Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 11月 18th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その1)

私が初めて聴いたジャーマン・フィジックスのスピーカーは、
これまで書いているようにUnicornである。

タイムロードがジャーマン・フィジックスを扱うようになったころからラインナップにあった、
ときいている。
けれどDDD型ユニットだけでは低音の十全な再生は望めない、
それで輸入は見送られた、ときいている。

日本に入ってきたジャーマン・フィジックスのスピーカーシステムは、
現在入ってきているHRS130と同じ構成のモデルだった。

これを聴かれた菅野先生は、DDD型ユニットの可能性を高く評価され、
Unicornというモデルが本国にあることを知り、輸入をすすめられたことで、
Unicornの取扱いが始まった。

DDD型ユニット単体のUnicorn、
このスピーカーシステムの音を聴けば、DDD型ユニットの可能性を、さらに知ることになる。

そうなるとDDD型ユニットを単体で手に入れ、自分でシステムを構築したら──、
そんなことを夢見ることになる。

菅野先生もそうだったのだろう。
菅野先生は、当時のタイムロードの社長の黒木弘子さんに、
DDD型ユニット単体というか、独立した製品としての開発を話された。

タイムロードの黒木さんは、ジャーマン・フィジックスにかけ合う。
そうやって誕生したのが、Troubadour 40である。

菅野先生はいわれた、
黒木さんがTroubadour 40の、いわば生みの親で、
自分が育ての親だ、と。

黒木さんの情熱がなければTroubadour 40は登場してこなかったし、
菅野先生の育ての親ということは、試作モデルをかなり試聴されたからなのだろう。

Date: 11月 16th, 2022
Cate: German Physiks

Troubadour 40とウーファーのこと(その1)

ジャーマン・フィジックスのTroubadour 40は、
いわばスピーカーユニット単体といえる存在ゆえに、
なんらかのウーファーを用意する必要がある。

Troubadour 40を単体で鳴らしたこともある。
Troubadour 40に見合うウーファーとはいえない、
たまたま知人宅にころがっていたといえる25cm口径のユニット、
バスレフ型のエンクロージュアを足して鳴らした音も聴いている。

これでも意外なほど鳴ってくれることは確認している。
それでもTroubadour 40に見合うだけのウーファー(低音)を用意する必要がある。

菅野先生はJBLの2205をお使いだった。
Troubadour 40を持っていた知人は、JBLの1500ALを購入した。
けれどエンクロージュアを用意する前に、Troubadour 40も1500ALも手放している。

私も、そのころは1500ALは最良の選択の一つと考えていた。
このころ、1500ALは販売されていた。
1500ALは1501ALとなったが、もうこのウーファーだけの販売は行われていない。

購入できるできないは別として、
どういう低音部がいいのだろうか、とあれこれ考える。

別項「2022年ショウ雑感」で、
Brodmann Acousticsのスピーカーは聴けなかったことを、あえて書いたのは、
Troubadour 40のことがあったためでもある。

現実的に、そういう使い方はしないのだろうが、
Troubadour 40とBrodmann Acousticsのスピーカーの低音の組合せ、
かなりうまくいきそうな予感だけはある。

そんなことを想像していたから、Brodmann Acousticsのスピーカーを、
今一度聴いてみたかったわけだ。

Date: 10月 30th, 2022
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャースPM510・その6)

JBLの4343とロジャースのPM510。
同時代のスピーカーシステムであっても、その音はずいぶん違うし、
音楽の聴き方も違ってくるといえる。

4343とPM510は、瀬川先生が愛されたスピーカーだ。
4341とLS5/1Aとしてもいいのだが、
私にとっては4343とPM510である。

別項「ステレオサウンドについて(その88)」でも引用している、
瀬川先生の未発表原稿の冒頭に、こう書いてある。
     *
 いまもしも、目前にJBLの4343Bと、ロジャースのPM510とを並べられて、どちらか一方だけ選べ、とせまられたら、いったいどうするだろうか。もちろん、そのどちらも持っていないと仮定して。
 少なくとも私だったら、大いに迷う。いや、それが高価なスピーカーだからという意味ではない。たとえばJBLなら4301Bでも、そしてロジャースならLS3/5Aであっても、そのどちらか一方をあきらめるなど、とうてい思いもつかないことだ。それは、この二つのスピーカーの鳴らす音楽の世界が、非常に対照的であり、しかも、そのどちらの世界もが、私にとって、欠くことのできないものであるからだ。
     *
私も4343とPM510に憧れてきた。
PM510を選んだ。

