Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 11月 29th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その9)

ステレオサウンドしか読んでいない人にとっては、
ジャーマン・フィジックス、Troubadour 40(80)といえば、
菅野先生ということになるだろうが、
ラジオ技術では、高橋和正氏もかなり積極的に取り組まれていた。

2005年の測定記事もその一つで、
Troubadour 40で必要となるウーファーに関しても、いくつかを製作されていた。
MFBをかけたウーファーもあったと記憶している。

時間があれば大きな図書館に行き、このころのラジオ技術を読み返したい。

Date: 11月 29th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その8)

少し話はそれるが、ラジオ技術に以前、Troubadour 40の測定データが載ったことがある。
ビクターの無響室での測定だった、と記憶している。

高橋和正氏の記事だったはずだ。
いつの号だったのか、そこまで正確には記憶していないが、
2005年発売のラジオ技術のはずである。

Troubadour 40のネットワークを通した状態とパスした状態、
それぞれの周波数特性、インピーダンス特性、群遅延特性が測定されていた(はずだ)。

手元に、そのラジオ技術がないので、記憶に頼っての記述になるが、
ネットワークを介さなかった場合のTroubadour 40の群遅延特性は見事というしかない。

インピーダンス特性は、150Hzあたりに大きなピークがあり、
6kHzあたりに小さなピークがある。

この6kHzでのピークはチタン振動板の定在波によるもの。
付属のネットワークは、このあたりの周波数特性のピークを補整している。
そのためインピーダンス特性は、ネットワークを介さない時とくらべると、
全体的にうねった感じになっている。

記憶違いが少しあるかもしれないが、そう大きくは違っていないはずだ。

Date: 11月 27th, 2022
Cate: 4343, JBL, 終のスピーカー

終のスピーカー(JBL 4343・その1)

「終のスピーカーがやって来る」を書き始めた頃、
これを読まれた方のなかには、終のスピーカーは何なのだろうか、
と予想された人も何人かいる。

JBLの4343ではないだろうか、と予想された人もいる。
4343については、これまでもかなりの数書いてきている。

4343は1976年に登場している。
4343の登場と同じくして、私はオーディオの世界に興味をもった。

私にとっての初めてのステレオサウンドは、41号。
4343が表紙の号だ。

当時、熊本の片田舎に住んでいた私でも、4343を聴く機会には比較的恵まれていた。
それだけ4343は売れていた。
当時としてはかなり高価なスピーカーシステムなのに、
それが聴ける、ということは、すごいことだ。

当時、熱心に読んでいたステレオサウンドにも、ほぼ毎号4343は登場していた、といえる。
4343が完璧なスピーカーではないことはわかっていても、それでも輝いて見えたし、
4343はスターであった、といまでもおもう。

4343が製造中止になってけっこうな時が経っても、4343を聴く機会はけっこうあった。
私と同じ1963年生れの友人のAさんとは、2006年に、二人の年齢を合せると4343だ、
そんなことをいっていたくらいである。

いまでも4343のコンディションのいいモノがあれば、欲しい。
置き場所がないけれど、それでも欲しい、とおもっている。

それでも、4343は私にとって終のスピーカーとなるだろうか(なっただろうか)、
そんなことをおもう。

Date: 11月 24th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その7)

別項で「オーディオにおけるジャーナリズム(技術用語の乱れ)」を書いている。
そんなこまかいことどうでもいいじゃないか──、そう思っている人もいるだろう。

チョークコイルをチョークトランスと書いたり、
マッキントッシュのパワーアンプの出力に搭載されているオートフォーマーを、
出力トランスと書く人、
それもわざわざオートフォーマー(出力トランス)と書く人もいる。

さらにひどい人になると、整流コンデンサーと書いたりする。
他にも、こんな例はあるけれど、一つひとつ挙げることは、ここではしない。

けれど、こういった技術用語の乱れは、オーディオ機器の理解を妨げることにつながったりする。
無指向性スピーカーも、まさしくそうである。

ビクターのGB1のような多指向性スピーカーを無指向性と表記する。
GB1も無指向性、ジャーマン・フィジックスのスピーカーも無指向性となってしまう。

なんと乱暴な区分けだろうか。
ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットは、まさしくシームレスの水平方向の無指向性である。
GB1、同じ構成のスピーカーはそうてはない。

もともと指向性をもつスピーカーユニットを複数個、方向を変えているだけなのだから、
しかもそれぞれのユニットから放射された音は互いに干渉するのだから、
とうていシームレスとは呼べない。

なのに無指向性ということで、ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットも、
そういった多指向性のスピーカーとごっちゃに捉える人が実際にいる。

そして、したり顔で、無指向性スピーカーは──、といったりする。
見当違いのことを、無理解によることをいう。

Date: 11月 23rd, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その6)

ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットは、
水平方向の無指向性の放射特性をもつ。

そのため、設置が難しい、狭い部屋では無理で広い空間が必要──、
そんなことがいわれがちである。

けれど鳴らしてみると、そんなことはない。
まったくない、と断言できる。

無指向性のスピーカーは設置が難しい、と思われがちなのは、
ジャーマン・フィジックスのDDD型以前の、いわゆる無指向性スピーカーゆえといっていい。

代表的な例はビクターのGB1がある。
GB1は、球体型エンクロージュアに、13cm口径のウーファーを四発、
7cm口径のトゥイーターを七発収めたモノで、類似の製品は他社からも出ていて、
それらも無指向性スピーカーと呼ばれている。

けれどよく考えてみてほしい。
この種のスピーカーは、ほんとうに無指向性なのかどうかを。

菅野先生は以前から、これらのスピーカーは無指向性ではなく、
多指向性というふうに指摘されていた。

無指向性と多指向性。
似ているけれど、まるで別ものであること。
なので多指向性の印象で、真に無指向性のスピーカーを捉えないことが大切となる。

Date: 11月 22nd, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その5)

私がカーボン仕様のDDD型ユニットの音を聴いたのは、
HRS130の音をとおしてである。

なので、直接同じ条件で比較したわけではないので、
どちらがいいとは、いまのところなんともいえない。

それでもサウンドクリエイトで聴いた印象のみでいえば、
スピーカーユニットとしての完成度は高くなっているような感じがする。
リニアリティ(ハイレベル方向)は、あきらかにチタンよりもいい、といえる。

スピーカーとして、忠実な変換機としての性能はカーボンが上か。
そんな気がする。

それでも、私はサウンドクリエイトでHRS130を聴きながら、
あのころ無理してでも(といってもそうとうな無理なのだが)、
Troubadour 40を買っておくべきだった──、そんな後悔に似たおもいをいだいていた。

カーボンかチタンか。
そう訊かれたら、どう答えるか。
カーボンはいいですよ、と答えるだろう。

カーボンがいいですよ、とは答えることはないだろう。

どちらが好きか、と訊かれたら、
チタンだ、と即答する。

Date: 11月 22nd, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その4)

私のところにやって来たTroubadour 40は、チタン仕様。
9月にサウンドクリエイトで聴いたHRS130はカーボン仕様である。

ジャーマン・フィジックスは最初チタンを振動板に採用してきた。
2008年ごろからカーボン振動板も登場した。

カーボン振動板はそう遠くないうちに出てくる、と思っていた。
カーボン繊維はしなやかな素材だし、
その性質からしてベンディングウェーヴ型ユニットにぴったりともいえる。

そのことを当時のタイムロードの人に話したことがある。
返ってきたのは、チタン以外では無理です、だった。

一般的に思われているカーボンのイメージからすると無理という答が返ってきて不思議ではない。
国産のスピーカーシステムの、
おもにウーファーに採用されたカーボンのイメージが強い人はそうかもしれない。

あれは、井上先生がよくいわれたようにカーボンよりもエポキシである。
本来のカーボンを知っていれば、そんな答は返ってこなかったはず。

だからといって、カーボン仕様のTroubadour 40が登場してきたときに、
ほら、やっぱり、とは言わなかった。

そんなことよりも音である。
私は、そのころカーボン仕様のTroubadour 40を聴くことはなかった。
カーボンに期待していただけに、チタンとの比較をやりたかった。

菅野先生はすでに聴かれていた。
どうでしたか、と訊くと、少し渋い表情をされて、やっぱりチタンだよ、といわれた。

そうか、やっぱりチタンか。
カーボンの可能性を信じながらも、2008年の時点ではチタンだったのだろう。

けれどそれから十年以上が経っている。
2008年のカーボンのDDD型ユニットと現在のカーボンのDDD型ユニットが、
まったく同じとは考えにくい。

カーボン繊維自体も違っているのかもしれないし、織り方も変ってきていてもおかしくない。
私は2008年のカーボンと同じとは思っていない。

Date: 11月 21st, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その3)

菅野先生のリスニングルームでTroubadour 40(80)の音については、
聴いた録音(ディスク)のこと、すべてについて書いていきたいと思いながらも、
ひとつだけ書くとしたら、モノーラル再生の見事なことである。

一度だけモノーラル録音を聴いている。
その時、菅野先生は右チャンネルだけを鳴らされた。
スピーカーシステムもモノーラルにしての再生である。

通常、そういう鳴らし方をすると、音がさびしい感じになりがちなのだが、
まったくそんなことはなかった。

ワイドレンジなモノーラル再生だった。
堂々としたモノーラルの音だった。

別項「MQAのこと、TIDALのこと(MQairのこと・その2)」で、
BOSEのSoundLink Revolve IIを聴いたことを書いている。

この小さなスピーカーもモノーラルで、
しかもTroubadour 40と同じく水平方向の無指向性だ。
シルエットも似てなくもない、といえる。
このことがうまく作用してのモノーラル再生だったのかどうかは、
これから自分のTroubadour 40で確認していける。

