Archive for category 4343

Date: 1月 21st, 2009
Cate: 4343, JBL, SX1000 Laboratory, Victor

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その46)

ビクターのZero-L10とSX1000 Laboratoryの間には、SX1000が存在する。

SX1000の登場は1988年、SX1000 Laboratoryは1990年。
この5年の間に、個々のユニット、エンクロージュアは細部が見直され、さらに聴感上のSN比は向上している。
エンクロージュアの仕上げも、カナディアンメイプル材をイタリアで染色するという、
凝ったツキ板の採用で、日本のスピーカーには珍しい雰囲気をまとっている。

だが、これ以上に外観の変化で目につくのは、スタンドにおいて、である。

SX1000は、LS1000という専用スタンドが別売りされていた。
このスタンドの構造は、基本的にはZero-L10のものは同じだ。

それがSX1000 laboratoryではインディペンデントベースという名の専用スタンドが、最初から付属している。
SX1000 laboratoryは、エンクロージュアの底面も、他の面と同じ仕上げが施されている。
いわゆる6面化粧仕上げで、大型のブックシェルフ型に分類されるだろうが、
実際にはインディペンデントベースと一体で開発されたものだけに、
この専用ベース込みでの、中型フロアー型と見るべきだ。

このインディペンデントベースの構造は、LS1000とは、まったく異っている。

Date: 1月 19th, 2009
Cate: 4343, JBL, SX1000 Laboratory, Victor

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その45)

ビクターのZero-L10とSX1000 Laboratoryを比較する。

Zero-L10は口径39cmコーン型ウーファー、21cmコーン型ミッドバス、6.5cmドーム型ミッドハイ、
3cmドーム型トゥイーターからなり、クロスオーバー周波数は230、950、6600Hz。

SX1000 Laboratoryは、31.5cmコーン型ウーファー、8cmドーム型スコーカー、3cmドーム型トゥイーターで、
クロスオーバー周波数は440、5000Hz。

Zero-L10のミッドハイとトゥイーターの振動板はピュアファインセラミックス、
SX1000 Laboratoryのスコーカーは、ダイヤモンドをコーティングしたピュアファインセラミックス、
トゥイーターはダイヤモンドになっている。

SX1000 Laboratoryの振動板は、より精確なピストニックモーションに必要な条件を、
Zero-L10のそれよりも高い次元で満たしている。

注目すべきはSX1000 Laboratoryのスコーカーで、
Zero-L10のミッドバスとミッドハイが受け持っていた帯域を、
このユニットひとつで、ほぼカバーしている。

ウーファーもひとまわり小さくすることで、指向性を犠牲にすることなく、440Hzまで受け持たせている。
これがZero-L10と同じ39cm口径なら、指向性がやや狭くなりはじめる帯域になってしまったであろう。

SX1000 Laboratoryのインピーダンスは4Ω。ウーファーに直列に入るコイルの値も、
8Ωにくらべて小さくて済む。

Date: 1月 19th, 2009
Cate: 4343, JBL, SX1000 Laboratory, Victor

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その44)

4343は、トゥイーターの2405は、ミッドハイの横に配置されているが、
基本的なユニット配置は、インラインになっている。

ダイヤトーンのDS5000とビクターのZero-L10は、どちらもインライン配置を取っていない。

ビクターはG (Gliding) ラインと名付けられた、独自の配置で、上3つのユニットが弧を描くようになっている。
ダイヤトーンの配置は、できるだけ4つのユニットが近接するようになっている。

4ウェイ構成で特に問題となる、垂直方向の指向性を、どれだけ均等に保てるかに対する、
それぞれの、その時点での答えであろう。

この問題に関しては、ユニットの数を減らすのも答えである。

スピーカーユニットの振動板に、より高剛性、より内部音速の速い素材を採用し、
ピストニックモーション領域を、さらに可能な限り広くしていくことで、3ウェイ構成へと、進化していける。

ビクターの解答が、SX1000であり、SX1000 Laboratoryである。

Date: 1月 18th, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その43)

分割振動が起きる周波数をできるだけ高いほうに移動させ、
ピストニックモーションの領域の拡大、より精確な動きを実現、
さらに4ウェイにして、それぞれのスピーカーユニットの、優れている領域のみを使う。

