Archive for category アナログディスク再生

Date: 12月 3rd, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その25)

電子制御トーンアームについて書いてきていて思い出すのは、
なぜテクニクスが電子制御トーンアームを出さなかったのか、である。

1980年ごろ、ソニー、ビクターと続いて電子制御トーンアームが出てきていたのをみて、
テクニクスも出すんだろうな、と思っていた。
けれどテクニクスからは出てこなかった。
その時は、なぜだろう? とは考えなかった。

いまは、なぜだろう?と 思う。
テクニクスの技術があれば、電子制御トーンアームを製品化するのはさほど困難なことではなかったはず。
テクニクスも、アナログプレーヤーの開発には力をいれていた会社である。

なぜ、テクニクスからは電子制御トーンアームが出なかったのか。
はっきりとした理由はわからない。
けれど、ソニーから電子制御トーンアームが登場したころ、
テクニクスはSL10というアナログプレーヤーを出している。

SL10はLPジャケットサイズのアナログプレーヤーだった。
価格は100000円。
MC型カートリッジ(EPS310MC)を搭載し、ヘッドアンプも内蔵していた。
トーンアームはリニアトラッキング型で、サイズをコンパクト化するために上蓋に装着されていた。

SL10の上蓋は、いわゆるダストカバーではなく、トーンアームの他にスタビライザーもついていたし、
操作ボタンもついていた。
ダストカバーは閉じなくてもアナログディスク再生は可能だが、
SL10の上蓋は閉じなければ再生はできなかった。

SL10はフルオートプレーヤーであることからもわかるように、
SL10のリニアトラッキングアームは電子制御されている。

Date: 12月 2nd, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その24)

デンオンのDP100Mはデッキ手前右側に、DENON DP-100Mと印字されたパネルがある。
ここを開けると、プッシュボタンが六つ、回転式のツマミが四つある。
プッシュボタンはターンテーブル用で、回転スピードとピッチコントロール操作を行ない、
トーンアーム用はアンチスケーティング量(インサイドフォースキャンセラー量)、アームリフターのスピード、
トーンアームの低域カットオフ周波数、ダンピング量がこれらで調整できる。

このツマミの下に五枚のプリント基板が収納されている。
内三枚はターンテーブルのサーボ用で、二枚がトーンアーム用である。
これらのプリント基板はプラグイン方式となっている。

つまりDP100Mに搭載されているトーンアームを単売しようとすると、
この二枚の制御用のプリント基板も必要となるし、そのための電源も要る。
そうなってしまうと単売は非常に難しい、ということになる。

海外のメーカーであれば、それでもトーンアーム単体を市販するところもあるだろうが、
国内のオーディオメーカーで、それも大手のところでは、まず単体での市販は営業的に許可されないであろう。

ステレオサウンド 61号に載っているトーンアームのプリント基板の写真をみてると、
それほど実装密度が高いわけではない。
1981年の時点でもその気になれば一枚のプリント基板に収められたのではないか。
電源も必要だが、それほど容量は必要としないはず。

実際に単体で市販した場合、
他社製のターンテーブルに装着するには、プリント基板とトーンアームの接続、
電源の配線の引き回しなどをどう処理するのか、の問題が残る。
だが工夫すれば、どうにか解消できたと思う。

DP100M搭載の電子制御トーンアームはどのレベルだったのか。
ステレオサウンド 61号に井上先生が、
《カートリッジによって低域カットオフ周波数調整はシャープな効果を示し、
その最適値を聴感上で明瞭に検知することは、予想よりもはるかにたやすい。》
と書かれている。

このトーンアームを搭載したDP100Mについては、こう書かれている。
     *
DP100MにS字型パイプをマウントし、重量級MC型カートリッジから軽量級MM型カートリッジにいたるまで、数種類の製品を使って試聴をはじめる。基本的には、スムーズでキメ細かく滑らかな帯域レスポンスがナチュラルに伸びた、デンオンのサウンドポリシーを備えている。しかし、カッターレーサー用のモーターを備えた、全重量48kgという超重量級システムであるだけに、重心は低い。本来の意味での安定感が実感できる低域をベースとした、密度の濃い充実した再生音は、DD型はもちろん、ベルトや糸ドライブ型まで全製品を含めたシステム中でのリファレンスシステムという印象である。この表現は、このDP100Mのために用意されていた言葉である、といいたいほどの音質、信頼性、性能の高さをもつ。
     *
リファレンスシステムといいたいほどの性能の高さに、
電子制御トーンアームの存在はどれだけ関係しているのだろうか。

