1953年6月にRIAAカーヴが制定されている。
1954年から1956年にかけてRIAAに統一されている。
RIAAカーブはRCAが1952年9月から使いはじめたニュー・オーソフォニックのカーヴとまったく同一である。
つまりRCAのLPに限っては1952年9月以降はRIAAと考えていい。
このあたりの事情については岡先生が「マイクログルーヴからデジタルへ」で書かれている。
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アメリカで、RCAを別として逸早くRIAAに切換えたレーベルとしてはエンジェル、アトランティック、EMS、MGMなどで、コロムビア、エピック、ヴォックスは一九五四年二月からと、かなり早く転換した。ロンドンはLL八四七以降がRIAAになっているから、これも五四年はじめ頃からである。そのあとを追って、マーキュリー、キャピトル、バルトーク、ウェストミンスター、ヴァンガードも五四年後半から五五年中にかけてRIAAに切換えている。アメリカのレコードで一九五六年以降に出たものの録音特性は、特別なものを除いては、RIAAになっていると考えてほぼ間違いはないと、おもう。
このふるいLPの録音特性のことで、はっきりしないのはヨーロッパのレコードである。英デッカのはあまりにも有名だから問題ないとして、ほかのレーベルでは、EMI(HMV、英コロムビア)は米コロムビアと同一のカーヴで録音されていたことぐらいで、DGGやテレフンケン、フランスの各社などはデータがわからない。しかし、RIAAの録音特性はすぐにCCIRやEIAでも承認されているので早い機会にこのカーヴになったものと考えられる。五〇年代前半のヨーロッバのLPは日本で入手できる機会はほとんどなかった。日本プレスのLPも、ごく初期にコロムビアがアメリカからメタル・マザーを取り寄せてプレスしていたものを除いては、RIAA特性になっているはずである。
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少なくともステレオLPはRIAA以外のカーヴはない。
にも関わらず、RIAAカーヴ制定後に発売されたLPについて、
その録音カーヴはRIAAではない、という人が、今も昔もいる。
確かにRIAAが制定される以前はレコード会社によって録音カーヴが違っていたのは事実である。
だからといってステレオLPにおいてもカーヴが違う、と考えるのはどうか、と前々から思っていた。
それでも個人で、アナログディスク再生をする際に、
1956年以降のLPでRIAAカーヴのものであっても、他のカーヴのほうが結果として好ましいことはあるだろう。
だからといって、そのレコードの録音カーヴがRIAAではない、ということにはならない。
それに常識として、カッティング時にもカッティング・エンジニアがイコライザーで周波数特性をいじっている。
この場合、RIAAカーヴでカッティングしても、
パラメトリックイコライザー、もしくはグラフィックイコライザーを使うわけだから、
トータルのカーヴとRIAAと少しずれてしまう。
その可能性を無視して、RIAAではない、というのはどうだろうか。
それにもうひとついいたいことは、RIAAかどうかを判断する再生装置の音のことである。
何かを測る時に定規が直線ではなく、曲っていたらどうなるか。
つまり再生装置の音のバランスがきちんと整えられているのであればいい。
けれどそうでなければ、多少なりとも曲った定規ということになる。
その曲った定規で、RIAAカーヴなのかどうかがわかるのか、ということである。
定規(基準)が直線なのか、
ここを曖昧にしたままでの録音カーヴ議論はいつまでも結論が出ない。
それが楽しい、というのであれば、別なのだが……。