Archive for category Mark Levinson

Date: 1月 8th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・その4)

マーク・レヴィンソンがいたころのマークレビンソンのコントロールアンプのデザインが、
トラックやブルドーザーのように見えない、という方も少なくないだろう。

私もトラックやブルドーザーとは見えなかった。
念のため何度も書くが、LNP2のデザインは悪くはない。
けれど優れたデザインとは私は思っていないし、美しいデザインとも思っていない。

なぜ、菅野先生は、そんなふうに表現されたのだろうか。
ステレオサウンドにいたころ、直接菅野先生にたずねてれば……、と思いもするが、
たずねてしまうと、自分でなぜなのか、と考えることを放棄してしまうことにもある。

なぜなのかを四六時中考えているわけではないが、
1981年から、これまでずっと頭のどこかには、このことがあった。

「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」で、
菅野先生はマークレビンソンのパワーアンプについては、どう書かれているか。
ML2、ML3については、こう書かれている。
     *
Aクラス動作で25Wのモノーラルアンプがこの大きさ! いかにもMLらしい大胆な製品である。やりたいこと、やるべきことをやるとこうなるのだ、といわんばかりの主張の強さがいい。そして2Ω負荷100Wを保証していることからしても、アンプとしての自信の程が推察できるというものだ。パネルはML3に準じるが、ヒートシンクが非常に大きく、上からの星形のパターンが目をひく。2台BTL接続端子がついている。(ML2)

マーク・レビンソンのパワーアンプらしい風格をもった製品。200W+200W(8Ω)のステレオアンプで、見るからに堂々たる体躯のシンメトリック・コンストラクション。前面パネルにはパワースイッチだけがセンターに、その真上に、あのモダーンなロゴがプリントされている。両サイドのハンドルを含め、シンプルながらきわめてバランスのよい美しさである。これぞ、パワーアンプという雰囲気だ。(ML3)
     *
ML2、ML3、どちらに関してもパワーアンプのデザインとして高く評価されている。
ML7、LNP2、ML2、ML3、いずれもマーク・レヴィンソンのテイストを感じさせるアピアランスをもっている。
にも関わらず、コントロールアンプのデザインとパワーアンプのデザインの評価は、これだけ違う。

Date: 1月 7th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・その3)

ステレオサウンド 43号のRFエンタープライゼスの広告。
     *
「JC-2というのはフェラーリなんだよ。」マーク・レビンソンがいつか云ったことがあります。
 まだレビンソンのアンプが世に紹介されて間もない頃でしたが、JC-2のごく些細な使い勝手の”欠点”を人から指摘されたとき、この生真面目な青年は、ちょっと顔を曇らせて黙って聞いていましたが、やがて口を開いてこう云ったのです。「……これは走るためにつくられたんだ。乗り降りの容易さとか、シフトが重いとか、そういうことが、このクルマにとってどうしてそんなに大事なのかね。」
 彼はそれきり口を噤んでしまいましたが、おそらく胸の中でこんなふうに考えていたことでしょう。「このクルマは、その性能を必要とする人に、そしてこれを乗りこなすことに喜びを感ずる人にこそ、乗ってもらいたものだ。」
     *
いまのステレオサウンドに載っている広告とは、ずいぶんと違う広告であった。
43号は、私には三冊目のステレオサウンドで、JC2はまだ見たことはなかった。
ステレオサウンドの記事でのみ知るアンプだった。

だから、JC2の些細な使い勝手の欠点が、どういうことなのか、それも想像できなかった。
ただ、JC2はフェラーリなんだ、ということが、印象に残った広告だった。

JC2のデザインはツマミに変更が加えられたが、基本的には変らず、ML7に引き継がれている。
菅野先生には、トラックかブルドーザーのようなデザインのML7なのだから、JC2もそういうことになる。

マーク・レヴィンソンは、「JC-2というのはフェラーリなんだよ」と言っている。
それはアンプとしての性能のことであり、デザインに関してのことではない、とも読める。
43号のFエンタープライゼスの広告では、そこのところまではわからない。

マーク・レヴィンソンはJC2のデザインに関しても、
「JC-2というのはフェラーリなんだよ」と思っていたのだろうか。

Date: 1月 6th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・その2)