私も大いに迷った。
PM510にしたのは、価格のことも大きく関係しているし、
このころすでにステレオサウンドで働くようになっていたから、
JBLは試聴室で日常的に聴ける、ということももちろん関係している。

だから自分でも、なぜ、この二つのスピーカーに対して迷うのか、と考える。
まだはっきりとした結論は出ていないが、それでもこうおもっている。

冒険(4343)と旅行(PM510)なんだ、と。
このことが、JBLで音楽を聴いている人は、ロマンティストなんだ、ということにもつながっている。

Date: 10月 22nd, 2022
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その15)

じつを言うと、
GASのTHALIAをSAEのMark 2500と組み合わせるコントロールアンプ候補としていた。

別項でMark 2500を手に入れてから、
コントロールアンプに何を選ぶかを書いているが、
理想はマークレビンソンのLNP2であっても、いまではおいそれと手が出せない。

では現実的なところで何を選ぶのか。そのことをいろいろ書いていたのだが、
GASのTHALIAも候補の一つというよりも、けっこう有力な候補だった。

当時、THALIAは20万円前後だった。
為替相場や、THALIA IIの登場によって、多少価格は変動したが、そのくらいだった。

Mark 2500は、そんなTHALIAの三倍ちょっとの価格だった。
価格的には不釣合いだし、 GASのコントロールアンプの中から選ぶのであれば、
Mark 2500とペアにふさわしいのはTHAEDRAということになる。

THALIAの中古は、私は見たことがない。
ヤフオク!で探してもみたが、いまも出品されている個体が昨年からあった。

でも、このTHALIAを手に入れたい、とは思わなかった。
結果として、THAEDRAがヤフオク!で、かなり安価で入手できたので、
THALIAを探すのはやめてしまったが、
それでもMark 2500とTHALIAの組合せの音は、
ちょっと聴いてみたいという気持はまったく薄らいでいない。

Date: 10月 21st, 2022
Cate: JBL, Studio Monitor

JBL 4320(その14)

その13)で、GASのコントロールアンプTHALIAについて、
ちょっとだけ触れている。

THALIAはGASのコントロールアンプ三兄弟の末っ子である。
THALIAだけ薄型のシャーシーを持つ。
それでいて機能はトーンコントロールも持っている。

価格的にはTHAEDRAの半額以下だった。
THAEDRAはGASのフラッグシップモデルだっただけに、
物量も投入されたつくりなのに対し、THALIAはコスト的な制約もあってだろう、
肩の力の抜けたようなところをもっていたように感じている。

三兄弟の真ん中THOEBEは、それほど聴く機会がなかったこともあって、
なんとなく印象が薄い。
できの悪さを感じるわけではないが、
立派な長兄(THAEDRA)、より自由な三男(THALIA)のあいだにはさまれて、
なんとなく目立たないように感じていた。

いまコンディションの優れた、こられ三機種が揃ったとして、
同じ条件でじっくり聴いてみると、印象も変ってくるのかもしれないが、
それでもそれほど変らないだろうな、とも思う。

書きたいのはTHALIAの良さである。
THALIAはTHAEDRAよりもみずみずしい良さをもつ。

立派さはTHAEDRAには及ばないけれど、
THAEDRAと肩を並べようとはしていない、
その無理のなさが、THALIAの音の特質に活きているのだろう。

内部をみてもTHALIAは、はっきりと上二機種とはつくりが違う。

そういう性格のTHALIAだから、JBLの4320を鳴らすのに使いたい。

Date: 10月 2nd, 2022
Cate: German Physiks, オーディオ評論, 新製品

ジャーマン・フィジックス HRS130(とオーディオ雑誌・その3)

facebookでGerman Physiks(ジャーマン・フィジックス)をフォローしている。
9月17日のGerman Physiksの投稿は、
オーディオアクセサリー 186号で取り上げられたことについて、であった。

そこに石原俊氏の文章が、英訳されて一部引用されていた。
そして、最後にはこうある。

Our thanks to Mr. Ishihara and the Audio Accessory editorial staff and Mr. Iori of Taktstock, our Japanese distributor, for arranging the review.

