「音は変らない」を考えてみる(その1)
何度か書いているように、世の中にはオーディオに関心を持ちながらも、
スピーカーを替えれば音は変ることは認めるけれど、
アンプやケーブルを替えても音は変らない、と頑なに主張する人がいる。
こういう人たちの耳が悪い、
この一言で片づけることはできる。
けれど、それだけで終らせてしまっていいものだろうか、とも思う。
音、オーディオに関心のない人が、音なんて変らない、というのとは違う。
関心を持っていながらも、それにオーディオ歴もそこそこ長いにも関わらず、
スピーカー以外では「音は変らない」となるのは、なぜなのか。
まず考えたのは、音の記憶力に関することだった。
たとえば写真や絵であれば、二枚のよく似た写真や絵を並べて比較することができる。
雑誌や新聞に片隅に載ることがある間違い探しである。
しかも写真も絵も時間によって変化することはないから、違いをゆっくり時間を気にせず探し出すことはできる。
音楽(音)は、たえず変化している。
そして比較試聴するアンプやケーブルの音を同時には出して聴くことはできない。
聴けるのは一組のアンプ、一組のケーブルである。
だから音を記憶していなければ、ふたつのアンプの音、ふたつのケーブルの音を比較はできない。
この記憶力は、人によって違いがある。
だからアンプやケーブルでは「音は変らない」という人たちは、
音の記憶力に欠けているのだと、最初は考えた。
けれど、それではスピーカーの違いによる音の違いも聴き分けられないことになる。
そうなると音の記憶力に関することではないのではないか。