojo以外のD/Aコンバーターとの組合せでも、聴いてみたい、と思った。
メリディアンの210を借りて、いくつかのことを試していた。
ちょうど忙しい時期と重なっていて、
試しておきたかったことの半分もできなかったけれど、なかなかに楽しかったとともに、
210と同種の新製品はこれからけっこう登場してくるであろうが、
この種の製品の新製品の紹介記事はなかなかにやることがあって、
大変だろうな、と思ってもいた。
ストリーマーと呼ばれる製品はすでにいくつかある。
そんななかで、210が特徴的なのはMQAのコアデコード機能を有していることだ。
96kHzまでのコアデコードは、ソフトウェアデコードがいくつかある。
210はハードウェアデコードであり、
MQA対応のD/Aコンバーターも、もちろんハードウェアデコードである。
ソフトウェアによるコアデコード、ハードウェアによるコアデコード。
結果としての音がまったく同じならば、どちらでもいいわけだが、
いまのところ、私が聴いた範囲(それほど多くない)では、
やはりハードウェアデコードでMQAを聴いてほしい。
特に、まだMQAの音を聴いていない人は、ハードウェアデコード、
それもできればフルデコードの音を聴いてほしいところだが、
210の登場は、そこまでいかないけれど、ハードウェアによるコアデコードの音を、
多くのオーディオマニアに提供できる。
将来的にはソフトウェアデコードの音は良くなっていくことだろう。
いまはこんなことを言っている私でも、将来はソフトウェアデコードの音で十分、
もしくはソフトウェアデコードの音がいい──、
そんなことを言い出すかもしれないが、
少なくとも現時点では、私の聴いた範囲でのことなのだが、
ハードウェアデコードの音で、MQAの実力を判断してほしい、と思う。
オーディオアクセサリーの186号の特集「“ペルソナ”を愛する評論家たち」、
この記事の担当者だったら──、そんなことをつい想像してみた。
私だったら、こんな記事は作らない、というのは無しで、想像してみたわけだ。
そのうえで、昨晩、私が書いたことを誰かに問われたとしよう。
なんと答えるか。
「ステレオサウンドとは違います」とまず言う。
「B&Wの800シリーズをあれだけ高く評価しながらも、
ステレオサウンドの評論家は誰も買わないじゃないですか。
うち(オーディオアクセサリー)の評論家は買っていますから」と。
評論家だから(業界の人たちだから)、安く買っているのだろう、と勘ぐることもできる。
実際に、多少は安く買っているはずだ。
定価で購入ということはまず考えられない。
それでも、彼ら六人は導入(購入)しているわけだ。
どんなに記事中で、素晴らしいスピーカーだ、いい音だ、と絶賛しても、
誰一人購入しないのと、六人が購入しているのとでは違ってあたりまえ。
六人のうち数人はメインスピーカーとしての導入ではないようだが、
それでも導入したという事実は、なかなかの説得力をもつことになる。
私のように勘ぐる人にはそれほどの説得力とならないだろうが、
それでも、そんな私でも、こういうことを今書いているわけだ。
私は「“ペルソナ”を愛する評論家たち」はタイアップ記事と受け止めている。
では、ステレオサウンドでのB&Wの800シリーズの記事はなんなのか。
800シリーズを誰も購入しないから、タイアップ記事ではない、ということになるのか。
こんなふうに想像してみると、
「“ペルソナ”を愛する評論家たち」の担当編集者は、
叛骨精神を少しは持っているのではないだろうか。
実際のところなんともいえないのだが、
ステレオサウンドにおけるB&Wの800シリーズと、
オーディオアクセサリーにおけるパラダイムのPERSONAシリーズは、
もしかすると、これから面白い展開になっていくのではないだろうか。