これを読んでいたから、オーディオアクセサリーのHRS130の記事が楽しみだった。
オーディオアクセサリー 186号が発売になって、
一ヵ月足らずでのGerman Physiksの、この投稿である。

ステレオサウンド 224号が発売になって、一ヵ月。
そろそろGerman Physiksの投稿で、
ステレオサウンドのこと、山之内正氏のことが取り上げられるのか。

Our thanks to Mr. Yamanouchi and the Stereo Sound editorial staff and Mr. Iori of Taktstock, our Japanese distributor, for arranging the review.
という投稿がなされるのだろうか。

Date: 10月 1st, 2022
Cate: German Physiks, オーディオ評論, 新製品

ジャーマン・フィジックス HRS130(とオーディオ雑誌・その2)

オーディオアクセサリーの石原俊氏の文章、
ステレオサウンドの山之内正氏の文章、
この二つのHRS130についての文章を読んだ後に、
ステレオサウンド編集長の染谷一氏の編集後記を読むと、あれこれ妄想してしまう。

染谷編集長は、試聴記について書かれている。
そこには、
《自分の好みをただ押し付けただけの感想の羅列を試聴記として読まされると、いったい何の目的を持って誰のために書かれた文章なのかと理解に苦しむ》
とある。

そして最後には、
《プロ意識が欠けたまま書かれた試聴記には何の価値もないと思う。自戒の念を強く込めて。》
と結ばれている。

最初、読んだ時、どういう心境の変化なのだろう──、と思った。
それにしても、ただ試聴記とあるだけで、
この試聴記が、どの試聴記を指しているのかは、ひどく曖昧というか、
どうとでも読めるような書き方だ。

インターネットにあふれている個人の試聴記なのか、
それともステレオサウンド以外のオーディオ雑誌の試聴記なのか、
《自戒の念を強く込めて》とあるのだから、
ステレオサウンドの試聴記も含めてのことなのか。

オーディオアクセサリー 186号の発売日と、
この編集後記が書かれたであろう時期とを考えると、
オーディオアクセサリーを読んでの編集後記ではない、と思われる。

にしても、HRS130についての石原俊氏の文章と山之内正氏の文章を読むと、
こういうことを書きたくなるのかもしれない──、というのは私の妄想でしかない。

Date: 10月 1st, 2022
Cate: German Physiks, オーディオ評論, 新製品

ジャーマン・フィジックス HRS130(とオーディオ雑誌・その1)

おそらく今日からなのだろうが、
ステレオサウンド 224号がKindle Unlimitedで読めるようになった。

224号は、少し楽しみにしていた記事がある。
おそらく224号で取り上げられているであろう、
ジャーマン・フィジックスのHRS130の新製品紹介の記事である。

8月発売のオーディオアクセサリー 186号でもHRS130は取り上げられている。
9月発売のステレオサウンド 224号でも取り上げられていて、
オーディオアクセサリーでは石原俊氏、ステレオサウンドでは山之内正氏、
オーディオアクセサリーはカラーで6ページ、ステレオサウンドはモノクロ2ページである。

カラーであるとかモノクロであるとか、
6ページなのか2ページなのかよりも、そこに書かれている内容である。
内容が薄ければカラー6ページであっても、モノクロ2ページの記事に劣ることだってある。

けれど、HRS130に関しては、オーディオアクセサリーの4ページである。
ステレオサウンドの山之内正氏の文章よりも、
書き手(石原俊氏)の熱っぽさが伝わってくるからだ。

石原俊氏は以前はステレオサウンドに書かれていた。
いつのころからか、さっぱり書かれなくなっていた。
そしていつのまにかオーディオアクセサリーに登場されるようになった。

山之内正氏はオーディオアクセサリーに書かれていた、いまも書かれている。
二年ほど前からステレオサウンドに登場されるようになった。
いまではメイン執筆者の一人である。