ステレオサウンド別冊「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」で、
菅野先生がML7のところでマークレビンソンのアンプのデザインについて書かれている。
     *
ただし、マーク・レビンソンの一連の製品についていえることだが、明らかに一般ハイファイ・マニアを相手にしながら、プロ機器仕様とデザインを決めこんでいるのはどうかと思う。トラックかブルドーザーのようなデザインばかりではないか。中ではLNP2Lが一番まともだが、決して使いやすくもない。
     *
これを読んで、LNP2のデザインに感じていたのは的外れではなかった、とほっとした。
ただトラックやブルドーザーのようなデザインには、完全には同意できなかったけれど、
菅野先生とはいわんとされているところはわかる。

何度も書くが、LNP2のデザインを悪いデザインとは思っていない。
けれど、優れたデザイン、美しいデザインとはこれまで思ったことはないし、
これから先もそう感じることはない、と言い切れる。

なのに、なぜLNP2は、いいデザインという評価が得られているのだろうか。
オーディオマニアすべてがそう思っているわけではないにしても、
少なくない人が、しみじみと「LNP2のデザイン、いいですよね」と発するのを聞いている。

悪いデザインとまでは思っていないから、あからさまに否定することはしないものの、
この人もそうなんだ、とは思ってしまう。

「LNP2のデザイン、いいですよね」という人は、
菅野先生の「トラックやブルドーザーのようなデザイン」という発言をどう受けとめているのだろうか。

Date: 1月 5th, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson, デザイン

オーディオのデザイン、オーディオとデザイン(LNP2のこと・その1)

マークレビンソンのLNP2というコントロールアンプ。
1970年代後半もっとも注目を集めたといえるコントロールアンプ。
私も憧れたことのあるコントロールアンプ。

よく耳にするのが「LNP2のデザイン、いいですよね」である。
あの時代の、憧れのコントロールアンプだから、悪いデザインとはいわないものの、
優れたデザインか、となると、そうとはいえない。

ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 1のカラー口絵。
JBLの4343をバックに、マークレビンソンのアンプが真正面から撮られたページがある。

この写真が象徴しているように、LNP2には精度感があった。
ウェストンのメーターは大きすぎず小さくもない、
三つあるレベルコントロールのツマミの周囲には、減衰量がdB表示されていた。
ツマミの大きさも大きすぎない。

精度感を損なう要素は見当たらないLNP2のフロントパネルであった。

HIGH-TECHNIC SERIES 1の写真は、そのことを充分伝えていた。
このページを切り取って壁に貼りたいとも思っていた。

それでもLNP2のデザインは優れているとは、思っていなかった。
これは、いまも変らない。

Date: 1月 3rd, 2015
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(serial No.1001・その4)

ステレオサウンド 42号の音楽欄に、平田良子氏による「時間に挑戦する男 デビッド・ボウイー」が載っている。

David Bowie、いまではカタカナ表記ではデヴィッド・ボウイだけれど、
42号が出た1977年は、デビッド・ボウイーだった。

私がデヴィッド・ボウイのことを知ったのは、この42号の記事だった。
4ページの記事、四枚のモノクロの写真。

世の中には、こういう人がいるんだ、と思いながら記事を読んだ。
記事には、こうある。
     *
ボウイーという人間は、中性的という以上の存在である。彼のなかには、性別や年齢を超越したもうひとりのかれがいて、ボウイーが生み出す方法論をつぎからつぎへとあざやかに実践してみせるのだ。
     *
42号の記事を読んだ時は、音楽記事としてだけ読み、デヴィッド・ボウイのことを知っただけで終った。
この記事を読んだからといって、デヴィッド・ボウイのレコードを買うことはしなかったし、
デヴィッド・ボウイ主演の映画「地球に落ちてきた男」も観ることはなかった。
(最寄りの映画館では上映していなかったように記憶している。)

だからデヴィッド・ボウイの音楽を聴いたのは、もう少し先のことだったし、
聴いたからといって、特にオーディオと結びつくことはなかった。

それからずいぶん経ち、デヴィッド・ボウイのある写真を目にして、4343のことが頭に浮んだ。
その写真は、やはりモノクロで1970年代後半のころのもののようで、いわゆるスナップ写真だった。
日本での写真だった。
背景には電車が写っている。

デヴィッド・ボウイと日本の当時の日常風景との組合せ。
その写真をみて、4343はデヴィッド・ボウイのようなスピーカー(スター)なのかもしれない──、
そんなことがふいに頭に浮んだのだった。