そうすることで浮かび上がってきたのが、エンクロージュアの鳴きだった。
箱鳴りである。

響きのいい素材でエンクロージュアをつくろうと、板厚を増し補強桟をさらに入れ、強度を高めようと、
スピーカーユニットがピストニックモーションなのに対して、
エンクロージュアの鳴きは、ピストニックモーションで振動することは、まずない。

このふたつの響きは、性質の異るものである。
だからこそスピーカーユニットの性能が高くなればなるほど、異質の鳴りだけに、
エンクロージュアの鳴きが、以前よりも耳につくようになってきた。そう言えないだろうか。

ならば、どうするか。
エンクロージュアを、というよりも、エンクロージュアを構成するそれぞれの面──
左右の側板、天板、裏板などをピストニックモーションで振動するような構造にすればいい。

少なくとも、面積の大きい左右の側板だけでも、そういう構造にするだけで効果はかなり期待できるような気がする。

具体的にどうするか、2つほど考えている。
ただ作るのがどうやっても面倒なので、もうすこし簡略化できる構造を考えつくまでは、
手がける気が起きない。

Date: 1月 18th, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その42)

雑共振、不要輻射をひとつひとつできるだけ抑えていく。
結果、確かに聴感上のSN比は、少しずつ確実に高くなっていく。

けれど、同時に、世の中に存在する、すべての物質には固有音がつきまとう。
どんなに高剛性で内部音速が速い素材であろうが、固有音から逃れることは出来ない。

その固有音が、いままで雑共振や不要輻射にマスキングされていたのだろうか、
ダイヤトーンでいえば DS5000の6年後に登場したDS-V9000は、より徹底した高SN比を実現したためであろう、
特にドーム型振動板に採用されたB4Cの固有の音が、際立って聴こえる。

これはビクターのZero-L10にもいえる。
やはりDS5000より3年後に登場した分だけ、DS5000よりも、高SN比化の手法が随所に見られる。
そして、その分だけ、やはりドーム型振動板のセラミック特有の音が、際立つようになった、と私は受けとめている。

いま思うと、DS5000は、なかなかバランスのとれたスピーカーだったのかもしれない。

そういえば、早瀬さんが、昔、吉祥寺に住んでいたときのスピーカーがDS5000だった。
意外に小さめな音量で鳴っていたように記憶している。
しかも、そういう音量でも、音が痩せるということはなく、余裕があって、静かに鳴っていた。

Date: 1月 14th, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その41)

雑共振を抑えるだけでなく、不要輻射も抑えることで聴感上のSN比は、確実に向上していく。

振動板から出るより先に、スピーカーのフレームから音が出ることは以前書いたとおりだ。
フレームの表面処理も重要になってくるし、フレームをフロントバッフルに固定しているネジにも言える。
ダイヤトーンのDS10000、DS9Zのネジの頭にゴム製のキャップをかぶせていた。
ネジの頭の凹みから不要輻射を抑えるためである。このキャップにも、DIATONEの文字が入っていた。

ラウンドバッフルの採用も、不要輻射を抑えるためで、
DS5000は曲線ではないけれど、両サイドを斜めにカットすることで、鋭角な箇所をなくしている。

4343も、後継機の4344、4344 MkIIも、フロントバッフルはすこし奥に付いている。
その分、直角のコーナーが増えることになり、不要輻射の箇所も増しているわけだ。

4348が、音響レンズの採用をやめたのも、フロントバッフルも引っ込ませていないのも、
聴感上のSN比向上のためであろうし、実際に早瀬さんのところで4343Bと直接比較した際にも、
はっきりと、そのことが確認できたし、
おそらく今後JBLは音響レンズ付きのモデルを開発することはないであろう。

ダイヤトーンのスピーカーは、DS5000までは、フロントバッフルにレベルコントロールがついていたが、
その後に出た機種、DS1000から、レベルコントロールそのものがなくなってしまう。

レベルコントロールを廃したことに賛否あったが、これも不要輻射をなくすための手法である。
レベルコントロールのツマミも、そのまわりのパネル部分も雑共振と不要輻射の元である。

Date: 1月 14th, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その40)