Date: 11月 21st, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その2)

井上先生は、よくいわれていた、
自分の腕の未熟さをスピーカーのせいにするな、と。

ジャーマン・フィジックスのTroubadour 40に関しては、
Troubadour 80を含めて、菅野先生のリスニングルームで何度もじっくり聴く機会に恵まれた。

ここまでオーディオは達することができるのか──、
そう素直におもえるほどの音を聴いているから、
Troubadour 40(80)の実力の高さはそうとうなレベルだということが、
自分で鳴らす前からわかっている。

このことは、もう絶対にスピーカーのせいにはできない、ということである。
そのくらいTroubadour 40を中心とした菅野先生のシステムの音は、すごかった。

この時の菅野先生の音を聴いた人は、ほとんどが「すごいですね」といったらしい。
けれど菅野先生は、ぽろっと洩らされた。

「みんなすごいといってくれるけれど、
ほんとうにこの音のすごさがわかっているオーディオ業界の人は、
意外にも少ない。○○さんと○○さんくらいだよ……」と。

菅野先生は二人の名前を挙げられた。
誰なのかは書かない。明かすこともしない。

そういうものなのだ、残念なことに。

Date: 11月 20th, 2022
Cate: German Physiks, 終のスピーカー

終のスピーカー(Troubadour 40と4PI)がやって来た!!!

10月26日夕方に届いたメール。
そこには、「Troubadour 40と4PIを託したい」とあった。

Troubadour 40と4PI、
どちらもいつかは手に入れたいと思い続けてきたスピーカーユニットだ。
この二つのユニットを「託したい」とはどういうことなの?

とにかく急いでメール本文を読む。
すでに書いているように、そこには私にとって夢のような内容だった。

そして今日(11月20日)、メールをくださったSさんのところに行ってきた。
Troubadour 40と4PIが、
私にとっての終のスピーカーがやって来た。

満足のゆく音で鳴らすには、これからいろいろやることがある。
それはそれで楽しい日々のはず。

とにかく今日、終のスピーカーがやって来た、
このことがとても嬉しい。

Date: 11月 19th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックスとマンガー

ジャーマン・フィジックスとマンガーは、
どちらもドイツのスピーカーメーカーで、
ベンディングウェーヴ型ユニットを開発し製品化している。

ジャーマン・フィジックスを聴く機会はけっこうあった。
マンガーを聴いたことはわずかで、じっくり聴けた、とはいえない。
それでもマンガーの良さは感じている。

菅野先生は、ジャーマン・フィジックスを導入されたころ、
ジャーマン・フィジックスとマンガーの人たちと座談会をしたい、
話をいろいろききたい、と話されていた。

おそらくステレオサウンドの編集部にも、同じことを話されていた、と思う。

Date: 11月 19th, 2022
Cate: German Physiks

Troubadour 40とウーファーのこと(その2)

ユニバーサルウーファーというテーマで、別項をいくつか書いている。
これは、いつかはTroubadour 40かUnicornを鳴らす日がきっとくる──、
それを夢見てのことだ。

ジャーマン・フィジックスのDDD型ユニットは水平方向無指向性である。
ウーファーを考えるにあたって、このことにとらわれないようにしたい。

低音部も無指向性とすることが、
DDD型ユニットとうまくつながるとは考えないことだ。

低音はもともと指向特性が広いからだ。
ジャーマン・フィジックスにしても、HRSシリーズはウーファーを床に向けているが、
Gaudíやそれに次ぐモデルは、そんなことをしていない。

HRSシリーズのようなやり方を否定はしないものの、
DDD型ユニットと組み合わせるということを考えるのではなく、
良好な低音再生を、まず考えるのが先である。

別項「スーパーウーファーについて(その21)」では、
ユニバーサルウーファーではなく、
Universal Bass(ユニバーサルベース、ユニバーサルバス)と呼ぶべき、
Universal Bassは、それが鳴らされる環境において、
時間と手間と知恵をかけて形成されるものである、と書いた。

Universal Bassこそ、目指すみちである。

Date: 11月 18th, 2022
Cate: German Physiks

ジャーマン・フィジックス Troubadour 40のこと(その1)

私が初めて聴いたジャーマン・フィジックスのスピーカーは、
これまで書いているようにUnicornである。

タイムロードがジャーマン・フィジックスを扱うようになったころからラインナップにあった、
ときいている。
けれどDDD型ユニットだけでは低音の十全な再生は望めない、
それで輸入は見送られた、ときいている。