Date: 11月 30th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その28)

アナログプレーヤーの出力ケーブルだけでなくラインケーブル、スピーカーケーブルでも同じことである。
これらのケーブルと電源コードが接近していれば、なんらかの音への影響がある。

信号ケーブルはシールドされているから大丈夫、と思っている人もいるようだが、そんなことはない。
どんなシールドであっても影響を皆無にできることはない。
確実な方法は信号ケーブルと電源コードはできるだけ距離をとることである。
特に信号レベルが極端に低いアナログプレーヤーの出力ケーブルは電源コードからできるだけ距離を確保したいし、
他の信号ケーブルとの距離もできれば確保しておきたい。

いまはデジタル機器がシステムにあることが多い。
CDプレーヤーの電源をオフにしても、
どこかにスイッチング電源を使用しているオーディオ機器があれば、
その機器の電源コードには高周波が流れているとみるべきである。
これも音への影響となってくる。

この影響に関してもシールドがあれば問題ない、ということにはならない。
シールドをあまり過信しないことである。
結局、この影響に関しても距離を確保するのがいい。

つまりアナログプレーヤーの設置は、ケーブルの引き回しを含めて考えなければならない。
電源コードの長さがあまっているからといって束ねてしまう人がいる。
その気持はわからないわけではないが、束ねてしまうことは基本的にはやめたほうがいい。

アナログプレーヤーのケーブルの引き回しには、
コントロールアンプのリアパネルの端子の配置も関係してくる。
このことについては二年ほど前に、「私にとってアナログディスク再生とは(リアパネルのこと)」で書いている。

このケーブルの引き回しに関しては、できるかぎり最初からきちんとしておいたほうがいい。

Date: 11月 28th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その27)

ステレオサウンドの試聴室でこんなことがあった。
ある試聴の準備のとき、ハムが出た。まだCDが登場する前のことだった。
それも盛大なハムである。

アナログプレーヤーは試聴室に常備されているパイオニアExclusive P3。
カートリッジはオルトフォンのMC型だったはず。
昇圧トランスを使っていた。
プレーヤー、トランスの設置場所は通常のまま。
つまりハムが発生する場所ではなかった。

まずアースの配線のミスかも、と疑ってもそうではなかった。
昇圧トランスの向きを変えてもほとんど変化なし。

あれこれやってみた。
原因はパワーアンプだった。
そのときのパワーアンプは国産の、そのブランドの最高級モデルだった。
電源トランスはシールドケースに収まっていた。

にも関わらず、このパワーアンプからは盛大に漏洩フラックスが出ていて、
このフラックスをコントロールアンプに接続されている昇圧トランスからのケーブルが拾ってしまっていたから、
ハムが発生していた。

なにもパワーアンプの真上を昇圧トランスからのケーブルを這わせていたわけではない。
他のパワーアンプではなんら問題の発生しない位置だったにも関わらず、
そのパワーアンプではハムを発生したわけである。

問題となるパワーアンプもさらにケーブルとの距離をとるように設置すれば、
ハムは直接耳に聞こえなくなるが、そうなったとしてもハムが聞こえないというだけで、
漏洩フラックスは確実に音に影響を与えている。

Date: 11月 28th, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーの設置・調整(その26)

少し話がそれてしまったが、アナログプレーヤーの設置をきちんとやる。
ここをおろそかにしたまま、アナログプレーヤーの調整を行っても、いい結果は得られない。
とにかくまずこれまで書いてきたように、水平を出し、きちんとした台にガタツキなく設置すること。

ここまでの設置は、いわば機械的な設置である。
オーディオのシステムは電気を使ったシステムであり、
アナログプレーヤーにもアンプにもCDプレーヤーにも電源コードがついている。