聴感上のSN比を高めるために、井上先生が4343に施されたことを一言で表せば、雑共振を抑えることである。

このことはダイヤトーンのDS5000やビクターのZero-L10を仔細に見ていけば、納得されるだろう。
ひとつひとつ具体例をあげていこうと思ったが、そうすると、この項がいつまでも終らないので省かせていただく。

それでもいくつかあげれば、吸音材はどちらもウール100%の天然素材だし、
エンクロージュアのどの部分を叩いてみても、雑共振を感じさせるところはない。
Zero-L10はドーム型振動板の保護用の金属網を着脱できるようになっていた。
ダイヤトーンもDS5000ではないが、DS1000あたりから鉄と銅の異種金属を使い、
少しでも影響を少なくしようとしていた。

異論もあるだろうが、スピーカーユニットの分割振動も、ある種の雑共振といえるだろう。

国内メーカーが、スピーカーの振動板に高剛性の素材を使いはじめたころから、
聴感上のSN比の向上が始まっていた、といえるし、
ピストニックモーションの追求は、SN比の追求でもあった。

Date: 1月 9th, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その39)

アンプは何も複雑な回路構成のものでなくてもいい。
アナログディスク全盛の時には、FET1石のゼロバイアスのヘッドアンプの自作記事がよく載っていた。
私も作ったことがある。電源は006P角形9V乾電池でいい。コンデンサー、抵抗の使用も僅かだ。
配線さえ間違えなければ、調整箇所もない。

ゼロバイアス・ヘッドアンプの音が優れているかどうかはおいておくが、
こんなアンプでも、プリント基板の音の違いははっきりと出す。

アンプをつくるのが面倒な人は、ガラスエポキシ基板とベークライト基板だけを買ってきて、
親指と人さし指で基板をはさみ、指で弾いた音を聞いてほしい。

テフロン基板単体を手にしたことはないので、弾いたことはないけれど、
ガラスエポキシともベークライトとも違う音なのは確かだ。

プリント基板は、トランジスター、FET、OPアンプ、真空管などの能動素子、
コンデンサー、抵抗、半固定抵抗などの受動素子を支えるベース(基板)である。

こんなことがあったのを思い出す。
DATが登場したときのことだ。ステレオサウンドの試聴室で、各社のDATデッキ、テープの試聴が終った後、
「振ってみろ」と言いながら、井上先生が、使用テープをこちらに渡された。

親指と人さし指ではさみ数回振ってみる。無音ではない。テープ機構の音がする。
カチャカチャという音、カシャカシャという感じに近い音、ガチャガチャと濁る音……、
まったく同じ音がするものはひとつもなかった。

「いましがた聴いた音と、いまのその音、似てるだろう」とも言われた。
そのとおりなのだ。

そのテープにはデジタルで記録される。にも関わらず、アナログ的な要素が音と関係してくる。

Date: 1月 9th, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その38)

スピーカーの聴感上のSN比には、ネットワークの処理も、もちろん大きく関係してくる。
回路が同じ、コンデンサー、コイル、抵抗などの使用パーツも同じでも、
個々のパーツの配置や取りつけ方法が異れば、音は変るし、聴感上のSN比も良くなれば悪くなることもある。

私がステレオサウンドにいた頃のスピーカーは、海外製品でネットワークの構成に、
プリント基板を使っていないものは、ほとんどなかった。
一方国産スピーカーは、いわゆる598のスピーカー(スピーカー1本の価格が59800円のもの)でも、
ネットワークにプリント基板を使ったものは見たことがない。
たいていが木のベースにパーツを固定して、パーツのリード線同士をハンダ付けもしくは圧着している。

エンクロージュア内部の音圧は高い。ネットワークは振動に取り囲まれている。

プリント基板の採用は絶対悪だと言いたいわけではない。
ただ細心の注意が求められる。
ネットワークの設置場所は、エンクロージュア内のどこなのか。またプリント基板の向きはどうなのか。
こんなことでも、聴感上のSN比には影響する。
プリント基板の材質も、もちろん影響する。

スピーカーのネットワークだけでなく、アンプ、CDプレーヤーの大半に使われているのは、
ガラスエポキシ基板である。

20年ほど前に、マークレビンソンが、No.26Lのプリント基板を、
ガラスエポキシからテフロン製のものに交換したNo.26SLを出し、その音の違いが話題になった。
プリント基板が異るだけで、回路もその他の使用パーツはまったく同一なのに、
大きく音が変化したからだ。