私にとって、4343の存在を知ったのも、デヴィッド・ボウイのことを知ったのも、
ほぼ同時期(三ヵ月違うだけ)であるからこそなのかもしれない。

Date: 12月 25th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(serial No.1001・その3)

最近では、名器も、こんなものにまで……、と思えるモノもそう呼ばれる。
傑作、佳作、力作──、こちらの言葉のほうがあてはまるだろうにと思えるモノを名器と呼ぶ人がいる。

人それぞれといえばそれまでだが、釈然としないものがのこる。

マークレビンソンのLNP2は名器なのか。
すなおにそうだとは、私はいえない。
強く憧れたオーディオ機器である。
有名なコントロールアンプである。
ある時期、LNP2に対するおもいははっきりと薄れてしまったが、
十年ほど前から、やっぱり手に入れたいアンプである、と思っている。

けれど LNP2を名器だと思っているからではない。
LNP2が現役だったころも、名器だとは思っていなかった。
このころ、強く憧れていた。

それは往年の名器と現代の名器の違いからくるものではないか、とそう考えたこともある。
けれど、違うように思う。

私のLNP2への憧れは、ポップスターへの憧れに近いものだったように、いまは思う。
往年の大スターが、どこか近寄り難い雰囲気をもつのとは、そこが違っている。

ポップスターといっても、LNP2、同時代のJBLの4343は大スターだった。
どちらも100万円をこえる価格だった。
それでも、どちらも相当に売れていた。

Date: 5月 2nd, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(続×六・バッファーアンプについて)

パワーアンプの選択ということでもうひとつ思い出すことがある。
スチューダーのA68とルボックスのA740のことである。

スチューダーとルボックスの関係を知っている人ならば、
A68とA740という、このふたつのパワーアンプについて知らなくとも、どういう関係がそこにあるのか想像がつく。

最初に登場したのはスチューダーのA68であり、
しばらくしてA68をベースにルボックスがコンシューマー用パワーアンプとして登場させた。

A68はプロフェッショナル用であるから、入力端子はXLR端子のみ。
もちろんバランス入力となっていて、さらにはトランスが挿入されている。
フロントパネルにはメーターはない。
基本的にブラックパネルで、左右の入力レベル調整が独立してついているのと電源スイッチくらいである。

A740にはパワーメーターがついている。それから入力レベル調整にも、割と大きなツマミがつけられている。
それからスピーカーの切替機能を新たに設けられている。
入力端子はRCA端子の他にXLR端子もついているが、A68とは異りバランス入力でもなくトランスも挿入されていない。

A68とA740は見た目からして、プロフェッショナルとコンシューマーの違いをはっきりと打ち出している。

両機の回路図はインターネットで探せば比較的簡単に見つかる。
電圧増幅段、出力段はA68をベースにしているから、A740も同じだが、
A68はプロフェッショナル用として不要な帯域に対しての扱いが、A740ともっとも異る。
入力トランスがバンドパスフィルターであるし、その後にRFフィルターも設けられている。

機能的にはA740のほうが豊富といえるが、
アンプの回路としては、A740の方がシンプルともいえる。

このふたつのパワーアンプ、
瀬川先生はA740が登場したころは、A68とよく似ているとしながらもA740をA68よりも高く評価されていた。
それがあとになってA68を高く評価されている。

この変化にはリスニングルームの変化が関係している──、
と私はおもう。

Date: 3月 13th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

LNP2の音について思ったこと(その2)

はっきりと書いておくが、瀬川先生はLNP2の音を、麻薬的とか魅惑的な音色といったことは書かれていないし、
話されてもいない。

そんなことはない、読んだ記憶がある、という方は、
瀬川先生がLNP2について書かれたものを読み返してみればいい。
the Review (in the past)で読み返されるのもいいだろう。
それに瀬川先生の文章はかなりの分量をePUBにして公開している。
どちらにしても紙の本にはない機能としての検索がある。

LNP2の音を、麻薬的、魅惑的な音色だと思い込んでしまっている人には意外なことになろうが、
LNP2についての文章に、麻薬的とか魅惑的な音色につながるフレーズは出てこない。

