598というスピーカーの存在(KEF Model 303・その5)
ステレオサウンド 56号で、瀬川先生はこう書かれている。
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いまもしも、ふつうに音楽が好きで、レコードが好きで、好きなレコードが、程々の良い音で鳴ってくれればいい。というのであれば、ちょっと注意深くパーツを選び、組合わせれば、せいぜい二~三十万円で、十二分に美しい音が聴ける。最新の録音のレコードから、旧い名盤レコードまでを、歪の少ない澄んだ音質で満喫できる。たとえば、プレーヤーにパイオニアPL30L、カートリッジは(一例として)デンオンDL103D、アンプはサンスイAU-D607(Fのほうではない)、スピーカーはKEF303。これで、定価で計算しても288600円。この組合せで、きちんとセッティング・調整してごらんなさい。最近のオーディオ製品が、手頃な価格でいかに本格的な音を鳴らすかがわかる。
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KEFのModel 303は聴いたことがある。
サンスイのAU-D607も聴いたことがある。
デンオンのDL103Dも聴いている。
パイオニアのPL30Lは聴いたことはないが、
上級機のPL70LIIは聴いたことがある。
この組合せの音が想像できないわけではない。
それでも、KEFの303をAU-D607で鳴らした音は聴いていない。
《十二分に美しい音が聴ける》とある。
けれど56号は1980年に出たステレオサウンドである。
もう四十年ほど前のことである。
《十二分に美しい音》は、四十年前だからだったのか、
いまでも《十二分に美しい音が聴ける》のか。
なんともいえない。
それでもKEFのModel 303を手に入れてから、
瀬川先生にとっての、この時の《十二分に美しい音》を聴きたくなった、
というか出したくなった。
PL30L、DL103Dは、いまのところめどが立っていないが、
AU-D607は揃えられるようになった。
この組合せの中核である303とAU-D607は、なんとか揃う。
いま住んでいるところから、
喫茶茶会記のある四谷三丁目まで運ぶ手段がなんとかなったら、
audio wednesdayで鳴らす予定である。
(なんともならないだろうから、実現の可能性は低いけれど……)