その二人がHRS130の記事を書いている。
私は、石原俊氏の文章(オーディオアクセサリーの記事)を読んでほしい、と思っている。

Date: 9月 12th, 2022
Cate: German Physiks, 新製品

ジャーマン・フィジックス HRS130(とサウンドクリエイト・その4)

サウンドクリエイトは、銀座二丁目の古いビルの二階と五階にある。
このビルは、昭和のビルそのものである。そうとうに古い。

その古いビルとサウンドクリエイトの雰囲気は、
いい感じでマッチしているようにも思う。

ジャーマン・フィジックスは五階にあった。
ソファにすわると、男性のスタッフの方がiPadを渡してくれる。
iPadで選曲するので、CDを持参することなく、聴きたい曲が聴けた。

ほんとうに便利な時代になった、と思う。

連れの彼が一曲目を選び、次に私が、三曲目はまた彼が──、
そんな感じで、約一時間、ジャーマン・フィジックスの音を聴いていた。

私が最初に選んだのは、
ケント・ナガノと児玉麻里によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第一番だ。
何度もここで書いているように、
この演奏(録音)は、菅野先生のリスニングルームで聴いている。
菅野先生のリスニングルームで聴いた最後のディスクでもある。

そして、もっとも驚いた演奏(録音)でもある。

その次に選んだのは、サー・コリン・デイヴィスのベートーヴェンの序曲集からコリオラン。
コリン・デイヴィスのコリオランは、エソテリックのSACD第一弾で、
発売になった年のインターナショナルオーディオショウでは、いくつかのブースで鳴っていた。

この演奏(録音)も、菅野先生が高く評価されていたし、
菅野先生のところで何度も聴いている。

ひさしぶりに聴けるジャーマン・フィジックスでは、
この二枚のディスクは外せない。

Date: 9月 12th, 2022
Cate: German Physiks, 新製品

ジャーマン・フィジックス HRS130(とサウンドクリエイト・その3)

私がジャーマン・フィジックスの製品のなかで、
ほんとうに欲しいと思っているのは、Unicornである。

いまはUnicorn IIになっているが、私は初代のUnicornに魅力を強く感じている。
Unicornといっても、若いオーディオマニアの人たちは知らない存在になっているかもしれない。

Unicornは、ジャーマン・フィジックス独自のDDD型ユニットを一本だけ搭載し、
独自のエンクロージュアとの組合せで、フルレンジ型としてまとめたもの。
もちろん低音は、それほど低いところまで出せるわけではない。

制約もあるスピーカーシステムではあるが、
Unicornの魅力について語り出したら止らなくなるので、
ここでは省くことにする。

私がタイムロードが取り扱っていた時代に聴いたのは、
Unicornの他には、フラッグシップモデルのGaudí、PQS402、Troubadour 40と80、
それに今回聴いたHRS130と同型のモデルを聴いている。

インターナショナルオーディオショウでのタイムロードのブース、
タイムロードの試聴室、とあるオーディオ店、知人のリスニングルーム、
そして菅野先生のリスニングルームにおいて、聴いている。

いうまでもなく、このすべてはチタン・ダイアフラム採用のDDD型ユニットである。
今回のHRS130はカーボンを採用している。

それにサウンドクリエイトでのラインナップは、聴いたことのない機種が含まれていた。
サウンドクリエイトでの試聴も初めてである。

なので、それまで聴いてきたジャーマン・フィジックスの音と比較して、
こまかいことを語ろうとは、まったく思っていない。

書きたいことは、サウンドクリエイトで聴けてよかった、ということ。
そしていちばん書いておきたいのは、MQAで聴いてみたかった、ということ。
それもできればメリディアンのULTRA DACを使って、である。

Date: 9月 10th, 2022
Cate: German Physiks, 新製品

ジャーマン・フィジックス HRS130(とサウンドクリエイト・その2)

今も昔も、行きつけのオーディオ店がない。
行きつけのオーディオ店があれば、そこで聴きたいモデルが聴けるとなれば、
私でもすぐに聴きに行くだろうが、くり返すけど、行きつけのオーディオ店がない。