少しだけ引用しておけば、おそらくLNP2について書かれたものでは最後になってしまった、
「’81世界の最新セパレートアンプ総テスト」の「いま、いい音のアンプがほしい」には、こうある。
     *
 レヴィンソンがLNP2を発表したのは1973年で、JBLのSG520からちょうど十年の歳月が流れている。そして、彼がピュアAクラスのML2Lを完成するのは、もっとずっとあとのことだから、彼もまた偶然に、プリアンプ型の設計者ということがいえ、そこのところでおそらく私も共感できたのだろうと思う。
 LNP2で、新しいトランジスターの時代がひとつの完成をみたことを直観した。SG520にくらべて、はるかに歪が少なく、S/N比が格段によく、音が滑らかだった。無機的などではない。音がちゃんと生きていた。
 ただ、SG520の持っている独特の色気のようなものがなかった。その意味では、音の作り方はマランツに近い──というより、JBLとマランツの中間ぐらいのところで、それをぐんと新しくしたらレヴィンソンの音になる、そんな印象だった。
 そのことは、あとになってレヴィンソンに会って、話を聞いて、納得した。彼はマランツに心酔し、マランツを越えるアンプを作りたかったと語った。
     *
マランツのModel 7の音について、瀬川先生は「中葉」と表現され、
《JBLよりもマッキントッシュよりも、マランツは最も音のバランスがいい。それなのに、JBLやマッキントッシュのようには、私を惹きつけない。私には、マランツの音は、JBLやマッキントッシュほどには、魅力が感じられない。》
とも続けられている。

そういうマランツのModel 7に近い音であるLNP2には、だからSG520の「独特の色気」はない。

もしLNP2の音に「独特の色気」があったならば、麻薬的とか魅惑的な音色という表現もでてこようが、
これらの言葉は、実際のLNP2の音をあらわしているとはいえない。

なのに、なぜLNP2の音をそう思う人がいるのだろうか。

Date: 3月 12th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

LNP2の音について思ったこと(その1)

そういう意図で書いたつもりではないのに……、ということはままある。
そういうとき、私の書き方が拙かったかな、とは一応思うようにしている。
どう書けば、きちんと伝わるようになるのか、そのことを考えないわけではない。

でも、どんなに考え尽くしても、そうして書いた文章を読んだ全ての人に伝わるかといえば、
まずそんなことはない、といえる。

それはお前の文章が拙いだけだろう、といわれるかもしれないが、
これまで五味先生、瀬川先生の文章を読んできたという人と話してみると、
えっ、そこの文章をそういうふうに受けとめるの? と思うことは少なからずあった。

私が間違って(歪んで)受けとめている可能性もある。
どちらがどうということよりも、五味先生、瀬川先生の文章ですらそうなのだから、ということに少々驚く。

先頃もそんなことを考えさせられることがあった。
マークレビンソンのLNP2を最近聴く機会のあった人が、こんなことをいっていた。
「巷で云われているような、麻薬的、魅惑的な音ではないんですね」

LNP2は、麻薬的でも魅惑的ともいえる音色をもっているアンプではない。
瀬川先生もそういうことは書かれていない。

けれど、「巷で云われているような、麻薬的、魅惑的な音ではないんですね」といった人は、
どうも瀬川先生の書かれたものから、そういうふうに読みとっているように、私には感じられた。

これははっきりと確認したわけではないから、私が話していてそう感じただけのことで、
決してそんなことはない、そういうアンプではない、と言おうかとも思ったけれど、
ここで書くことにした。

Date: 3月 9th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(続々続バッファーアンプについての考察)

瀬川先生はLNP2のトーンコントロールを使われていた。
“EQ”スイッチのポジションは、だからINであったはずだ。

少なくともOUT 0dBポジションでは使われなかった、とみていいだろう。
となると、パッファーアンプを追加したLNP2の場合、
片チャンネルあたり四つのLD2モジュールは、NFBのかかり方が違うことになる。

JC2(ML1)の1dBステップの左右独立のレベルコントロールは、
何度か書いているようにラインアンプのNFB量を増減していて、
NFB量による音の変化を聴くことができる。
LNP2でもインプットアンプのゲインを切り替えることで、NFB量による音の違いを耳で確かめられる。

どのポジション(どのくらいのNFB量)が音がいいのかは、人によって違ってくるようで、
私はJC2を使っていたときは最大にしていたが、ここで絞る(NFB量を増やしてゲインを落す)ほうが、
いいという人もいることは知っている。