日本に入ってきたジャーマン・フィジックスのスピーカーシステムは、
現在入ってきているHRS130と同じ構成のモデルだった。

これを聴かれた菅野先生は、DDD型ユニットの可能性を高く評価され、
Unicornというモデルが本国にあることを知り、輸入をすすめられたことで、
Unicornの取扱いが始まった。

DDD型ユニット単体のUnicorn、
このスピーカーシステムの音を聴けば、DDD型ユニットの可能性を、さらに知ることになる。

そうなるとDDD型ユニットを単体で手に入れ、自分でシステムを構築したら──、
そんなことを夢見ることになる。

菅野先生もそうだったのだろう。
菅野先生は、当時のタイムロードの社長の黒木弘子さんに、
DDD型ユニット単体というか、独立した製品としての開発を話された。

タイムロードの黒木さんは、ジャーマン・フィジックスにかけ合う。
そうやって誕生したのが、Troubadour 40である。

菅野先生はいわれた、
黒木さんがTroubadour 40の、いわば生みの親で、
自分が育ての親だ、と。

黒木さんの情熱がなければTroubadour 40は登場してこなかったし、
菅野先生の育ての親ということは、試作モデルをかなり試聴されたからなのだろう。

Date: 11月 16th, 2022
Cate: German Physiks

Troubadour 40とウーファーのこと(その1)

ジャーマン・フィジックスのTroubadour 40は、
いわばスピーカーユニット単体といえる存在ゆえに、
なんらかのウーファーを用意する必要がある。

Troubadour 40を単体で鳴らしたこともある。
Troubadour 40に見合うウーファーとはいえない、
たまたま知人宅にころがっていたといえる25cm口径のユニット、
バスレフ型のエンクロージュアを足して鳴らした音も聴いている。

これでも意外なほど鳴ってくれることは確認している。
それでもTroubadour 40に見合うだけのウーファー(低音)を用意する必要がある。

菅野先生はJBLの2205をお使いだった。
Troubadour 40を持っていた知人は、JBLの1500ALを購入した。
けれどエンクロージュアを用意する前に、Troubadour 40も1500ALも手放している。

私も、そのころは1500ALは最良の選択の一つと考えていた。
このころ、1500ALは販売されていた。
1500ALは1501ALとなったが、もうこのウーファーだけの販売は行われていない。

購入できるできないは別として、
どういう低音部がいいのだろうか、とあれこれ考える。

別項「2022年ショウ雑感」で、
Brodmann Acousticsのスピーカーは聴けなかったことを、あえて書いたのは、
Troubadour 40のことがあったためでもある。

現実的に、そういう使い方はしないのだろうが、
Troubadour 40とBrodmann Acousticsのスピーカーの低音の組合せ、
かなりうまくいきそうな予感だけはある。

そんなことを想像していたから、Brodmann Acousticsのスピーカーを、
今一度聴いてみたかったわけだ。

Date: 10月 30th, 2022
Cate: PM510, Rogers, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(ロジャースPM510・その6)

JBLの4343とロジャースのPM510。
同時代のスピーカーシステムであっても、その音はずいぶん違うし、
音楽の聴き方も違ってくるといえる。

4343とPM510は、瀬川先生が愛されたスピーカーだ。
4341とLS5/1Aとしてもいいのだが、
私にとっては4343とPM510である。

別項「ステレオサウンドについて(その88)」でも引用している、
瀬川先生の未発表原稿の冒頭に、こう書いてある。
     *
 いまもしも、目前にJBLの4343Bと、ロジャースのPM510とを並べられて、どちらか一方だけ選べ、とせまられたら、いったいどうするだろうか。もちろん、そのどちらも持っていないと仮定して。
 少なくとも私だったら、大いに迷う。いや、それが高価なスピーカーだからという意味ではない。たとえばJBLなら4301Bでも、そしてロジャースならLS3/5Aであっても、そのどちらか一方をあきらめるなど、とうてい思いもつかないことだ。それは、この二つのスピーカーの鳴らす音楽の世界が、非常に対照的であり、しかも、そのどちらの世界もが、私にとって、欠くことのできないものであるからだ。
     *
私も4343とPM510に憧れてきた。
PM510を選んだ。

私も大いに迷った。
PM510にしたのは、価格のことも大きく関係しているし、
このころすでにステレオサウンドで働くようになっていたから、
JBLは試聴室で日常的に聴ける、ということももちろん関係している。

だから自分でも、なぜ、この二つのスピーカーに対して迷うのか、と考える。
まだはっきりとした結論は出ていないが、それでもこうおもっている。

冒険(4343)と旅行(PM510)なんだ、と。
このことが、JBLで音楽を聴いている人は、ロマンティストなんだ、ということにもつながっている。