アナログプレーヤーだけのシステムをできるだけ簡潔に構成したとする。
それでもアナログプレーヤーとプリメインアンプは必要となる。
この場合で電源コードは二本。

これにチューナーやデッキ、CDプレーヤーが加わると、
加わったオーディオ機器の分だけ電源コードは増えていく。

さらにプリメインアンプをセパレートアンプにして、
フォノイコライザーも独立したものに、パワーアンプはモノーラルに……、としていけば、
電源コードの数はますます増えていく。

電源コードには交流の100Vが流れていく。
これに対して、アナログプレーヤーの出力ケーブルを流れているカートリッジの信号レベルは、低い。
そうとうに低くなる。
MM型かMC型かでも変ってくるし、MC型でも機種によって信号レベルの差はけっこうある。

また低域は中域よりも録音レベルが低いし、ピアニッシモでも低くなる。
そうなると低音楽器のピアニッシモでは、驚くほど低い信号レベルでしかない。

こういう微弱な信号が通っているケーブルの間近に100Vが流れている電源コード、
それも消費電力の大きなオーディオ機器の電源コードが通っていたら。
それもアナログプレーヤーの出力ケーブルと平行に通っていたら、どういう影響が生じるのか。

Date: 11月 17th, 2014
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(RIAAカーヴについて・まず大事なのは、フラットをもってものごとの始まりとす)

ステレオサウンド 61号から63号まで、
池田圭氏による「フラットをもってものごとの始まりとす」という記事が載っている。
dbxの20/20の記事である。

61号は1981年に出ている。
いまから33年前のことである。

そんな以前の池田圭氏のタイトルの意味を考えている。
「フラットをもってものごとの始まりとす」、
ほんとうにそうだと思うからだ。

RIAAカーヴについての論議も、「フラットをもってものごとの始まりとす」でなければならないのに、
実際は多くの人がフラットであることに対して無関心・無頓着であったりする。

確かにメーカー製のスピーカーシステムであるなら、
それも名のとおったメーカーのモノであるなら、おかしな周波数特性はしていない。
カタログに載っている周波数特性グラフをみても、多少のピーク・ディップはあっても、
時代が新しいスピーカーであれば、大きく見れば平坦(フラット)ともいえる。

だがそれを鳴らしているから、自分の部屋で自分の耳に届いている「音」がフラットだという保証はどこにもない。
それにカタログに載っている周波数特性は、出力音圧レベルのグラフであり、
いわばスピーカーの振幅特性を表しているにすぎない。

私的イコライザー考」の(その12)で書いたことを、またくり返しておく。
振幅項(amplitude)と位相項(phase)があり、
それぞれを自乗して加算した値の平方根が周波数特性となる。

つまり振幅項と位相項をそれぞれ自乗して加算した値の平方根、
これをフラットにすることから、ものごとは始まる。

Date: 11月 13th, 2014
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(RIAAカーヴについて・まず大事なのは、聴くこと)

レコード(アナログディスク)は思い入れをこめやすいメディアである。
だが忘れてはならないのは、アナログディスクも工業製品である、ということだ。
大量複製される工業製品であり、工業製品である以上、そこにはなんらかの規格が存在する。

レコード会社が意図的にステレオ以降もRIAA以外のカーヴでレコードをつくっていたとしよう。
だが、レコード会社が録音カーヴについて伏せている以上、
そのステレオLPの再生カーヴはRIAAで、ということになる。

ラッカー盤のカッティング時にカッティング・エンジニアがなんらかの信号処理をすることはすでに書いた。
リミッターをかけることもある。
イコライザーで周波数特性を操作することもある。
つまり、この信号処理の延長でRIAA以外のカーヴを使用した、と私は考える。

RIAAカーヴなのかどうかについて考える時に、レコード会社側に立って考えてみる。
音質的なメリットがあるとして、RIAA以外のカーヴでレコードをつくったとする。
では、そのレコードをどう再生してもらいたいのか。

録音カーヴと逆の特性のカーヴで再生してほしいのであれば、
そのステレオLPのジャケットにその旨を書いておくのではないだろうか。
なんら記載がないということは、仮にRIAA以外のカーヴでつくられたレコードだとしても、
再生カーヴはRIAAで、ということになる。