とにかくNFB量が変れば音は変化する。

LNP2に、NFB量100%のバッファーアンプを追加することで、
LD2へのNFBのかけ方のヴァリエーションが揃うことになる。
これによりLD2の表情は変化していっている。

つまりバッファーアンプを追加することで、LD2の新たな表情が加わるといえるのではないのか。

こう考えていくと、もし瀬川先生がLNP2のトーンコントロールを使われずに、
“EQ”スイッチをOUT 0dBポジションにされていたならば、
バッファーアンプを追加することで、バッファーアンプが二段重ねになってしまい、
バッファーアンプ追加による音の変化をよい方向とは認められなかった可能性も出てくる。

JC2でもフォノイコライザーアンプとラインアンプでは回路構成が違っていた。
国産、海外のコントロールアンプのほとんどが、そうであった。
その中にあってLNP2はすべてLD2というひとつのモジュールだけで構成していた。

この特殊性も、バッファーアンプ追加による音の変化と少なからず関わっている、といえる。

Date: 3月 9th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(続々バッファーアンプについての考察)

LNP2のアウトプットアンプはトーンコントロール機能をそなえている。
高低音域だけでなく中音域もコントロールできる3バンドのトーンコントロールであり、
このトーンコントロールもNF型のはずだ。

ということはトーンコントロールを使うことで、
この段のLD2にかかるNFB量は変化していく。

LNP2には”EQ”というスイッチがある。
3ポジションで、トーンコントロール機能のON/OFFにあたるINとOUTのポジションの他に、
OUT 0dBというポジションもある。

OUT 0dBのポジションにすれば、トーンコントロールの三つのツマミをフラットにしていても、
アウトプットアンプのゲインに違いがでる。

いいかえればOUT 0dBポジションで使えば、
アウトプットアンプがバッファーアンプということになる。

バッファーアンプとは、buffer amplifierであり、bufferとは緩衝もしくは緩衝装置ということになる。
そしてバッファーアンプのゲインは0dBであることが特徴だ。
LNP2のように他のアンプ段と同じモジュールを使う場合、
100%NFBをかけることで、ゲインを0dB(増幅度:1)にする。

Date: 3月 9th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(続バッファーアンプについての考察)

LNP2のフォノイコライザーはNF型である。
つまりNFB量に周波数特性をもたせることで、RIAAカーヴを実現している。

そのため周波数によってNFB量に違いが生じることになる。
仮にLNP2のモジュール(LD2)のオープンループ(NFBをかける前)の周波数特性が20kHzよりも延びていれば、
NF型の場合、1kHzを基準とすれば20Hzでは約20dB、NFB量が少ないし、
20kHzでは約20dB、NFBが多くかかることになる。
20Hzと20kHzとでは、この場合、NFB量に約40dBの違いが生じている。

ただ実際にオープンループの周波数特性が、20kHzまでフラットだったとは、
この時代のアンプという前提に立てば考えにくい。

LD2はオープンループゲインはそこそこ高いはずである。
インプットアンプのゲインは時期によって違うが、40dBまであげることができた。
ということはNFBをかけ40dBのゲインがあるということで、
十分なNFBをかけているのであれば、LD2のオープンループゲインはもっと高くなければならない。

それを裏づけることとして、JC2(ML1)のラインアンプモジュールをLNP2に挿すと、
うまく動作しない、ときいている。
反対にLNP2のモジュールLD2をJC2(ML1)に挿しても問題は生じない、らしい。

ということはJC2のラインアンプモジュールとLNP2のLD2モジュールは、
オープンループゲインがかなり違うのではないか、ということになる。

おそらくLD2のオープンループの周波数特性は可聴帯域のあるところから下降しているはず。
そうなると、周波数によるNFB量は、上に書いたようにはいかず、
20Hzと20kHzにおけるNFB量の違いは、40dBよりも小さな値になる。

フォノイコライザーにつづくインプットアンプは、
NFB量を変えることでゲイン切換が可能になっている、いわゆるフラットアンプである。

Date: 3月 8th, 2014
Cate: LNP2, Mark Levinson

Mark Levinson LNP-2(バッファーアンプについての考察)

LNP2のバッファーアンプ追加による音の変化については、もう少し書いていくが、
それとは別になぜLNP2にバッファーアンプを追加することで、音が良くなる可能性があるのかについて、書いてみたい。