そんな私は誰かに誘われでもしないかぎり、
オーディオ店で何か試聴することはない。

今回は違った。
ジャーマン・フィジックスの輸入元であるタクトシュトックが、
今秋開催のインターナショナルオーディオショウに出展するのであれば、
そこで聴ける機会はあるけれど、タクトシュトックは出展しない。

となると親しい誰かが購入するか、
オーディオ店で試聴するぐらいしか、いまのところない。

サウンドクリエイトには、試聴の問合せをすることなく行った。
にも関わらずとても丁寧な対応をしてくださり、
15時から試聴の予約が入っているけれども、それまでなら大丈夫です、となった。

これがトロフィーオーディオ店だったら、どんな扱いをされたか。
今回は私一人ではなく、二人だった。

連れの彼も、サウンドクリエイトは初めてだった。
それに二人とも、高価なオーディオ機器を買いに来たという身なりではなかったし、
試聴だけが目的だったことは、サウンドクリエイトのスタッフの方もわかっておられただろう。

トロフィーオーディオ店だったら──、
客扱いされることはないと思うし、
そのことを批判したいわけてはない。

商売をやっているのだから、一文の得にもならない者の相手をするのは、
時間、労力の無駄。そういう考えを否定はしない。

でも、そういうオーディオ店ばかりではオーディオの世界は拡がっていくことはない。
トロフィーオーディオ店(屋)で買ってこそ、という人もいるのだから、
トロフィーオーディオ屋がなくなければいいとも思っていない。

今回、ジャーマン・フィジックスのスピーカーをサウンドクリエイトで聴けたことは、
よかった、と素直にいえる。

Date: 9月 7th, 2022
Cate: German Physiks, 新製品

ジャーマン・フィジックス HRS130(とサウンドクリエイト・その1)

7月10日から日本での発売が開始になったジャーマン・フィジックスのHRS130。

タイムロードが扱っていた頃は、よかった。
2006年に、突然輸入元がゼファンになった。
それからは、ひどかった。

ジャーマン・フィジックスの製品、その音がひどかったのではない。
ゼファンによる扱いがひどかった。
しかもわずかな期間で取り扱いをやめてしまっている。

それからは、ジャーマン・フィジックスの日本での取り扱い元はなかった。
かなり長い間、そういう状態だった。
ジャーマン・フィジックスの不在の時期は、私にとっては実際の年月よりも長く感じられた。

今年6月に、タクトシュトックが取り扱うニュースが届いた。

まだいまのところ取り扱い製品は、HRS130だけである。
それでも、いい。とにかくもう一度ジャーマン・フィジックスが聴ける。

とはいえ、これまで聴く機会はなかった。
今日、聴いてきた。

場所は、サウンドクリエイトである。
サウンドクリエイトは、銀座二丁目にある。

私は、以前から銀座にきちんとしたオーディオ店があるべきだ、と思っていた。
親しい人とも、そんなことを何度か話したことがある。

サウンドクリエイトは、以前の場所のときに、ほんのちょっとだけのぞいたことがあるくらい。
ほんとうにわずかな時間だったから、今回が初めて、といっていい。

どういうオーディオ店なのかは、なんとなくは知っていたけれど、
それはなんとなくでしかなかったことを、実際に行って感じていた。

HRS130は今日までの展示・試聴だった。
もしこれが、トロフィーオーディオ店と呼ぶしかない、そんな店だったら、
私は行かなかった。

今回は、ジャーマン・フィジックスのスピーカーということ、
そしてサウンドクリエイトということが重なって、
こういうことにはやや重い腰の私でも、行って聴いてこよう、になる。

Date: 6月 25th, 2022
Cate: 4343, JBL, ジャーナリズム

40年目の4343(オーディオの殿堂・その6)

将棋は駒の動かし方をかろうじて知っているだけなので、
別項で触れている「3月のライオン」を読むまでは、
対局の後に感想戦があることも知らなかった。

対局に勝った(負けた)だけでなく、その後の感想戦。
本づくりにおいて感想戦的なことはあっただろうか……、とその時おもっていた。

私がいたころは、そういうことはなかった。
一冊のステレオサウンドの編集を終えて、見本誌があがってくる。
それを手にして、編集部全員で感想戦的なことをやる──、
そういうことはなかった。