再生はRIAAカーヴでいいから、録音カーヴについての情報がなにも与えられていない。
そういうことなのではないのか。
カッティング時にイコライザーをいじる。
だが、そのことについての情報は何も与えられない。

どの周波数をどのくらい上げ下げしたのか、
仮にそのことがジャケットに記載されていようと、何になるのか、と思う。
録音カーヴにしても同じことである。

それでも録音カーヴと逆の特性で再生しなければならない、と言い張る人はいる。
そう考えるのならば、そうしたらいいではないか。
だがレコード会社から録音カーヴについて、なんの情報も与えられていなければ、
それはRIAAカーヴで再生することがレコード会社の意図に添う再生であり、
録音カーヴと逆のカーヴで再生することが、レコード会社の制作意図に添う、とはいえない。

Date: 11月 13th, 2014
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(RIAAカーヴについて・まず大事なのは、前提はなにか)

EMTのアナログプレーヤー、930st、927st、927Dstは放送局やスタジオといった、
プロフェッショナルの現場で実際に使われてきた。
930stも927Dstもプロ用機器である。プロ用のようなモノではない。

そのEMTにはステレオ再生に関してはRIAAのみである。
ステレオLPの録音カーヴについて疑問をもっている人は、
このことについて一度考えてみてはどうだろうか。

それでもマランツのModel 7は……、という人もいるだろう。
でもModel 7もRIAA以外のカーヴを選択した時にはモノーラルになるようにしたかったかもしれない。
そう考えられないだろうか。
Model 7のイコライザーカーヴ切り替えのためのレバースイッチは、
もともと小信号用のものではなく、一般市販されていた汎用品ときいている。

ここにロータリスイッチを使っていたら、Model 7もEMTのイコライザーアンプのように、
RIAA以外のカーヴではモノーラルになるようにしのではないか、と私は思っている。

このことに関しては、私のようにステレオLPはRIAAという者には、いま書いているように受けとれるし、
いやステレオLPにもRIAA以外のカーヴがある、と疑問をもっている人にとっては、違う見方ができる材料になる。

私がRIAA以外のカーヴがあるのではないか、ということに懐疑的なのは、
カッティングマシンがどうなっていたのか、がある。
ステレオLP用のカッティングマシンに録音カーヴの切り替え機能があったのか、ということだ。
なかったとしても、レコード会社の人が独自のカーヴ用のモジュールをつくり使用することは可能である。

だからRIAAカーヴ以外のステレオLPが存在しなかった、とは断言できない。
だが存在していたとしても、それらのステレオLP(RIAAカーヴ以外のステレオLP)は、
RIAAカーヴでの再生を前提としているはずである。

Date: 11月 13th, 2014
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(RIAAカーヴについて・まず大事なのは、把握すること)

なぜ ステレオLPの録音カーヴに対して疑問を抱く人が出てくるようになったのか。
マランツのModel 7のようにイコライザーカーヴを切り替えられるコントロールアンプが存在していたことが、
大きく関係している、と考えられる。

あるレコードがうまく鳴ってくれない、
たまたまその人が使っていたコントロールアンプが、
Model 7のようにイコライザーカーヴが切り替えられるものだった。
試しにRIAA以外のカーヴにしてみた。
RIAAカーヴよりも、いい具合に鳴ってくれた。

これはもしかするとRIAAカーヴではないんじゃないのか……、
そう思うようになっていたことから始まってきたのかもしれない。

そう思うようになってみると、なぜModel 7がイコライザーカーヴを切り替えられるようになっているのか、
そのことについて考えてみるようになる。
ソウル・B・マランツは、
LPのイコライザーカーヴがステレオ以降もRIAAに完全に統一されていないことに気がついていたんだ──、
そんなふうに関連づけていくことだってできる。

けれど果してそうなのだろうか。
Model 7はイコライザーカーヴを選べる。
それもステレオ再生においてもだ。
だがこの機能は、モノーラルLPのための機能であり、
それをステレオLP再生時にも利用できる、ということにすぎないのではないか。

