Archive for category テーマ

Date: 1月 12th, 2015
Cate: 単純(simple)

シンプルであるために(ミニマルなシステム・その5)

ワディアのPower DACの続報、そして製品化を待っていた。
それこそ首を長くして待っていた。
けれどまったく音沙汰無しだった。

ふたたびPower DACの名をステレオサウンドで目にしたのは、133号である。
100号1991年9月に出ている、133号は1999年12月に出ている。
八年間である。
それでもワディアはPower DACを製品として出してきた。

1991年のPower DACと1999年のPower DACはずいぶんと違うところがある。
まず筐体が大きく違っている。

1999年Power DACは三つの筐体から構成されるシステムである。
Wadia 390という型番のコントローラー、Wadia 790という型番のPower DACで、
アンプ部(D/Aコンバーター)は、モノーラルなのは同じだが、
円筒型の筐体から、マッシヴな金属ブロックのような形状となっている。

外形寸法はW44.7×H61.0×D44.7cmで、重量は116kg。
こうなるとスピーカーの脇に設置することが難しくなるほどである。
実物をみることはなかったけれど、ステレオサウンドに掲載されている写真から、その威容さは充分伝わってくる。

価格はWadia 390とWadia 790のセットで、11900000円だった。
桁を間違っているわけではない。D/Aコンバーター機能をもっているパワーアンプ、
パワーアンプ機能をもっているD/Aコンバーターとはいえ、一千万円をこえる価格は、もう溜息も出なかった。

1991年のプロトタイプは価格未定だったが、
外観、内部の写真、規模から判断するに、一千万円をこえるモノではなかった。
プロトタイプのまま市販されたとしたら四百万円から五百万円ぐらいでおさまっていた、と思う。

Date: 1月 12th, 2015
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その19)

1970年代がおわろうとしていたころから、
ダイレクトドライヴ型プレーヤーの音質が問題になりはじめていた。
性能は確かに優れている。けれど音がどうもよくない……、そんなふうにいわれはじめてきた。

ベルトドライヴ、リムドライヴの、音がいいと評価を得ていたプレーヤーと比較していわれたのは、
まずターンテーブルプラッターが軽いからではないか、があった。
つまり慣性モーメントが小さい。そのことが音に影響を与えている、と。
それからモーターのトルクが弱いから、だともいわれはじめた。

けれど冷静にカタログに発表された値をみていくと、
ダイレクトドライヴ型のすべてのプラッターが軽いわけではない。
ベルトドライヴ、リムドライヴと同等のモノもあったし、
モーターに関してもトーレンスのTD125のようにかなり弱いタイプも、ベルトドライヴ型にはあった。

プレーヤーの音は、そんな部分的な値によって決ってしまうものではない。
ベース、サスペンション、その他のいくつもの要素が有機的に関係してのトータルの音質である。

それでも国産メーカーは、そんな声に反応してだろうか、
そんなことはない、と証明するためだろうか、
ターンテーブルプラッターの重量を増し、モーターのトルクも強くしていった。

たとえばテクニクスのSP10MK3のプラッターは銅合金+奄美ダイキャスト製で、重量は10kg。
デンオンのDP100のプラッターは6.5kg、オンキョーのPX100Mは銅合金削り出しで10kg、
これらは重量級のダイレクトドライヴである。

これだけの重量物を回転させるのだからモーターのトルクも高い。
いま、これだけのモノがつくれるだろうか、と思える。

Date: 1月 12th, 2015
Cate: 単純(simple)

シンプルであるために(ミニマルなシステム・その4)

ワディアのPower DACの名がステレオサウンドの誌面にはじめてあらわれたのは、99号。
三浦孝仁氏がワディアの訪問記事の中に登場している。
そして100号でのエキサイティングコンポーネント(新製品紹介のページ)で、Wadia 5として、
4ページにわたり紹介されている。
ただしこの時点ではプロトタイプとしてである。

モノーラル構成で、筐体は高さ77cm、直径約30cmの円筒形(完全な円筒形ではない)。
重量は約50kg。出力は200W。
プロトタイプのため価格は未定となっていた。

電源スイッチは底面にある。
それ以外のスイッチは写真をみるかぎり本体にはついていない。
すべての機能は附属のリモコンで行うようになっている。

つまりCDトランスポートを用意すれば、スピーカーをドライヴできる。
こういう性質のアンプ(D/Aコンバーターでもある)だけに、
実際の設置はスピーカーの脇に目立たぬように、ということになる。
そしてCDトランスポートとPower DACを結ぶのは、
当時ワディアが提唱していたAT&TのSTリンクの光ファイバーである。