いまの編集部がやっているのかどうかは知らないけれど、
できあがった書店に並ぶステレオサウンドをみる限り、やっているようには思えない。

やらなければならないことなのか。
自分が担当した記事について自分の意見をいう。
他の編集者の意見、感想をきく。

すべての記事に対して、感想戦的なことをやっていく。
必要なことのようにおもう。

Date: 6月 7th, 2022
Cate: 4343, JBL, ジャーナリズム

40年目の4343(オーディオの殿堂・その5)

黒田先生が「音楽への礼状」でカザルスについて書かれている。
     *
大切なことを大切だといいきり、しかも、その大切なことをいつまでも大切にしつづける、という、ごくあたりまえの、しかし、現実には実行が容易でないことを、身をもっておこないつづけて一生を終えられたあなたのきかせて下さる音楽に、ぼくは、とてもたくさんのことを学んでまいりました。
     *
大切なことを大切だといいきる、こと。
どれだけの人が実行しているのだろうか。

大切だ、と口にするのは誰にでもできる。
でも、この人は、それをほんとうに大切にしているのだろうか──、
そう疑いたくなることもないわけではない。

ないわけではない──、と書いたけれども、そうでもないと感じてもいる。

大切なことに新しいも古いもない。
そんなことさえ、いまでは忘れられているような気さえする。

だから、それを読み手に思い出させるというのが、
ステレオサウンド 223号の「オーディオの殿堂」ではないのだろうか。

私は「オーディオの殿堂」に対して、どちらかといえば否定的な考えを持っているが゛
それでも肯定的に捉えようとするならば、
大切なことを再確認するための企画だともいえる。

けれど、実際はどうなのだろうか。
私は、この項で書いているように、
三浦孝仁氏の4343についての文章だけを立読みしているだけだから、
他の人の文章については、なにもいえないのだが、
少なくとも三浦孝仁氏の4343の文章は、そうとは思えなかったし、
4343は殿堂入りしているとはいえ、ステレオサウンド編集部には、
そういう意識はないんだな、ともいえる人選である。

大切なことを大切だといいきることのできない「オーディオの殿堂」は、
なんなのだろうか。

ステレオサウンド編集部に望むのは、
自らの企画を検証する記事である。

Date: 6月 4th, 2022
Cate: 4343, JBL, ジャーナリズム

40年目の4343(オーディオの殿堂・その4)

ステレオサウンド 223号「オーディオの殿堂」の4343の件に関して、
三浦孝仁氏を責めようとは思っていない。

三浦孝仁氏の4343の文章は、
三浦孝仁氏ならば、こんなことを書くだろうという予想通りのものだった。
それはいい悪いということではなく、
ステレオサウンドの編集部も予想していたことであろうし、
その予想通りの出来(どう評価するかは個人の自由)なのだからだ。

なので責めたいのは、なぜ三浦孝仁氏にしたのか、である。
消去的選択で三浦孝仁氏になったわけではないはずだ。
その1)で書いているように、黛 健司氏がいる。

4341、4343と鳴らしてきた黛 健司氏がいるにも関わらず、
あえて三浦孝仁氏にしなければならなかったのか、その理由がわからない。

黛 健司氏よりも三浦孝仁氏のほうが、
4343についてより面白い、よりよい原稿が書けるという判断だったのか。
それはおかしい、というか間違っている、といいたい。

それとも「名作4343を現代に甦らせる」で、
あの無様な、そして無惨な姿に変り果てた4343もどきの試聴記を書いた人だからなのか。

私は、223号の4343のところだけを立読みしただけなのだが、
きちんと買って読んだ友人によれば、「オーディオの殿堂」での黛 健司氏の文章は、
よかった、とのこと。

黒田先生が亡くなられた時も、そうだった。
なぜ、あの時、黛 健司氏にも追悼文を依頼しなかったのか。

4343のことだけでも、おもうところはある。
おそらく223号をきちんと読めば、もっとおもうところが多々あるだろう。

facebookにコメントをくれた方は、
223号を買ったけれど、これを餞別(香典代り)にして、
終りにします、ということだった。

(その3)で、和田博巳氏のことに触れた。
facebookへのコメント、メールが数人の方からあった。
編集後記に、体調を崩されている、とあるとのこと。