同じくイコライザーカーヴを切り替えられるものに、EMTのアナログプレーヤー内蔵のアンプがある。
四種類のカーヴが切り替えられる。
DIN45 536、DIN45 53、BBC、FLATであり、
DIN45 536がRIAAと同じく75/318/3180μSのROAAカーヴだ。
あとの三種類のカーヴは、そのポジションにすればモノーラル再生となる。

Date: 11月 13th, 2014
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(RIAAカーヴについて・まず大事なのは、疑うな)

井上先生に何度もいわれたこと、
こうやって毎日オーディオ、音、音楽のことについて書いていて深く実感するようになってきたことに、
「レコードを疑うな」がある。

井上先生は、このことを何度もくり返された。
それは井上先生自身が、強く実感されていたからなのかもしれない、と最近思うようになってきている。

「レコードは神さまだ、その神さまを疑ってはいけない」
これは何もレコードを神聖化しろ、ということではない。

初めて聴くようなマイナーレーベルのレコードは例外があるかもしれないが、
少なくともメジャーレーベルのレコードに関しては、そのレコードを疑うべきではない、ということになる。

これに関係しているのは、「スピーカーが悪いのではない、鳴らし方・使い方が悪いんだ」がある。
これも出来の悪すぎるスピーカーは例外として存在しても、大半のスピーカーの場合、
スピーカーに非があるよりも使い手側に非があることが圧倒的に多い。

オーディオはさまざまな要素が絡んでいる。だからこそレコードは疑うべきではないともいえる。
レコードを疑ってしまえば、オーディオは基準とでもいおうか、
なにひとつ確かなものがないともいえるからだ。

だから私はステレオLPになってからの録音カーヴはRIAAであり、
ほかのカーヴが使われたとは思っていない。

ただ世の中には例外はある。
ごく一部のレコードで、ステレオ以降もRIAAカーヴではないものが存在していなかった、とは断言できない。
それでもはっきりといえるのは、そういうレコードであってもRIAAカーヴで再生するものである、ということだ。

Date: 11月 12th, 2014
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(RIAAカーヴについて・まず大事なのは)

1953年6月にRIAAカーヴが制定されている。
1954年から1956年にかけてRIAAに統一されている。

RIAAカーブはRCAが1952年9月から使いはじめたニュー・オーソフォニックのカーヴとまったく同一である。
つまりRCAのLPに限っては1952年9月以降はRIAAと考えていい。

このあたりの事情については岡先生が「マイクログルーヴからデジタルへ」で書かれている。
     *
 アメリカで、RCAを別として逸早くRIAAに切換えたレーベルとしてはエンジェル、アトランティック、EMS、MGMなどで、コロムビア、エピック、ヴォックスは一九五四年二月からと、かなり早く転換した。ロンドンはLL八四七以降がRIAAになっているから、これも五四年はじめ頃からである。そのあとを追って、マーキュリー、キャピトル、バルトーク、ウェストミンスター、ヴァンガードも五四年後半から五五年中にかけてRIAAに切換えている。アメリカのレコードで一九五六年以降に出たものの録音特性は、特別なものを除いては、RIAAになっていると考えてほぼ間違いはないと、おもう。
 このふるいLPの録音特性のことで、はっきりしないのはヨーロッパのレコードである。英デッカのはあまりにも有名だから問題ないとして、ほかのレーベルでは、EMI(HMV、英コロムビア)は米コロムビアと同一のカーヴで録音されていたことぐらいで、DGGやテレフンケン、フランスの各社などはデータがわからない。しかし、RIAAの録音特性はすぐにCCIRやEIAでも承認されているので早い機会にこのカーヴになったものと考えられる。五〇年代前半のヨーロッバのLPは日本で入手できる機会はほとんどなかった。日本プレスのLPも、ごく初期にコロムビアがアメリカからメタル・マザーを取り寄せてプレスしていたものを除いては、RIAA特性になっているはずである。
     *
少なくともステレオLPはRIAA以外のカーヴはない。
にも関わらず、RIAAカーヴ制定後に発売されたLPについて、
その録音カーヴはRIAAではない、という人が、今も昔もいる。