Power DACは小さいとはいえない。
むしろかなり大型ではある。
けれど、1991年の時点で、これほどミニマルなシステムを、
あるレベル以上のクォリティをもって構成することは無理といえた。

エキサイティングコンポーネント──、
私にとってワディアのPower DACという新製品は、まさしくエキサイティングだった。
すごいモノがあらわれた、と昂奮した。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: 背景論

オーディオ背景論(その3)

マンガの現場にもはやくからパソコンが導入されている。
そのこともあって、といっていいだろう。
背景の描き方が、手描きだったころとは変化している。
つまり緻密に、どこまでも緻密に描く人が登場している。

私と同世代までくらいだと、大友克洋の「AKIRA(アキラ)」は衝撃だった。
マンガの歴史の中に、劇画の登場がある。

私は劇画登場を同時代に知っているわけではない。
すでに劇画は存在していたから、「AKIRA」の登場は衝撃だった。
おそらく劇画登場を体験していた人でも「AKIRA」は衝撃であったはずだ。

「AKIRA」の登場がマンガの背景を変えた、と私は思っている。
「AKIRA」は1982年に連載が始まっている。まだMacintoshは誕生していない。
誕生していたとしても、マンガの現場ですぐに使われはしなかっただろう。

いつごろからだろうか、
デジタルカメラで撮影し、パソコンにデータとしてとりこんで背景を描く人が登場している。
これがマンガの背景をはっきりと変えた。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: モノ

モノと「モノ」(その15)

最初に使ったPhotoshopのヴァージョンは2.5だった、と記憶している。
まだフロッピーで供給されていた。10数枚あった。
インストール作業はフロッピーの出し入れ作業であった時代だ。
それからCD-ROMになる。

どちらの時代でも、家電量販店のパソコン売場や専門店のソフトウェアの棚には、
ボックスがいくつも並んでいた。
いずれもずしっと重たいボックスだった。

中身はCD-ROMとマニュアル。
CD-ROMは一枚か二枚でも、マニュアルが重かった。
この重さが、そのアプリケーションがどれだけ多機能であるかを示しているかのようでもあった。

いまソフトウェアのコーナーは小さくなっている。
インターネットでダウンロードで購入するのが当り前になってきたためであり、
マニュアルもPDFになってしまった。

アプリケーションだけではない、映画もインターネットで配信されるものが買えるようになっている。
そうやって購入したアプリケーション、映画などはハードディスクに記録される。

とはいえ、このふたつはまったく同じであるとはいえない。
アプリケーションはもとからパソコンにインストールするものだった。
一度インストールしてしまえば、基本的にインストールディスクは使わない。

一部のプロテクトがかかっているアプリケーションでは解除にディスクを、
アプリケーションの起動のたびに要求していたが、
そういうアプリケーションを除けば、インストール後にディスクは必要としない。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・余談)

そういえば、こんな質問をもらった。
マランツのModel 7とマークレビンソンのLNP2、どちらかくれるといわれたら、どちらをもらいます?、と。

仮定の質問であるから、どちらもコンディションはまったく問題ない。
新品同様のModel 7とLNP2が目の前にある。
どちらをとるか。

私はLNP2をとる。
けれど、誰かに、どちらをもらったほうがいいですか、とさらに質問されたら、
Model 7がいいですよ、と答える。

どちらも完璧なモノではない。
完璧なオーディオ機器など、この世には存在していない。
どんなモノであれ、いくつかの欠点は持っている。

欠点の少なさでいえば、Model 7であり、完成度の高さでもModel 7である。
デザインで判断してもModel 7である。

それでも私はLNP2をとる。
Model 7も手元においておきたいコントロールアンプのひとつである。
なのにLNP2をとるのは、個人的ないくつかのおもいがそこにあるからであり、
これはほかの人にはまったく関係のないことだ。

だから人にはModel 7をすすめ、私はLNP2をとる。
良し悪しだけでは割り切れぬことが、LNP2にはある。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・その6)

シルバーパネルのML6のデザインが素晴らしいかときかれたら、そんなことはない、と答える。
ML6を実際に使ってみると、非常に使いにくい。

この項の(その3)に引用したRFエンタープライゼスの広告。
そこに書いてあるJC2のごく些細な使い勝手の欠点。
これを読んだ時は正直はっきりとわからなかった。

自分でJC2を使ってみると、それはわかる。

RFエンタープライゼスの広告はステレオサウンド 43号に載っている。
43号の巻末には囲み記事で、
マーク・レヴィンソンがステレオサウンド試聴室にML2のプロトタイプを持ち込んだとある。