オーディオの常識(それがどういうものかについてもほんとうに書くなのだろう)では、
ゲインが足りているのであれば、アンプの数は少ない方が、音の鮮度、透明感といった面では有利だし、
物理特性の面でも、どんなアンプでも無歪、無雑音ではないわけだから、
アンプの数が増えることで、音が良くなる可能性については、ないといえるし、理由もみつからない。

それでも音が良ければ(良くなれば)、オーディオの世界ではよし、とされるところもあるから、
LNP2にモジュールをもう一組追加してパッファーアンプを通すことにまったく価値・良さを見いだせない人、
瀬川先生のように音質が向上すると認める人がいても、それでいい世界である。

それでもLNP2にバッファーアンプを追加することで、音が良くなる要素はほんとうに何もないのだろうか。

LNP2はフォノイコライザー、インプットアンプ、アウトプットアンプ(トーンコントロール)を、
すべてLD2という同じモジュールで構成している。
パッファーアンプもLD2を使う。

実はこのことが音が良くなる理由につながってくるような気がする。
つまりNFBのかけ方が、すべて違ってくるからである。

Date: 2月 28th, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson

Mark Levinson JC-2(続×十・モジュール構成について)

手に入れなかったという、いわば不完全燃焼からの未練もないわけではない。
でも、それよりもずっと強いのは、私にとっての、あの時代のマークレビンソンのアンプは、
すべて瀬川先生と、その文章と深く結びついているということである。

ステレオサウンド 41号の瀬川先生のLNP2、JC2に関する文章。
     *
最近の可変抵抗器に新型が採用されたLNP2やJC2では、従来の製品よりもいっそう歪みが減少し解像力が向上し、音がよりニュートラルになっていることが明らかに聴きとれ、パーツ一個といえども音質に大きな影響を及ぼすことがわかる。レベルコントロールのツマミの向う側に何もついてないかのようにきわめて軽く廻ることで見分けがつく。
     *
ツマミの向う側に何もついてないかのようにきわめて軽く廻る──、
このことを確認できたのは三、四年後だった。

熊本に新しくできたオーディオ店にLNP2が置いてあった。
「触らないでください」とは、どこにも書かれていなかった。
それでもこっそりとLNP2のレベルコントロールのツマミを廻してみた。

確かに瀬川先生の書かれていたとおりに、何もついてないかのように軽く廻る。
たったそれだけのことでどきどきしていた時期があった。
まだ音は聴いたことがなかった。

こんなふうにして、
瀬川先生がマークレビンソンのアンプについて書かれたことを確認していくことが始まった。

ようするに私にとって、この時代のマークレビンソンのアンプに触れ、その音を聴くことは、
記憶を喚起すること以上に、記憶そのものといえるところがある。

いわば、この時代のマークレビンソンのアンプは外部記憶なのだろう。
ゆえに未練が断ち切れない、断ち切れるはずがない。

Date: 2月 28th, 2014
Cate: JC2, Mark Levinson

Mark Levinson JC-2(続×九・モジュール構成について)

なぜ、初期のマークレビンソンのアンプへの未練を断ち切れないのか。

私にとって初期のマークレビンソンのアンプとは、
コントロールアンプでいえばJC2(ML1)、LNP2、ML6のことであり、
パワーアンプはML2のことである。

ML2は故障してもまだ修理は可能である。
ただ出力段のトランジスターは他のトランジスターに置き換えられるようだが。

だがコントロールアンプとなると、アンプそのものはモジュール仕様で、
ピッチでがっちりと固められている。
そのため修理とはモジュールを交換することであり、
もうマークレビンソンではLNP2、ML1用のモジュールの製造は行っていない。

マーク・レヴィンソンは、ずっと以前モジュール構成にした理由を、
故障した際に各国の輸入ディーラーや販売店などでいいかげんな修理をされたくないから、と答えている。
モジュールにしておけば、モジュールそのものを交換すれば、ほとんどの故障は修理できる。
モジュールの交換にはハンダ付けの技術も必要としない。

モジュールが製造され続けていればレヴィンソンのいうとおりなのだが、
実際にはモジュールにしたばかりに、ほぼ修理不能状態に陥っている。

いまマークレビンソンの初期のコントロールアンプを買うことには、このリスクがつきまとう。
そういうアンプに対して、いまだ未練が断ち切れないのは、それが記憶に関係しているからである。