シンプルであるために(ミニマルなシステム・その4)
ワディアのPower DACの名がステレオサウンドの誌面にはじめてあらわれたのは、99号。
三浦孝仁氏がワディアの訪問記事の中に登場している。
そして100号でのエキサイティングコンポーネント(新製品紹介のページ)で、Wadia 5として、
4ページにわたり紹介されている。
ただしこの時点ではプロトタイプとしてである。
モノーラル構成で、筐体は高さ77cm、直径約30cmの円筒形(完全な円筒形ではない)。
重量は約50kg。出力は200W。
プロトタイプのため価格は未定となっていた。
電源スイッチは底面にある。
それ以外のスイッチは写真をみるかぎり本体にはついていない。
すべての機能は附属のリモコンで行うようになっている。
つまりCDトランスポートを用意すれば、スピーカーをドライヴできる。
こういう性質のアンプ(D/Aコンバーターでもある)だけに、
実際の設置はスピーカーの脇に目立たぬように、ということになる。
そしてCDトランスポートとPower DACを結ぶのは、
当時ワディアが提唱していたAT&TのSTリンクの光ファイバーである。
Power DACは小さいとはいえない。
むしろかなり大型ではある。
けれど、1991年の時点で、これほどミニマルなシステムを、
あるレベル以上のクォリティをもって構成することは無理といえた。
エキサイティングコンポーネント──、
私にとってワディアのPower DACという新製品は、まさしくエキサイティングだった。
すごいモノがあらわれた、と昂奮した。