このふたつは関係している。
マーク・レヴィンソンがJC2の使い勝手の欠点の指摘を受けたのは、アメリカではなくおそらく日本である。
ML2のプロトタイプをもって来日した時に、
オーディオ関係者から、ごく些細な使い勝手の欠点を指摘されたと考えて間違いない。

だとすると自分でJC2を使っていた経験からも、些細な欠点がどういうことなのかはっきりする。
確かにそれは使い勝手の欠点であり、それをごく些細な、と受けとるか、それともけっこう重要なこととするのか、
それは使い手によって違ってもこよう。

けれどML6の使い勝手の欠点はそうではない。
はっきりと、すべての人にとって使い勝手の最悪なコントロールアンプ(プリアンプと呼ぶべきなのだが)である。

最悪な使い勝手は写真をみてもわかる。
けれど実際に使ってみると、想像以上に使い勝手の悪さ(ひどさ)がある。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・その5)

マークレビンソンのコントロールアンプにはML6というモデルがあった。
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」にはML6ALというモデルが登場している。
     *
 左右独立、それも電源からボリュウムコントロールまでという徹底ぶりだ。その勇気と潔癖症には脱帽するし、こういう製品が一つぐらいはあってもよいと思う。しかし、これはもう一般商品とはいえないし、プロ機器としては、さらに悪い。本当は業務用こそ、誰が使っても間違いなく、容易に使えて、こわれないものであるべきなのだ。この製品の登場は業務用機器のメーカーではないことを立証したようだ。
     *
菅野先生はこう書かれている。
この意見には完全に同意する。
ML6Aは、もっとも魅力を感じない。
だがML6Aの前身モデルであるML6になると、私の感じ方はまるで違う。

ML6はシルバーパネル、ML6はブラックパネルであり、
ML6はJC2(ML1)のモノーラル化、ML6AはML7のモノーラル化であり、
モノーラルにすることのメリットをより徹底的に追求しているのはML6Aである。

それでもML6Aのデザインには、色気を感じない。
ML6には、なにかを感じていた。

ML6とML6Aのデザインの違いは、フロントパネルの色だけではない。
レベルコントロールのツマミの周囲にML6はdB表示があった。
ML6Aは何も表示されていない。

フロントパネル中央にロゴがある。その両脇にML6はLEMOコネクターが配されていた。
ML6Aではネジになっている。
LEMOコネクターは金、ネジは銀。

言葉で違いを書けばこれだけなのだが、印象はまるで違う。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その18)

コマをまわすときのことを考えてみる。
小さなコマであれば中心の軸を指でまわす。
これでけっこうまわる。

けれど大きなコマ(重量のあるコマ)になってくると、
中心の軸を指でまわすことは大変になってくる。
だからコマの周囲にヒモを巻きつけて、
そのヒモを思いきり引っ張ることでコマに回転を与える。

ターンテーブルプラッターを指で廻そうとする時、どこに指を置くか。
ほとんどの人が外周のところに指をおいて廻す。
わざわざスピンドル近くに指を置いて廻そうとはしない。

同じ回転数で廻そうとしたら、外周よりも内周のほうが指の移動距離は短くなる。
つまり外周であれば内周よりも速く廻さなければならない。
それでも外周を選ぶ。

楽に廻せるからである。

ダイレクトドライヴは理想の方式のように思える。
モーターの回転をそのままターンテーブルプラッターにつたえて廻す。
けれどモーターのシャフトはターンテーブルプラッターの中心でもある。

つまり、指で廻す時にもっとも力を必要とする最内周にあたる。

Date: 1月 10th, 2015
Cate: 音の器

音の器(その1)

ステレオサウンドのサイトで検索してみると、
名器と名機、どちらも使われているし,
蓄音器と蓄音機もどちらも使われているのがわかる。

明確な使い分けがなされているようにはみえない。

名機、蓄音機を使っているということは、
ステレオサウンドのサイトの編集者は、
オーディオ機器(蓄音器を含めて)を、器としては考えていない(捉えていない)ともいえる。

つまり音を鳴らす機械としての考え方・捉え方なのだろう。
だから名機、蓄音機を使う。

ということはオーディオを音の器として考えていない(捉えていない)ということでもある。

これは些細なことなのだろうか。

Date: 1月 10th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その13)