確かにRIAAが制定される以前はレコード会社によって録音カーヴが違っていたのは事実である。
だからといってステレオLPにおいてもカーヴが違う、と考えるのはどうか、と前々から思っていた。

それでも個人で、アナログディスク再生をする際に、
1956年以降のLPでRIAAカーヴのものであっても、他のカーヴのほうが結果として好ましいことはあるだろう。
だからといって、そのレコードの録音カーヴがRIAAではない、ということにはならない。

それに常識として、カッティング時にもカッティング・エンジニアがイコライザーで周波数特性をいじっている。
この場合、RIAAカーヴでカッティングしても、
パラメトリックイコライザー、もしくはグラフィックイコライザーを使うわけだから、
トータルのカーヴとRIAAと少しずれてしまう。
その可能性を無視して、RIAAではない、というのはどうだろうか。

それにもうひとついいたいことは、RIAAかどうかを判断する再生装置の音のことである。

何かを測る時に定規が直線ではなく、曲っていたらどうなるか。
つまり再生装置の音のバランスがきちんと整えられているのであればいい。
けれどそうでなければ、多少なりとも曲った定規ということになる。

その曲った定規で、RIAAカーヴなのかどうかがわかるのか、ということである。
定規(基準)が直線なのか、
ここを曖昧にしたままでの録音カーヴ議論はいつまでも結論が出ない。

それが楽しい、というのであれば、別なのだが……。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その6)

年月が経って思うことはもうひとつある。
ターンテーブルシートを交換した時、トーンアームの高さだけは調整した。
針圧、インサイドフォースキャセラーに関してはいじらなかった。
けれど、これでは厳密な意味での比較試聴には不十分である。

針圧も調整し直し、インサイドフォースキャセラーについても同じである。
再調整して、調整前と同じ針圧、キャンセル量となることもあるだろうし、変ることもある。

アナログディスクは剛体ではなく弾性体である。
だから針がトレースした直後は溝がわずかだが変形する。
この変形はしばらくすると元にもどる。

ということはアナログディスクという塩化ビニール盤も、わずかとはいえダンパーと見做すことができる。
ウェストレックスの10A、ノイマンのDSTといったカートリッジには、ダンパーと呼べるパーツが使われていない。

10AもDSTも、一般的なカートリッジとは異る発電構造をしていることもダンパーの有無に大きく関係している。
だからカンチレバーの根元に発電コイルとダンパーをもつ一般的な構造のカートリッジは、
10AやDSTほどにはアナログディスクをダンパーとは見做していないだろうが、
それでもアナログディスクの素材の特質からしてダンパーとして働いている、とみていいだろう。

ならばアナログディスクとターンテーブルシートプラッターの間にあるシートも、
その材質によってダンパー的といえるようになるのではないか。
つまりシートの硬軟によって、適正針圧に微妙に影響するわけで、
そうなるとターンテーブルをシートを交換するのであれば、
つまり比較試聴するのであれば、厚みに応じてトーンアームの高さを調整するのはもちろん、
音を聴いて針圧とそれにともなうインサイドフォースキャセラーもまた微調整しなければならない。

このことはアナログディスクの厚みについても同じことがいえるはず。
重量盤は通常盤よりも厚みがある。ということはダンパーとして見做した場合、
その分針圧に影響しているはずである。

以前重量盤を聴く際に、トーンアームの高さは調整していたことがある。
だが針圧までは再調整しなかった。
これでは不十分だった。

もっともカートリッジの針圧を、カタログに最適1.5gと書かれてあるからといって、
1.5gにきちんと合わせれば針圧調整は終りでしょう、と思っている人には関係のないことでしかない。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その5)

購入したターンテーブルシートは、アメリカのWATERLOOという会社のPLATTER PADだった。
ヤマハ(当時は日本楽器製造)が輸入販売していたものだった。

素材は、熱可塑ポリエーテル系ウレタンゴムと書いてあった。
厚みは6.5mm。当時使っていたアナログプレーヤーのゴムシートよりも若干厚い。
重量は470g。もった感じでは附属シートよりも重い程度だった。
価格は7500円だった。

