シンプルであるために(ミニマルなシステム・その5)
ワディアのPower DACの続報、そして製品化を待っていた。
それこそ首を長くして待っていた。
けれどまったく音沙汰無しだった。
ふたたびPower DACの名をステレオサウンドで目にしたのは、133号である。
100号1991年9月に出ている、133号は1999年12月に出ている。
八年間である。
それでもワディアはPower DACを製品として出してきた。
1991年のPower DACと1999年のPower DACはずいぶんと違うところがある。
まず筐体が大きく違っている。
1999年Power DACは三つの筐体から構成されるシステムである。
Wadia 390という型番のコントローラー、Wadia 790という型番のPower DACで、
アンプ部(D/Aコンバーター)は、モノーラルなのは同じだが、
円筒型の筐体から、マッシヴな金属ブロックのような形状となっている。
外形寸法はW44.7×H61.0×D44.7cmで、重量は116kg。
こうなるとスピーカーの脇に設置することが難しくなるほどである。
実物をみることはなかったけれど、ステレオサウンドに掲載されている写真から、その威容さは充分伝わってくる。
価格はWadia 390とWadia 790のセットで、11900000円だった。
桁を間違っているわけではない。D/Aコンバーター機能をもっているパワーアンプ、
パワーアンプ機能をもっているD/Aコンバーターとはいえ、一千万円をこえる価格は、もう溜息も出なかった。
1991年のプロトタイプは価格未定だったが、
外観、内部の写真、規模から判断するに、一千万円をこえるモノではなかった。
プロトタイプのまま市販されたとしたら四百万円から五百万円ぐらいでおさまっていた、と思う。