針圧計に精度の高さを求めるのは、何かを決定したい行為なのかもしれない。
いい感じで鳴るポイントを見つけ出した。
それを針圧で記憶する。
次にそのカートリッジを使う時にも、その針圧にぴったりと合わせる。

アナログプレーヤーのアクセサリーは昔からいろんな種類がある。
そのひとつにディスクスタビライザーがある。

スタビライザーはレコードのレーベル部分にのせる、なんらかの素材による重しである。
昔は素材も重量もいろんな種類があった。
重量によるモノ以外にコレットチャック式のモノもあったし、吸着式のモノもあった。
プレーヤーによってはスタビライザーが標準装備のモノもいくつかあった。

昔からアナログディスク再生に熱心な人であるなら、
スタビライザーをひとつは持っていると思う。
そんなに高価なアクセサリーでもなかったし、レーベルのところにのせるだけだから、
結果が好ましくなければ使わなければ、それでいい。

つまり元の状態に簡単に戻すことができる。
手軽に試させて、音の変化も確実にある(よいと感じるかそうでないかは別として)。

このスタビライザーに関しても、決定しようとする人がいるように思える。
あるレコードで、スタビライザーのあるなしの音を比較試聴する。
どちらがよいかを判断して、スタビライザーありでいくのか、なしでいくのかを決定する。

けれど、これも決定するようなことだろうか。
スタビライザーありの音、なしの音を、いろんなレコードで聴いておく。
いい悪いを判断するためではなく、自分の中に判断材料・基準をつくっておくためにも聴いておく。

そうすれば、少なくとも自分のシステムにおいて、
このレコードのときにはあったほうが好ましく聴ける、
別のレコードではないほうが好ましい、という判断はすぐにつくようになる。

ならばスタビライザーをのせたほうがいいと判断したらのせればいいだけの話で、
どのレコードに関してものせるかのせないかを決定するようなことではない。

Date: 1月 10th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その12)

アナログディスク再生に関すること全般にいえるのは、柔軟性が必要だということ。
針圧の調整にしても、新品で買ってきたカートリッジをとりつけて音を聴く。
最初は私だって標準針圧にあわせて聴く。
聴いてすぐに針圧を調整したりはしない。

レコードを何枚か、その状態で聴いてみる。
針圧を下限・上限まで変化させてみるのは早くてもその後であり、
新品のカートリッジを聴きはじめた、その日のうちに細かな調整はしない。

しばらく使っている(その音を聴いている)と、
なんとなく針圧を含めた調整をしたほうがいいかな、と思える時がある。
そういう時に、こまかな調整をしっかりとやる。

それでいい感じで鳴ってくれる針圧があったとする。
それをメモするようなことは、前にも書いたように私はしない。

その数値をどこまでも正確に計り、次にそのカートリッジを取り付けた時に正確に同じ数値にしたところで、
同じ音には鳴らない。
さまざまな要素によって、音は微妙に変化しているから、
それでもいい感じで鳴ってくれるポイントをまた出そうとしたら、
以前の数値にはもうこだわらないことである。

音を聴いて、どうしたらいいのか、瞬時に判断するものである。
そんな判断は、すぐには身につかない。
だから気に入ったカートリッジが見つかったら、あれこれいろんな調整を辛抱強くやってみるしかない。
そうやって感覚量を身につけるしかない。

オーディオのプロフェッショナルではないのだから、自分の好きなカートリッジに関して、
そういう感覚を身につければいい。
それは針圧計が示す数値とは関係のないものだ。

Date: 1月 8th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その11)

日本人はマメだ、といわれる。
カートリッジのことに関しても、レコードごとにカートリッジを交換することもある、
そういう話をきくとマメだな、と思う。

私はすでに書いているように交換することはしなかった。
結局EMTのTSD15でずっと聴いていた。

ときどきは、あのカートリッジでこのレコードをかけたら……、と想像はするけれど、
想像だけでもいいや、というところがある。

こんな私は、カートリッジをマメに交換しているひとからすれば、
マメじゃないマニア、ということになる。

けれど、気に入ったカートリッジを最適に調整することに関しては労を惜しまない。
針圧調整をはじめとして、細かな調整をきっちりとやっていく。
その意味では、マメといえる。

