Date: 9月 11th, 2012
Cate: 「オーディオ」考
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できるもの、できないもの(その1)

二度と同じ音は出ない、もしくは出せない。
ずっと以前からいわれ続けていることだ。

昨夜、素晴らしい音で鳴ってくれたのに、その面影も感じさせない音で鳴ることもある。
極端に大きく音が変ってしまうこともあれば、
わずかな違い──けれど、その所有者にとっては決して無視できない違い──のときもある。

システムはなにひとついじっていない。
にも関わらず音は、まるで意志をもっているかのように気まぐれな表情を、
システムの所有者に対してみせる。

理由はいろいろいわれている。
電源の状態が日々違うからだ、とか、天気(気温、湿度など)の違い、
それに聴き手の体調や精神状態、といったことが絡んでの音の変化であって、
実のところ、装置から出る音は変っていない、という人もいるけれど、
これらの要因は確かにあるけれど、それだけではなく明らかに音は変化している。

つまり、二度と同じ音は聴かせない。

なぜなのか。
つまるところ、音は所有できない、からだ。

われわれが所有できるのは、あくまでも音を出す器械(オーディオ)であって、
そこから出る音を所有しているわけではない。

だから音は変っていく。
二度と同じ音を聴かせないのだと思う。

そう考えると、われわれは音だけでなく、音楽も所有できないことに気がつく。
所有できるのは、アナログディスク、CD、SACD、配信されたファイルであって、
音楽そのものを所有している、と果していえるだろうか。

人が驚くような枚数のディスクを所有していても、音楽を所有してはいない。

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