このときテフロン基板の電気的特性の良さが注目されたが、理由はこれだけだろうか。

アンプの自作経験がある方のなかには、
プリント基板の材質によって音が違うのは経験されているだろう。
テフロン基板なんてものは入手が容易でないため比較対象に入らなかったが、
少なくともベークライト基板とガラスエポキシ基板の音を較べると、
電気的特性、信頼性ではガラスエポキシが基板が上だし、価格も高いが、
こと音に関しては、ガラスエポキシ基板がいいとは言い切れない。

Date: 1月 7th, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その37)

エンクロージュアの仕上げで、スピーカーの音は変る。

ツキ板と塗装の違いもあるし、
塗装にしても、一回だけの塗装と2回、3回と重ね塗りしたものも違うし、
一般的なウレタン塗装と、ダイヤトーンがDS10000で採用した漆黒塗装でも、大きな違いがある。

エンクロージュア表面の仕上げが音に影響することは、具体例を細かく挙げなくても周知のことだろう。

エンクロージュアの表面は、なにも表から見えているだけではなく、
エンクロージュア内部から見れば、内側もまた表面である。

外側の表面を丁寧に仕上げているスピーカーでも、エンクロージュア内部、
内側の表面を仕上げているものは、おそらくほとんど存在しないだろう。

けれど、エンクロージュア内部の音は、吸音材の違いが音となって表われるように、封じ込められるものではない。

手間もお金もかかるのはわかっている──。
聴感上のSN比をさらに高めるためには、内側の表面も仕上げたほうがいい。

Date: 1月 6th, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その36)

聴感上のSN比に関係するものとして、エンクロージュア内部の吸音材もあげられる。

ダイヤトーンのDS5000は、SN比の劣化を嫌い、グラスウールではなく100%のウールを採用している。
ビクターのZero-L10もそうだ。

グラウスウールは工業製品で、繊維の一本一本がほぼ同じ太さで同じ長さ。
つまりグラスウールが立てる音、いいかえれば雑音はある帯域に集中する。
帯域が分散してれば、それぞれのレベルも低く、それほど聴感上のSN比を劣化させないが、
なまじ均一なものをつくるのが得意な日本製だと、それが裏目に出てしまう。

4343当時のアメリカのグラスウールは、日本製ほど繊維の太さも長さもそれほど揃っていない。
工業製品としては、出来が悪いということになるのだが、このことがかえって聴感上のSN比を、
国産グラスウールほどは劣化させなかった。

グラスウールを押しつぶしたときの音を聴いてみるとわかる。
その音がエンクロージュア内で発生しているのだ。

Date: 1月 5th, 2009
Cate: 4343, JBL, 井上卓也

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その35)

ステレオサウンド 63号の記事で井上先生がやられていることは、
4343の聴感上のSN比を高めることである。

そのために音響レンズ2308のフィンの間に消しゴムを小さく刻んだものをはめていく、
2405の取付け穴のメクラ板の鳴きを抑えるためにブチルゴムを、ほんのすこし貼る、などである。

大事なのは、雑共振を適度に抑えられていること。

たとえばメクラ板全面にベタッとたっぷりのブチルゴムを貼れば、ほとんど鳴きを抑えることは出来るが、
音が必ずしも良くなるものではないことは、言うまでもないことだろう。

しかも重要なのは、井上先生がやられていることは、気に喰わなければすぐに原状復帰できる点である。

だからハンダ付けを必要とするパーツの交換については、いっさい語られていない。

ネットワークのコンデンサーを、違う銘柄のモノに交換する場合、
まず既存のパーツを取り外すためにハンダゴテを当てる。
当然熱が加わる。取り外すパーツにも、それ以外のパーツにも、である。
この熱が、少なからずパーツに影響をあたえる。しかもその影響を取り除くことはできない。

井上先生が言われていたのは、アンプでもスピーカーでもいい、
パーツに熱を加えたら、それだけ音は変化(劣化)する。決して元には戻せない、ということだ。

交換したコンデンサーをまた外して元のコンデンサーを取りつけても、
以前のまったく同じ音にはならないことは肝に銘じておきたい。

このことは修理にも言える。
音をよく理解しているメーカーは、アンプの修理の場合、片チャンネルのあるパーツを交換した際、
異常がなくても、反対チャンネルの同じパーツを交換する。
片チャンネルだけのパーツの交換では、熱による影響によって、微妙とはいえ、
左右チャンネルの音に無視できない音の差が生じるためである。