色は茶色だったと記憶している。
硬めのシートだったはずだ。
附属シートと取り換える。
厚みが違うのでトーンアームの高さを調整し直して音を聴く。

30年以上前のことだから記憶もぼんやりとしているが、
少なくとも附属のシートよりもいい感じで鳴ってくれた。

それにターンテーブルシートがかわると、プレーヤーの雰囲気も変わる。
これに関しても附属のシートよりもいい感じになってくれたので、満足していた。

このときはジュエルトーンのGL602Jにしなくてよかった、と思っていた。
PLATTER PADは透明ではないから、ターンテーブルプラッターの、いわばボロを隠してくれる。
GL602Jはそうではないのだから。

でも30年くらい経ち、やっぱりGL602Jを買っておけばよかった、と思っている。
GL602Jは川崎先生が手がけられたモノであることを知ったからだ。

Date: 11月 1st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その4)

EMTの927Dstはガラス製のターンテーブルシートである。
まだ927Dstの音は聴いていなかったけれど、927Dstがどんなにすごいプレーヤーであるのかは知っていた。

普及クラスのアナログプレーヤーのシートをガラス製にしたからといって、
927Dstに近づけるわけではないことはわかっている。
こんなことは高校生にだってわかる。
それでも気分だけでも927Dstに近づけたい。

だからジュエルトーンのGL603Jにしようと思ったのだった。
けれどガラスということは透明な素材である。
つまりターンテーブルプラッターの上に、GL602Jを置くと、
ターンテーブルプラッターの上面が丸見えになる。
そのことに気づいた。

普及クラスのアナログプレーヤーのターンテーブルプラッターはアルミ製。
仕上げはお世辞にもいいとはいえなかった。
たとえばマイクロのRC5000のようなプレーヤーであれば、
ターンテーブルプラッターに直接レコードを置くことを前提としているため、
プラッターの上面の仕上げも丁寧になされている。

RC5000の上にGL602Jを置くのであれば、何も問題とするところはない。
だが現実に、そのころの私が使っていたのRX5000のような仕上げのプラッターではない。

レコードをのせてしまえば気にならないだろうが、
レコードをかけ替えるごとに、ターンテーブルプラッターのあまりよくない仕上げを見ることになる。
これは気持ちのいいことではないし、GL602Jを買わなかったいちばんの理由である。

Date: 10月 31st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その3)

トリオのセラミック製のTS10も重量は1.2kgで、ぎりぎりだったが、これは26000円していた。
価格的に候補から外した(というより外れていった)。

サエクかジュエルトーンか。
サエクのSS300は16500円、ジュエルトーンのGL602Jは10000円。
どちらもなんとか買える範囲の価格。

ただサエクのSS300はレコードのレーベルが接触するところにネジ穴が切ってあった。
なんのためのネジ穴かというと、レコードのレーベルに穴を開けて、
レコードをSS300にネジ止めするためのものだった。

SS300を買っても、このネジ穴を使わなければそれで済む話だろうか。
レコードに穴を開ける。それがレーベル面であろうと、そういうことを考えるメーカーのシートを買ってしまったら、
レコードそのものがひどく傷つくような気もしたし、
そんな発想をしてしまうメーカーの製品は買いたくない、というのが強かった。

GL602Jを買おう、と決めていた。
10000円で1kg。価格、重量ともに問題はない。

ゴムや革とは違い、この手の硬質な素材のシートではレコードが傷つきやすくなるのでは、と危惧する人はいた。
私も考えた。
けれど軟らかい素材のシートでも、シート上にホコリがあり、
レコードをその上でスリップさせてしまえば、レコードは傷ついてしまう。
シートが硬いか軟らかいではなく、シートをどれだけきれいにしているか、それとレコードの扱い方である。

このころすでにマイクロの糸ドライヴRX5000+RY5500は登場していた。
RX5000は砲金製のターンテーブルプラッターに、直にレコードを置く。
マイクロという、アナログプレーヤー専門メーカーから、こういう仕様のプレーヤーが出ていたことも、
私の考え方が間違ってないことを裏付けてくれた。

だがGL602Jは、結局買わなかった。