そういうマメさからすれば、カートリッジを頻繁に交換している人に対して、
そこまで細かく調整しているのですか、と問いたくなる。

こんなことを書いている私だが、ここまで調整するようになったのは、
ステレオサウンドの試聴室で井上先生に鍛えてもらったおかげである。
この経験がなければ、徹底的に調整をつめていくことは、
このへんだろう、このくらいやればいいだろう、と、自分の中だけの基準でやっていただけかもしれない。

カートリッジ、アナログプレーヤーの調整は、そんなレベルではすまない。
しかも、そこまでくると感覚量こそが大事になってくる。
針圧ひとつとっても、針圧計が示す数字にとらわれたり、頼ったりしていては、まだまだだといえる。

Date: 1月 8th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その10)

アナログディスク全盛時代、カートリッジの平均所有本数は日本人がいちばん多い、ということがいわれていた。
アメリカ、ヨーロッパにもオーディオマニアは大勢いる。
けれど彼らの多くは、頻繁にカートリッジを交換するようなことはしない。
そんなこともいわれていた。

ほんとうだったのどうかははっきりとしない。
でも、SME式のプラグインコネクターが普及していたのは、
というよりもほぼ標準規格といってもいいほどなのは日本だけで、
そのことも影響して、アメリカ、ヨーロッパではレコードごとのカートリッジ交換は一般的ではなかった。
こんな話もきいている。

たしかにそうなのかもしれない。
マークレビンソンのLNP2は、入出力端子にスイスのLEMO社製のコネクターに変更したさいに、
型番の末尾にLがつくようになった。
これは日本だけのことで、他の国で売られていたLNP2(他のアンプも含めて)には、
LEMOコネクターになってからも、Lはついていなかった。

並行輸入対策としての型番末尾のLであった。
いわば日本仕様であり、日本仕様はこれだけではなかった。

初期のLNP2はPHONO入力は一系統のみだった。
それが途中からPHONO1、PHONO2となった。
これも日本のみである。

輸入元のRFエンタープライゼスの要望で、日本にはアナログプレーヤーを複数台使っている人、
ダブルトーンアームの人が少なくないから──、ということだったらしい。

私としては微小入力のPHONOに、
接点がひとつよけいに透ることになるのだから、PHONOは一系統のほうがいいのに……、と思うのだが、
あのころの日本で、LNP2を買える層はそうではない人が多かったということになる。

Date: 1月 8th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・その4)

マーク・レヴィンソンがいたころのマークレビンソンのコントロールアンプのデザインが、
トラックやブルドーザーのように見えない、という方も少なくないだろう。

私もトラックやブルドーザーとは見えなかった。
念のため何度も書くが、LNP2のデザインは悪くはない。
けれど優れたデザインとは私は思っていないし、美しいデザインとも思っていない。

なぜ、菅野先生は、そんなふうに表現されたのだろうか。
ステレオサウンドにいたころ、直接菅野先生にたずねてれば……、と思いもするが、
たずねてしまうと、自分でなぜなのか、と考えることを放棄してしまうことにもある。

なぜなのかを四六時中考えているわけではないが、
1981年から、これまでずっと頭のどこかには、このことがあった。

「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」で、
菅野先生はマークレビンソンのパワーアンプについては、どう書かれているか。
ML2、ML3については、こう書かれている。
     *
Aクラス動作で25Wのモノーラルアンプがこの大きさ! いかにもMLらしい大胆な製品である。やりたいこと、やるべきことをやるとこうなるのだ、といわんばかりの主張の強さがいい。そして2Ω負荷100Wを保証していることからしても、アンプとしての自信の程が推察できるというものだ。パネルはML3に準じるが、ヒートシンクが非常に大きく、上からの星形のパターンが目をひく。2台BTL接続端子がついている。(ML2)

マーク・レビンソンのパワーアンプらしい風格をもった製品。200W+200W(8Ω)のステレオアンプで、見るからに堂々たる体躯のシンメトリック・コンストラクション。前面パネルにはパワースイッチだけがセンターに、その真上に、あのモダーンなロゴがプリントされている。両サイドのハンドルを含め、シンプルながらきわめてバランスのよい美しさである。これぞ、パワーアンプという雰囲気だ。(ML3)
     *
ML2、ML3、どちらに関してもパワーアンプのデザインとして高く評価されている。
ML7、LNP2、ML2、ML3、いずれもマーク・レヴィンソンのテイストを感じさせるアピアランスをもっている。
にも関わらず、コントロールアンプのデザインとパワーアンプのデザインの評価は、これだけ違う。