ブチルゴムは、貼った音が気に喰わなければ剥がせばいい。
全面的に気にいらなくても、すこしでもいい点を感じとることが出来たら、
ブチルゴムの大きさや貼り方を工夫してみる。
さらにはメクラ板を、いろんな材質で、厚みを変えて作ってみるという手もある。

そうやって経験を、ひとつひとつ積み重ねていくことは、いずれ宝となる。

Date: 1月 4th, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その34)

ステレオサウンドの63号の記事で、井上先生が、4343の鳴らし込みをやられている。
そこでもバスレフポートに、すこし手を加えられている。

バスレフポートに手を突っ込んで、ポートの縁(もちろん外側)に、
ブチルゴムか布製の粘着テープを少量貼り、鳴きをコントロールするというもの。

たったこれだけのことなのに、確実に音は変化する。
貼った音か、オリジナルそのままの音を採るかは、その人次第だが、
一度は試してみてほしい。そして、バスレフポートに、わずかに手を加えただけで、
どういうところが変化するのを経験しておくのは、決して無駄にはならない。

バスレフポートの問題点は、他にもある。固定方法だ。
ほぼすべてのバスレフ型スピーカーは、フロントバッフル(もしくはリアバッフル)側だけで固定している。
つまりバスレフポートは片側がフリーの、片持ち状態である。
長いポートであるほど、片持ちは避けたい。

さらにポートは通常切りっぱなしで、両端の縁は直角になっている。
ここにアール(丸み)をつければ、もちろん音は変化する。
カーヴを大きくすれば、さらに変わる。

材質も金属が、つねに最良というわけではない。
すこし柔らかい材質の方がいい結果が得られることもあるし、
金属でも、ダンプするかしないか、
ウィルソン・ベネッシュのディスカヴァリーのように、
チーンという金属の鳴きを積極的に活かしているスピーカーもある。

バスレフポートの長さや径を変化させなくても、バスレフポートをどう処理するかで、
おもしろいくらいに遊べるのである。

Date: 1月 3rd, 2009
Cate: 4343, DIATONE, DS5000, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その33)

DS5000について書くために記憶を辿っているうちに、ひとつ思い出したことがある。
おそらくDS5000が、バイワイヤリング対応の最初のスピーカーではないか、ということだ。

入力端子は2組あり、下がウーファー専用の端子、上がミッドバス、ミッドハイ、トゥイーター用の端子で、
上下の端子は金メッキが施された無酸素銅のバーで結ばれていた。

バイワイヤリング方式は、イギリスから始まったように言われているようだが、
少なくとも1982年にDS5000はバイワイヤリング方式を採用していた。

ただし当時は、バイワイヤリングという言葉がまだ使われていなかった。

Date: 1月 3rd, 2009
Cate: 4343, JBL

4343と国産4ウェイ・スピーカー(その32)

DS503のネットワークには、いっさいハンダが使われていない。
コイルやコンデンサーなどのパーツは、すべてスリーブによる圧着で接いでいる。

ハンダによる抵抗分のロス、異種金属同士によるダイオード効果が及ぼす
ローレベルへの悪影響を嫌って、の圧着の全面採用である。

アルミ製のバスレフポート、圧着によるネットワーク、
これらがどのくらいローレベルのクォリティを向上させているか──、
ステレオサウンドにいたとはいえ、試作品を聴くことは稀である。

けれどDS503に関しては、紙ポートとハンダ付けネットワークの音を聴いている。

1982年にステレオサウンド別冊として出たサウンドコニサー(Sound Connoisseur)で、
DS503を取りあげている。

紙ダクトのDS503の音は、ずいぶん違っていた。
完成品のDS503(アルミポート)では、耳をそれほど聳てなくても聴き取れる音が、
あきらかにかすれて、かなりここでこの音が鳴るとわかって集中するからなんとか聴き取れる、
そんな感じになってしまう。あきらかにマスキングされている音になる。

バスレフポートの材質が変るだけで、これだけの変化である。